異世界転生して謎のリングをアソコに装着したらエロ魔導士になりましたとさ

戸影絵麻

文字の大きさ
上 下
31 / 246

#30 ソフィアの決意

しおりを挟む
 私の好みのタイプは、夏目漱石である。

 友人たちにはよく笑われたものだが、事実だから仕方がない。

 男は渋くなくてはいけないと思う。

 神経症を病み、眉間に縦じわが寄っているくらいがちょうどいい。

 その意味でいうと、ソフィアたちの父親、アドラー将軍はかなり私の好みに近かった。

 要塞の最上部、将軍の個室である。

 といっても、個室というだけで、切り出した石を積み上げただけの牢屋みたいな部屋である。

 真ん中に丸テーブルがひとつあるきりで、他には何もない。

 階下から聞こえてくるのはカイルたちの笑い声。

 反省会がいつのまにか飲み会に変わってしまったようだ。

「ごくろうだった」

 部屋に足を踏み入れた私とソフィアを見るなり、将軍が言った。

「ソフィアも、そこの魔導士の娘も、よくやった。見事な戦いぶりだったぞ」

 豊かな顎ひげを蓄えた、渋みのある中年男性である。

 綺麗だけど鋭い目つきが、ソフィアによく似ている。

「アラクネを見ました」

 将軍のねぎらいの言葉には答えず、だしぬけにソフィアが言った。

「アラクネはロンバルディアの宮廷錬金術師。この一件には、明らかに国王の一族がからんでいます」

「これ、滅多なことを言うんものではない」

 あたりを窺うように視線を走らせ、将軍が声をひそめた。

「どこに間者が潜んでおるかもしれぬ。ただでさえおまえは出戻りなのだろう? 悪い噂が立つと、今度は放逐程度ではすまん。捕らえられて、間違いなく、牢獄行きだぞ」

「かまうもんですか。どうせ私は明日には村を発つつもりですから。この翔子と一緒に」

 強い意志を秘めた口調で、ソフィアが言った。

「村を出てどうする?」

 将軍の眉間の縦じわが深くなった。

「砂漠の道を、ポラリスに向かいます。ポラリスで、100年前の勇者たちの消息を調べ、彼らが持っていたというミューズの鍵を探します」

「ミューズの鍵だと?」

「宮廷で、罠にかけられた時、思い知ったのです。この世界には、魔王につらなる者たちが跳梁跋扈している。このままでは、魔王軍の到来を待たずして、サンフローレンス、ひいてはロンバルディアは滅びてしまう。ここは一刻も早くミューズの女神にあいまみえ、そのお力を借りるしかない、と」

「魔王軍は、世界の最南端の氷の大陸を出、東の大陸、ホウライに到達したと聞いておる。ホウライが落ちるまでにはまだ少し時間がかかるだろうが、その後、この中央大陸に乗り込んでくるのはまず間違いない。おまえの言う通り、あまり時間はないだろうな」

「だからこそ、行かせてほしいのです。私はもはや自由の身。後宮のお抱え女房などではありません。かつて父上の下で学んだ武術を、思う存分試してみたいのです」

「止めて引き下がるおまえでもあるまい」

 将軍が苦笑する。

「いいだろう。ただし、一つだけ条件がある」

「条件? 何ですか?」

「ラルクを連れていけ。あれでも多少は役に立つ」

 ラルク?

 今度は私が眉間にしわを寄せる番だった。

 よりによって、何ゆえあの役立たずを?

「お言葉ですが」

 ソフィアも私と同意見のようだった。

「ラルク兄さまは、あくまでも書斎派のお方。冒険には向いておりませぬ」

「だから連れて行って、鍛えてやってほしいのだ。あのままでは、もしもの時にわしの後を継げぬからな」

 ラルクよりは、弟のカイルのほうが、ずっとましに見えるけど…。

 私がそう心の中でひとりごちた時、部屋の外から声がかかった。

「失礼します。お嬢様方、寝室の準備が整いました」




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...