異世界病棟

戸影絵麻

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#72 変異①

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 身体中が熱かった。
 それこそ、燃えるように。
 気味の悪い汗で膚がぬるぬるする。
 いや、というより、これは本当に汗なのだろうか。
 ワルプルギスの夜って、なんだ?
 薬が効いているって、何の?
 それより、乙都はどこだ?
 彼女をどこに連れて行った?
 くそ、躰が動かない!
 何か変だ。
 なにが、どうなってる?
「しょうがないな」
 女の声で、目が覚めた。
 黒いマスクで鼻と口を隠した、ひっつめ髪の女が上から僕をのぞきこんでいる。
 乙都ではない。
 それは少し吊り上がった切れ長の眼を濃いシャドウで縁取った、あの蓮月の顔だった。
 蓮月はマスクだけでなく、コスチュームも黒である。
 セパレーツのビキニアーマーと腰に巻きつけたミニスカート。
 両腕はむき出しだが、たくましい脚は例の網タイツで保護されている。
 つまり、いつのまにか世界は”夜モード”に変化してしまったというわけだ。
 僕はベッドの脇の床に、病衣をはだけたまま、転がっていた。
 あの検査室から、ここまで自力で逃げてきたのだろうか。
 確か、最後に、鈍器のようなもので後頭部を殴られたような気がする…。
「乙都、やつらに捕まっちゃったんだって?」
「どうして…」
 かすむ眼で、僕は蓮月を見上げた。
 この角度からだと、仁王立ちになった蓮月のミニスカートの中が丸見えだ。
 蓮月はTバック気味の際どい下着を身に着けていて、網タイツをガーターベルトで留めている。
 下からでも、ビキニアーマーを押し上げるはち切れんばかりのバストが見て取れた。
 僕の遠慮のない視線に怯むことなく、蓮月が答えた。
「うちのゲイジンに聞いたのさ。あんまり役に立たないけど、一応彼にあんたの監視、頼んであるんでね」
 監視?
 いつのまに?
 でも、もし、僕を始終監視できる者がいるとすれば、それはこの部屋の住人しかいないだろう。
「ゲイジンって…コンドウサンのこと?」
「そうだよ。なんでそう呼ぶかは、本人を見ればわかるけど」
 本人を見る?
 そういえば、僕はコンドウサンの姿を見たことがない。
「オトを、助けなきゃ…」
 弱々しくつぶやくと、
「当り前だろ? だからあたしが来てやったんだよ。けど、あんた、その身体で動けるのかい? オトがいなくなっちゃったんで、夜の薬、飲んでないね? だから、妖蛆化がめっちゃ進行しちまってる。それじゃあ、まるで…」
 蓮月は、なぜかひどく気の毒そうな眼になった。
 僕は自分の身体を見回した。
 とたんに、吐きそうになった。
 な、なんだ、これは?
 うそだろ?
 こ、こんなの、あり得ない…。
 腕も、脚も、胴も…ああっ!

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