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第8部 妄執のハーデス
#86 2回戦⑤
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杏里の容姿は、よほど見る者の嗜虐心をそそるようにできているらしい。
マコトにも確か、同じような台詞を吐かれたような気がする。
全身に殺気をまとったリサが、渾身の力をこめてチェーンをふるう。
そのたびに杏里の白いレオタードが裂け、隠花植物の茎のように生白い肌があらわになる。
床に転がって避けようとしたところを、背中に金属製の鞭を振り下ろされ、杏里は海老のように跳ねた。
布地がすだれのように弾け、杏里はすでにほぼ全裸に近い状態だ。
そこに更に鞭が振り下ろされ、柔らかな肌に赤い蚯蚓腫れを刻み込んでいく。
気が遠くなるほどの激痛に、杏里は犬のように喘いでいる。
普通なら、タナトスの防御本能が、閾値を超えたところで痛みを快感に転換するはずだ。
だが、触手をはじめとする新たな機能と引き換えに、その機能を杏里は今や失ってしまっていた。
それが、とてつもなく痛い。
文字通り、痛くてならないのだ。
金属製の小さなリングを数珠つなぎにしたリサのチェーンは、重いうえに当たるとダメージが大きかった。
打たれたところからたちまち皮膚が裂け、その下の肉や脂肪が弾けてしまうのだ。
全身血みどろになり、床を這う杏里。
豊満な乳房にも、艶やかな尻にも、網の目のように真紅の筋が走り、どくどくと鮮血をあふれ出させている。
「さあ、とどめだよ」
勝ち誇ったようにリサが言い、杏里の細い首にチェーンを巻きつけた。
そのまま、両手にチェーンの端を絡めて、杏里をずるずると吊り上げにかかる。
喉元深く金属の鞭が食い込み、杏里は苦しさのあまり声にならぬ悲鳴を上げた。
鈍い音がして喉笛がつぶれ、ごぼっと口の中に血が溢れ出してきた。
い、息が。
で、できない…。
チェーンの食い込んだところに、必死で爪を立てた。
爪で肌を破り、そのすきまに指を突っ込もうとする。
が、だめだった。
チェーンは肉の中にあまりに深くめり込み過ぎていた。
このままではいずれ、気管がつぶれ、脳に酸素が供給されなくなるだろう。
タナトスの唯一の弱点は、脳である。
体の器官の中で、脳だけは再生できないのだ。
つまり、脳死状態に陥れば、杏里は死ぬ。
それには別に頭部を破壊する必要はない。
酸素を止めればそれで充分なのである。
「どうだ? 苦しいか?」
杏里を己の顔すれすれまで引き寄せて、リサがあざ笑う。
「そのまま、緩慢に死んでいくんだね。この偽善者め」
杏里のかすむ視界の隅に、ふいに明るいオレンジが飛び込んできたのはその時だ。
リサの右耳の後ろ。
耳たぶに隠れたあたりが、ぼんやりオレンジ色の微光を放っている。
杏里は目を見開いた。
見つけた。
リサの性感帯。
目を閉じ、触手をイメージする。
乳首の先が熱くなり、身体からぬるりと何かが離脱していく感触。
再び目を開けると、2本の触手がリサの腋の下を通って伸び上がり、背後でゆらゆら揺れていた。
‼
気合とともに、片方の触手が舞い降りて、リサの耳の後ろに貼りついた。
触手の先端は、媚薬成分を含んだ体液を吐き出す”口”になっている。
その環形動物の口吻に似た器官が、リサの性感帯に吸着したのだ。
「ううっ」
チェーンを操るリサの力が緩んだ。
杏里は右手を伸ばし、その胸元をつかんだ。
ハイネックの服を、力任せに引き破る。
ボタンが跳ね飛び、白い胸元がのぞいた。
