異世界転生して謎のリングをアソコに装着したらエロ魔導士になりましたとさ

戸影絵麻

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#5 高いハードル

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「エロいこと?」
 私の目は、おそらくこの時、ほとんど点になっていたに違いない。
 白状しよう。
 私はこれまでオナニーすらしたことがない。
 別に厳格なカトリックの家庭で育ったわけではないけれど、性的な世界は自分とは無縁とあきらめていたからだ。
「それは、たとえば…」
「ふつうはセックスだけど、アブノーマルであればあるほど、経験値は高いらしいよ。宮殿に居た時、魔導士たちが話してるの、聞いたことあるもの」
 ソフィアは見たところ、まだ14、5歳の少女である。
 その口からセックスだのアブノーマルだのといった単語がポンポン飛び出してくるのには、さすがに引いた。
「そもそも、エロ魔導士って、何なのかな? ていうか、どういう魔法、使えるわけ?」
 気恥ずかしくなって、話題を変えることにした。
 一応、さっき火の魔法が使えたから、魔力らしきものが備わっているのは確かだろう。
「風水火の魔法も使えるけど、本職の黒魔導士に比べれば弱いわね。やっぱりメインはエロ魔法かな」
「エロ魔法…? 白魔法じゃ、なくて?」
「エロ魔法は、攻撃にも回復にも使える優れものだよ。だから、お嬢ちゃん、もっと堂々と胸を張ることだ。現にレベル99のエロ魔導士は、この世界を救う救世主だといわれているくらいなんだ」
 その言葉に、あの女神の最後の台詞がよみがえる。
ーさあ、あなたはこのリングで、世界を救うのですー
 彼女は別れ際に、確かそんなことを言ったのだ。
 私はそっと股間に指をやった。
 超ハイレグ衣装のVゾーンの横から指を入れると、案の定、まだリングははまったままだった。
 初めに感じたあの激烈な快感こそ引いてはいるものの、クリを締めつけられているので、どうも気分が落ち着かない。
 包皮がむけ、さきっちょが出ているため、そこが布地にこすれると、実のところ、じんわり感じてしまうのだ。
「どの道、一度ギルドに顔を出してレベル認定を受けなきゃね。そしたら、これ、もらえるから」
 ソフィアが右手の袖をまくると、大きめの腕時計みたいなものが現れた。
 スマホと時計が合体した、ウェアラブル端末みたいな装置である。
 横のボッチを押すと画面が明るくなり、
 Job:剣士
 Lv:29
 Sub;なし
 という文字が現れた。
 なるほど、これで自分のレベルを確認できるというわけか。
「これから行くミルナの村にはギルドがあるから、そこで手続きを済ませましょう」
 なんだかゲームの世界みたい、と私は思った。
 小さい頃夢中になったRPGが、ちょうどこんなふうだった。
「そこがソフィアの生まれ故郷なの?」
「そう。父と兄が住んでるの。今頃うちの果樹園は、実ったネクタルでいっぱいだろうな」
 ソフィアが遠くを見るような眼をして、つぶやいた。
「さっきも言ったけど、気をつけなよ。ここからミルナまではまだ10キロはある。本当にそのエロ魔導士しか、お供はいないのかい?」
 気づかわしげに、マスターが口をはさんだ。
「さっきまで御者がひとりいたけど、どうやら逃げちゃったみたいね。どの道、私は宮殿を追放された身なの。悪役令嬢扱いされてね。だからお供なんて、つけてもらえるわけないの」
「うは、マジで婚約破棄だったか」
 息を呑むマスター。
「誰かの罠にはまったな」
「まあね」
 ソフィアが立ち上がった。
 背中の柄に手をかけると、
「でも、この聖剣グランデルと翔子がいれば、大丈夫。ごちそうさま、マスター。スタミナ定食、おいしかったよ。今度は家族で来るからね」
 テーブルの上に金貨を置くと、ドレスの裾を翻し、外に出て行った。
 あわてて後を追おうとした私に、マスターが声をかけてきた。
「お嬢ちゃん、くれぐれも姫を頼んだよ。早くレベルを上げて、一人前の用心棒になっとくれ」
「あ、はい」
 私はうなずいた。
 正直、気が重かった。
 だって、このジョブ。
 レベル上げが、あまりに大変そうだったからである。





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