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#45 池の底
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乙都が、僕のエキスを採取する、係・・・?
エキスって、まさか…。
全身がカッと熱くなるような羞恥心。
体の中心で、カテーテルがびくんとのたうった。
が、その性的な興奮も長くは続かなかった。
すぐに泥のような睡魔が僕を押し包み、昏い闇の底へと引きずりこんでいったのだ・・・。
ふと気がつくと、僕は人混みの中にいた。
多くの老若男女が人垣をつくって、眼下の光景を眺めている。
どんよりと曇った、今にもひと雨きそうな空の下、奇妙な熱気が大気に充満している。
眼下に広がるのは、岸をコンクリートで固められた広い楕円形の池である。
池の底には水がなく、タールのような泥が一面に広がり、ものすごい異臭を放っている。
池がひょうたん型にくぼんだあたりにアーチ形の橋が架かっていて、その上にテレビ局の中継車が見えた。
ああ、また、夢か・・・。
次第にはっきりしてくる意識の中で、僕は思う。
これは、どうやらテレビ番組の生中継のようだ。
「さあ、広大な墓地公園の中にあるこの隼人池、果たして池の底からは、なにが出てくるんでしょうか」
池の底では、進行役の若手芸人が場を盛り上げようと懸命に声を張り上げている。
ん? 隼人池・・・?
どこかで聞いたような・・・。
「江戸時代のお城の瓦でしょうか。それとも池の主みたいな大物生物でしょうか。あー、それにしても、臭いですねー。ちょっとこの匂い、強烈すぎます」
芸人が大袈裟に鼻をつまんでみせると、観客たちの間からどっとばかりに笑いが起きた。
芸人の周りには、網やバケツを持ったエキストラの子どもたちが集まっている。
男子小学生が多いが、中には活発そうな中学生の女の子や、高校生らしきカップルもいる。
「さあ、そろそろ行きますか。まずは、あの、山みたいに盛り上がっているところ」
芸人が長靴の音を響かせて、先頭に立って泥の山に近づいていく。
その後を、歓声を上げながら、子どもたちが続く。
「うわあ、なんでしょうね。なんか、中でいっぱいもぞもぞ動いてるみたいですけど」
芸人が前に立ち、右手に持った熊手で泥の表面の泥を、少しばかりかき取った時だった。
どろりと崩れ落ちた真っ黒な泥の中から、濡れ光る丸いものが次から次へと現れた。
泥団子のような丸いものに亀裂ができ、赤い口が開いたかと思うと、そこからおぞましい声が聞えてきた。
-おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ。
硬直した芸人の足元に、ずるっ、ずるっと、泥から生まれた漆黒の赤ん坊の群れが這い寄っていく。
「うわあああああああっ!」
芸人が喚いた。
イケメンで知られたその蒼白な顔は、今にも眼窩から目玉がこぼれ落ちそうだ。
そしてー。
エキスって、まさか…。
全身がカッと熱くなるような羞恥心。
体の中心で、カテーテルがびくんとのたうった。
が、その性的な興奮も長くは続かなかった。
すぐに泥のような睡魔が僕を押し包み、昏い闇の底へと引きずりこんでいったのだ・・・。
ふと気がつくと、僕は人混みの中にいた。
多くの老若男女が人垣をつくって、眼下の光景を眺めている。
どんよりと曇った、今にもひと雨きそうな空の下、奇妙な熱気が大気に充満している。
眼下に広がるのは、岸をコンクリートで固められた広い楕円形の池である。
池の底には水がなく、タールのような泥が一面に広がり、ものすごい異臭を放っている。
池がひょうたん型にくぼんだあたりにアーチ形の橋が架かっていて、その上にテレビ局の中継車が見えた。
ああ、また、夢か・・・。
次第にはっきりしてくる意識の中で、僕は思う。
これは、どうやらテレビ番組の生中継のようだ。
「さあ、広大な墓地公園の中にあるこの隼人池、果たして池の底からは、なにが出てくるんでしょうか」
池の底では、進行役の若手芸人が場を盛り上げようと懸命に声を張り上げている。
ん? 隼人池・・・?
どこかで聞いたような・・・。
「江戸時代のお城の瓦でしょうか。それとも池の主みたいな大物生物でしょうか。あー、それにしても、臭いですねー。ちょっとこの匂い、強烈すぎます」
芸人が大袈裟に鼻をつまんでみせると、観客たちの間からどっとばかりに笑いが起きた。
芸人の周りには、網やバケツを持ったエキストラの子どもたちが集まっている。
男子小学生が多いが、中には活発そうな中学生の女の子や、高校生らしきカップルもいる。
「さあ、そろそろ行きますか。まずは、あの、山みたいに盛り上がっているところ」
芸人が長靴の音を響かせて、先頭に立って泥の山に近づいていく。
その後を、歓声を上げながら、子どもたちが続く。
「うわあ、なんでしょうね。なんか、中でいっぱいもぞもぞ動いてるみたいですけど」
芸人が前に立ち、右手に持った熊手で泥の表面の泥を、少しばかりかき取った時だった。
どろりと崩れ落ちた真っ黒な泥の中から、濡れ光る丸いものが次から次へと現れた。
泥団子のような丸いものに亀裂ができ、赤い口が開いたかと思うと、そこからおぞましい声が聞えてきた。
-おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ。
硬直した芸人の足元に、ずるっ、ずるっと、泥から生まれた漆黒の赤ん坊の群れが這い寄っていく。
「うわあああああああっ!」
芸人が喚いた。
イケメンで知られたその蒼白な顔は、今にも眼窩から目玉がこぼれ落ちそうだ。
そしてー。
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