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#11 出戻り王女
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ミルナの村。
一見、ごくふつうの農村である。
ミレーの『晩鐘』をリアルにしたような感じ、とでもいえばいいだろうか。
それだけに、私のコスは異様に目立った。
マントも帽子もゴブに破られてしまったので、例の紐だけハイレグ水着一枚なのである。
おっぱいは乳首を除いてほとんど丸ごと飛び出ているし、股間も布の幅が狭すぎるため、両脇からぷっくり何やら見えてはいけない肉がはみ出している。
毛が一本も生えていないからいいようなものの、これでは歩くワイセツ物だ。
最初のうちは、
「あ、ソフィアさまだ」
「ソフィア様がお戻りに」
と、ソフィアに注意を注いでいた村人たちだったが、横を歩く私に気づくと、
「何、あれ」
「まあ、はしたない」
「ちとエロすぎじゃのう」
当然、その視線は私に集中した。
咎めるような視線、物欲しげな視線、呆れたような視線。
その集中砲火の中を、ピンヒールにものを言わせ、尻をくねらせながら歩く。
というか、エロ魔導士はこんな歩き方しかできないのだ。
「まずは長老にご挨拶よ」
そう言ってソフィアが私を連れて行ったのは、村の奥の大きな屋敷だった。
合掌造りを二段重ねにしたみたいな、古式ゆかしい木造建築である。
「まさか、本当に出戻って来るとはな」
ソフィアを目にするなり、奥の間の肘掛椅子に座っていた白髭の老人が言った。
きゅうりみたいに細長い顔。
頭は禿げているのに、顎髭と眉毛は長い。
「今月末には、てっきりフェルマー王子と結婚式かと思っておったのに」
怒っているかと思ったら、ふっふっふと笑っている。
「大方、意地の悪いライバルにでもハメられて、濡れ衣を着せられたんじゃろう。それで喧嘩になり、婚約破棄か? まあ、おまえらしいといえば、おまえらしいがな」
「またじいちゃんたら、見てきたようなことを」
ソフィアが口を尖らせた。
「ま。ほぼその通りなんだけどね。王子の従妹のジャスティーヌってのが、とんでもない策略家でさ、私がやれ王子の飼い犬をいじめただの、従者たちの食事に毒を盛っただの、あることないこといいふらして…。でまた、あのフェルマーときたら、いいのは顔だけで頭の中空っぽだから、ころっと騙されちゃってさ。もう、やってられなにのなんって」
「がははは、そりゃいい。おおかたおまえは今頃、宮中では稀代の悪役令嬢と噂されとることだろう」
「こんな田舎娘が王妃なろうなんて夢を見たのが間違いだったのよ。だから、これから私は戦士として生きるの。心強い相棒もできたしね」
「相棒というのは、そのエロい姉ちゃんか?」
「ええ。こちらは翔子。噂のエロ魔導士よ」
「エロ魔導士…? おお、はじめてお目にかかるな」
眉毛の下の老人の目が、好色そうにきらめいた。
「まだ、駆け出しですけど」
私はお辞儀をした。
とたんにおっぱいがポロリしそうになり、あわてて両手で抑え込む。
「ちょうどいい。川向こうのもがりの森に、数日前からオークの一団が集まり出したらしい。どうやらこの村の動静をうかがっておるようなのだ。じゃから、村の若い男たちは今、みんな詰め所で駐留というわけだ。魔導士が防衛ラインに配置されれば、どれだけ皆の士気が高まることか」
「あまり期待しないでください」
私は力なく笑った。
覚えたといっても、まだわたしのエロ魔法と言えば、
?全身なでなで(範囲)
?エア・フェラチオ(単体・範囲)
?エア・クンニ(単体)
の3つだけなのだ。
それに、と思う。
村を守る兵士たちは、当然みんな若い男だろう。
そんな中にこの恰好で出ていったりしたら…。
