異世界病棟

#85 儀式⑤

　看護師たちが、上半身を支えて乙都を起こし、顔からマスクをはずす。
　乙都の潤んだ大きな瞳が僕を見る。
　マスクをはずした乙都は、予想以上に愛らしい顔立ちをしている。
　僕より年上のはずなのに、とても初々しい。
　ありがとう、乙都…。
　僕は胸の中でつぶやいた。
　が、もう声は出ない。
　なぜならすでに、僕の躰は双頭の男性器に変貌を遂げてしまっているからだ。
　声を出そうとしても、尿道口から少し泡が出ただけだった。
　乙都が躰をずらした。
　綺麗な形の乳房が、つんと上を向く。
　ベッドのヘッドボードに背中を預け、Mの字に股を開く。
　その中心に刻まれた縦の亀裂が開きかけ、内臓の一部みたいな肉の壁をのぞかせている。
　二枚貝の中身のようなその壁の下方に赤く爛れた穴が開き、僕を誘うように周囲の襞を蠢かせていた。
「貸しなさい。後は私がやるわ」
　背後で真琴が言い、看護師たちの手から僕を受け取った。
　僕はそれほど収縮してしまっていた。
　真琴が両手で握れるほど。
「行くわよ」
　真琴がベッドに乗ってきた。
　ずぶり。
　僕の下半身の亀頭が、何かひどく温かいものに包まれるのがわかった。
「く･･･」
　真琴がうめく。
「なんて、太い･･･」
　ズブズブズブ。
　僕を咥え込みながら、真琴がベッドの上を前進する。
　目と鼻の先に、乙都の股間が迫ってきた。
　僕の躰は、すでに真琴の胎内に呑み込まれてしまっている。
「颯太さん…ああ…」
　乙都の甘い声とともに、視界全体に赤い闇が広がった。
　ぬめり、湿ったものが、僕の頭を包みこむ。
　新鮮な血の匂いと、それとは別の、これまで嗅いだことのない生臭い匂いが、つんと鼻孔をつく。
　ぬるっ。
　上半身が乙都に呑み込まれる。
　下半身はすでに真琴の中だ。
　ふたりの女の裸身をつなぐ、怒張した筋肉の筒。
　それが僕だった。
　熱く、とてつもなく柔らかいものが、全身をしめつけてきた。
　あうあうあう･･･。
　あ、あ、あ、あ、あ、ああああああっ。
　だ、だめ。い、いく…。
　私も、い、いっちゃう…。
　女たちの歓喜の叫びが、肉を通して遠くから響いてくる。
　その声が引き金になって、僕の環形動物のような全身を、凄まじい快感が貫いた。
　意識が白熱化して、何も視えなくなる。
　ぐわっ。
　躰の中央、ふたりの女の股間に挟まれたしわくちゃの僕の陰嚢が、爆発するように膨れ上がった。
　ドクンドクンドクン･･･。
　脈動に翻弄され、女たちの胎内で僕は膨張と収縮を繰り返す。
　煮えたぎるマグマが尿道に溢れ返り、ふたつの出口めがけて殺到した。
　ああ…い、いいっ！
　僕はビクンビクンと波打つように痙攣し、そして次の瞬間、
　どびゅっ。
　どびゅっ。
　ふたつの亀頭から信じられないほど多量の精液の奔流を噴き上げて、ふたりの女の躰の中で果てたのだった。