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#47 汚染病棟①
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叫んだら胸が苦しくなってきた。
こめかみに錐でも揉みこまれるように頭が痛む。
「ぐわああっ」
耐え切れずのけぞったところに、聞き慣れた声が降ってきた。
「少年もお目覚めのようだ。そろそろ出発の準備を」
目を開く。
茶色く汚れた天井が視界に飛び込んできた。
壁もそうだ。
汚物をなすりつけたように、全体が茶褐色に汚れ、腐臭を放っている。
また、世界が変わったのだ。
僕は病室に戻っている。
いや、正確には悪夢から覚めて、また別の夢の中に入ったというべきか。
「汚染度56.9%。あちこちの病室で、変異が始まっています」
さっきのが泰良女医で、今のが乙都の声だ。
首を動かすと、元藤田氏の居た隣との間を仕切るカーテンの前に、女医と乙都が立っていた。
ハイレグのボンテージ衣装の女医は、両手に鞭を握っている。
ボデイコン風ミニワンピース姿の乙都は、背中に大剣ならぬ巨大な注射器を背負っている。
ふたりの共通点は、コスチュームが真っ黒なことと、顔の下半分を同じく黒いマスクで覆っていることだ。
それから、わずかな絶対領域だけを残した悩ましい網タイツ。
「すみませーん、遅くなりましたあ!」
そこにカーテンをめくりあげ、大柄な蓮月が飛び込んできた。
セパレーツの胸当てと腰に巻いたミニスカート。
ダイナマイトボディの蓮月も、露出過多なブラックナース姿だった。
「邪魔にならないよう、M1号には多量のモルヒネを投与しておきました。よって今夜は夜這いはないはずです」
M1号というのは、ひょっとすると、”コンドウサン”のことなのだろうか。
少なくとも蓮月は、向かい側の病床から飛び出してきたように見えたからだ。
「ここは・・・?」
ドギマギする胸を押さえて、僕はたずねた。
が、喉が震えただけで、まともに声が出なかった。
SM女王風衣装の女医に、ふたりのエロカワ看護師。
今まで見ていた悪夢の内容も気になるが、さすがにこの光景は衝撃的だった。
これは、夢の中の夢?
それとも、きのう見た夢が、やはり現実だったということか。
3人のセクシービジュアルの前に、水を抜いた池の底から出現した、あの化け物たちの記憶が遠のいていく。
案の定、僕の声は届かず、3人の意味不明な会話は続いている。
「それは本当だな? 今夜は月齢もマックスに近い。やつらの動きも活発だ。地下一階のICUまでは、かなり厳しい道のりになるだろう。障害物はひとつでも少ないほうがいい」
「レンゲ、得物は?」
大きな目をマツエクで更に際立たせた乙都が、ハアハアと爆乳を揺らす蓮月に訊く。
「あたしはこれでいいよ。遠心力加味すれば、パワー百倍だからさ」
そう言って蓮月が指し示したのは、僕の点滴スタンドである。
「てことで、せんせ、準備OKです」
乙都の台詞に、女医がうなずいた。
「よし。ベッドの柵をすべて上げろ。廊下を通過中、やつらには少年に指一本触れさせるな。廊下を突破したら、次はエレベーターホールだ、業務用エレベーターは、東病棟との境にある。ホールの雑魚どもを一掃しないことには、地階には向かえない。いいな、わかったな」
「合点です」
「了解です」
蓮月と乙都が自信ありげにうなずくと、
「レディ・ゴー!」
舞台の幕を引き開けるように、女医が手前に大きくカーテンを引っ張った。
こめかみに錐でも揉みこまれるように頭が痛む。
「ぐわああっ」
耐え切れずのけぞったところに、聞き慣れた声が降ってきた。
「少年もお目覚めのようだ。そろそろ出発の準備を」
目を開く。
茶色く汚れた天井が視界に飛び込んできた。
壁もそうだ。
汚物をなすりつけたように、全体が茶褐色に汚れ、腐臭を放っている。
また、世界が変わったのだ。
僕は病室に戻っている。
いや、正確には悪夢から覚めて、また別の夢の中に入ったというべきか。
「汚染度56.9%。あちこちの病室で、変異が始まっています」
さっきのが泰良女医で、今のが乙都の声だ。
首を動かすと、元藤田氏の居た隣との間を仕切るカーテンの前に、女医と乙都が立っていた。
ハイレグのボンテージ衣装の女医は、両手に鞭を握っている。
ボデイコン風ミニワンピース姿の乙都は、背中に大剣ならぬ巨大な注射器を背負っている。
ふたりの共通点は、コスチュームが真っ黒なことと、顔の下半分を同じく黒いマスクで覆っていることだ。
それから、わずかな絶対領域だけを残した悩ましい網タイツ。
「すみませーん、遅くなりましたあ!」
そこにカーテンをめくりあげ、大柄な蓮月が飛び込んできた。
セパレーツの胸当てと腰に巻いたミニスカート。
ダイナマイトボディの蓮月も、露出過多なブラックナース姿だった。
「邪魔にならないよう、M1号には多量のモルヒネを投与しておきました。よって今夜は夜這いはないはずです」
M1号というのは、ひょっとすると、”コンドウサン”のことなのだろうか。
少なくとも蓮月は、向かい側の病床から飛び出してきたように見えたからだ。
「ここは・・・?」
ドギマギする胸を押さえて、僕はたずねた。
が、喉が震えただけで、まともに声が出なかった。
SM女王風衣装の女医に、ふたりのエロカワ看護師。
今まで見ていた悪夢の内容も気になるが、さすがにこの光景は衝撃的だった。
これは、夢の中の夢?
それとも、きのう見た夢が、やはり現実だったということか。
3人のセクシービジュアルの前に、水を抜いた池の底から出現した、あの化け物たちの記憶が遠のいていく。
案の定、僕の声は届かず、3人の意味不明な会話は続いている。
「それは本当だな? 今夜は月齢もマックスに近い。やつらの動きも活発だ。地下一階のICUまでは、かなり厳しい道のりになるだろう。障害物はひとつでも少ないほうがいい」
「レンゲ、得物は?」
大きな目をマツエクで更に際立たせた乙都が、ハアハアと爆乳を揺らす蓮月に訊く。
「あたしはこれでいいよ。遠心力加味すれば、パワー百倍だからさ」
そう言って蓮月が指し示したのは、僕の点滴スタンドである。
「てことで、せんせ、準備OKです」
乙都の台詞に、女医がうなずいた。
「よし。ベッドの柵をすべて上げろ。廊下を通過中、やつらには少年に指一本触れさせるな。廊下を突破したら、次はエレベーターホールだ、業務用エレベーターは、東病棟との境にある。ホールの雑魚どもを一掃しないことには、地階には向かえない。いいな、わかったな」
「合点です」
「了解です」
蓮月と乙都が自信ありげにうなずくと、
「レディ・ゴー!」
舞台の幕を引き開けるように、女医が手前に大きくカーテンを引っ張った。
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