おそらく大変なことになる。
そんな気がして、ならなかったのだ。
一見、ごくふつうの農村である。
ミレーの『晩鐘』をリアルにしたような感じ、とでもいえばいいだろうか。
それだけに、私のコスは異様に目立った。
マントも帽子もゴブに破られてしまったので、例の紐だけハイレグ水着一枚なのである。
おっぱいは乳首を除いてほとんど丸ごと飛び出ているし、股間も布の幅が狭すぎるため、両脇からぷっくり何やら見えてはいけない肉がはみ出している。
毛が一本も生えていないからいいようなものの、これでは歩くワイセツ物だ。
最初のうちは、
「あ、ソフィアさまだ」
「ソフィア様がお戻りに」
と、ソフィアに注意を注いでいた村人たちだったが、横を歩く私に気づくと、
「何、あれ」
「まあ、はしたない」
「ちとエロすぎじゃのう」
当然、その視線は私に集中した。
咎めるような視線、物欲しげな視線、呆れたような視線。
その集中砲火の中を、ピンヒールにものを言わせ、尻をくねらせながら歩く。
というか、エロ魔導士はこんな歩き方しかできないのだ。
「まずは長老にご挨拶よ」
そう言ってソフィアが私を連れて行ったのは、村の奥の大きな屋敷だった。
合掌造りを二段重ねにしたみたいな、古式ゆかしい木造建築である。
「まさか、本当に出戻って来るとはな」
ソフィアを目にするなり、奥の間の肘掛椅子に座っていた白髭の老人が言った。
きゅうりみたいに細長い顔。
頭は禿げているのに、顎髭と眉毛は長い。
「今月末には、てっきりフェルマー王子と結婚式かと思っておったのに」
怒っているかと思ったら、ふっふっふと笑っている。
「大方、意地の悪いライバルにでもハメられて、濡れ衣を着せられたんじゃろう。それで喧嘩になり、婚約破棄か? まあ、おまえらしいといえば、おまえらしいがな」
「またじいちゃんたら、見てきたようなことを」
ソフィアが口を尖らせた。
「ま。ほぼその通りなんだけどね。王子の従妹のジャスティーヌってのが、とんでもない策略家でさ、私がやれ王子の飼い犬をいじめただの、従者たちの食事に毒を盛っただの、あることないこといいふらして…。でまた、あのフェルマーときたら、いいのは顔だけで頭の中空っぽだから、ころっと騙されちゃってさ。もう、やってられなにのなんって」
「がははは、そりゃいい。おおかたおまえは今頃、宮中では稀代の悪役令嬢と噂されとることだろう」
「こんな田舎娘が王妃なろうなんて夢を見たのが間違いだったのよ。だから、これから私は戦士として生きるの。心強い相棒もできたしね」
「相棒というのは、そのエロい姉ちゃんか?」
「ええ。こちらは翔子。噂のエロ魔導士よ」
「エロ魔導士…? おお、はじめてお目にかかるな」
眉毛の下の老人の目が、好色そうにきらめいた。
「まだ、駆け出しですけど」
私はお辞儀をした。
とたんにおっぱいがポロリしそうになり、あわてて両手で抑え込む。
「ちょうどいい。川向こうのもがりの森に、数日前からオークの一団が集まり出したらしい。どうやらこの村の動静をうかがっておるようなのだ。じゃから、村の若い男たちは今、みんな詰め所で駐留というわけだ。魔導士が防衛ラインに配置されれば、どれだけ皆の士気が高まることか」
「あまり期待しないでください」
私は力なく笑った。
覚えたといっても、まだわたしのエロ魔法と言えば、
?全身なでなで(範囲)
?エア・フェラチオ(単体・範囲)
?エア・クンニ(単体)
の3つだけなのだ。
それに、と思う。
村を守る兵士たちは、当然みんな若い男だろう。
そんな中にこの恰好で出ていったりしたら…。
おそらく大変なことになる。
そんな気がして、ならなかったのだ。
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