激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【官能編】

戸影絵麻

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第8部 妄執のハーデス

#135 蜜の檻④

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 ざらついた少女の舌が、杏里の濡れそぼるスリットを舐め上げる。
 そして唇が、痛いほど勃起した肉の萌芽を吸ってくる。
 指は尻の肉を割り、淫汁をたっぷりまぶした指先で菊門を攻め始めている。
 敏感なふたつの穴と陰核を3点同時に責められて、杏理は今にもとろけそうだった。
 意識を失わないためには、自分からも攻めるしかない。
 そう気持ちを奮い立たせて、少女の濡れた肉襞にしゃぶりつく。
 自分がされていることをやり返しているうちに、杏里の身体の上で、次第に少女が身をくねらせ始めた。
「はあうっ」 
 あえやかな吐息を漏らし、首をのけぞらせた。
 その時になって、杏里は気づいた。
 周囲が暗くなっている。
 窓もカーテンもなくなって、宇宙空間のような虚無の中に、ふたりの躰だけが浮かんでいるのだ。
 が、それも、完全な闇ではなかった。
 上下左右、周りの至るところに、絡み合う白いふたつの裸体が浮かんでいる。
 空間自体が巨大な万華鏡と化し、ふたりの杏里の痴態をあますところなく映し出しているのだった。
 滑らかな肌と肌が絡まり合い、喘ぎ声がエコーとなって空間に満ちていく。
 こんな経験は、生まれて初めてだった。
 最も愛する者を両手にかき抱き、匂い立つ秘所に貌をうずめながら、杏里は恍惚感に痺れたようになっていた。
 全身の細胞という細胞が快感に打ち震え、とめどなく愛液を分泌しているかのようだった。
 好き…。
 杏里、好きよ…。
 愛してる…。
 杏里、愛してる…。
 ああ、杏里…杏里…私の、杏里…。
 ふたりの声がひとつになり、お互いの意識に深くしみこんだ時、ふいにそれが起こった。
 少女の身体が、ゆっくりと溶け始めたのだ。
 熱を加えられた蝋人形みたいに、徐々に形をなくし、輪郭が曖昧になっていく。
 バターのように不定形になったかと思うと、杏里の身体を包み込むように、少女の肉がぬらりと広がった。
 そのまま、スポンジに水がしみこんでいくように、じわじわと杏里の皮膚に吸収されていく。
 そうして、どれほどの時間が経ったのか。
 ふと我に返ると、杏里は全裸でただひとり、ベッドの上に仰臥しているのだった。
 周囲に光が戻っていた。
 窓の外から、朝の訪れを告げる小鳥たちのさえずりが聞こえてくる。
「杏里…」
 無意識のうちに、自分の名を呼んでいた。
 激しくオルガスムスに達した後のあのけだるさが、ぬるま湯のように全身を支配してしまっていた。
 -私たち、ひとつになるのー
 少女の声が、耳の奥に蘇る。
 あれほどまでに恋焦がれた、もうひとりの自分が発した声…。
 頬を、熱いものが伝う感触。
 いつのまにか、杏里は声を出さずに泣いていた。
 だが、不思議と虚しさはなかった。
 それどころか、心の中の欠けていた部分が、何かで満たされた気さえした。
 ー流出だよー
 ふと、ジェニーの”声”がした。
 -言っただろ? 流出が始まったのさー

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