案の定、服に隠れていた鎖骨の下あたりにも、オレンジの斑点が見えた。
ためらわず、もう一本の触手でそこを攻撃する。
「な、何? こ、これ?」
快感に体を小刻みに震わせながら、リサが叫ぶ。
その手から乾いた音を立て、チェーンが落ちた。
自分で服の前を開き、下着をずらして己の乳房をまさぐり始めるリサ。
杏里の乳首から伸びた触手は、リサの2か所の性感帯をピンポイントで捕らえ、その皮膚の下深く潜り込んでいる。
触手全体が規則正しく蠕動しているのは、杏里の体液をリサの体内に送り込んでいる証拠だろう。
それと同時に、杏里の身体では、凄まじい速さで修復作業が行われ始めていた。
毛穴からにじみ出た防御液の作用で流血が止まり、徐々に傷口が塞がっていく。
つぶれた喉が再生し、少しかすれてはいるものの、なんとか声を出せるところまで回復してきていた。
「タナトスである以上、あなたは、この快楽から、逃れられない」
杏里は自分と同じ背丈のリサの首に、ゆっくりと両手をかけた。
「そして、その愉悦の中で、あなたは死ぬの」
両手にぐっと力を籠める。
「ぐっ」
リサの口から泡とともに薄桃色の舌が飛び出した。
足元に崩れ落ちるリサ。
「逝きなさい」
親指を喉にかけると、全身の力をその指に込めて、杏里はリサの気管をずぶずぶと押しつぶしにかかった。
マコトにも確か、同じような台詞を吐かれたような気がする。
全身に殺気をまとったリサが、渾身の力をこめてチェーンをふるう。
そのたびに杏里の白いレオタードが裂け、隠花植物の茎のように生白い肌があらわになる。
床に転がって避けようとしたところを、背中に金属製の鞭を振り下ろされ、杏里は海老のように跳ねた。
布地がすだれのように弾け、杏里はすでにほぼ全裸に近い状態だ。
そこに更に鞭が振り下ろされ、柔らかな肌に赤い蚯蚓腫れを刻み込んでいく。
気が遠くなるほどの激痛に、杏里は犬のように喘いでいる。
普通なら、タナトスの防御本能が、閾値を超えたところで痛みを快感に転換するはずだ。
だが、触手をはじめとする新たな機能と引き換えに、その機能を杏里は今や失ってしまっていた。
それが、とてつもなく痛い。
文字通り、痛くてならないのだ。
金属製の小さなリングを数珠つなぎにしたリサのチェーンは、重いうえに当たるとダメージが大きかった。
打たれたところからたちまち皮膚が裂け、その下の肉や脂肪が弾けてしまうのだ。
全身血みどろになり、床を這う杏里。
豊満な乳房にも、艶やかな尻にも、網の目のように真紅の筋が走り、どくどくと鮮血をあふれ出させている。
「さあ、とどめだよ」
勝ち誇ったようにリサが言い、杏里の細い首にチェーンを巻きつけた。
そのまま、両手にチェーンの端を絡めて、杏里をずるずると吊り上げにかかる。
喉元深く金属の鞭が食い込み、杏里は苦しさのあまり声にならぬ悲鳴を上げた。
鈍い音がして喉笛がつぶれ、ごぼっと口の中に血が溢れ出してきた。
い、息が。
で、できない…。
チェーンの食い込んだところに、必死で爪を立てた。
爪で肌を破り、そのすきまに指を突っ込もうとする。
が、だめだった。
チェーンは肉の中にあまりに深くめり込み過ぎていた。
このままではいずれ、気管がつぶれ、脳に酸素が供給されなくなるだろう。
タナトスの唯一の弱点は、脳である。
体の器官の中で、脳だけは再生できないのだ。
つまり、脳死状態に陥れば、杏里は死ぬ。
それには別に頭部を破壊する必要はない。
酸素を止めればそれで充分なのである。
「どうだ? 苦しいか?」
杏里を己の顔すれすれまで引き寄せて、リサがあざ笑う。
「そのまま、緩慢に死んでいくんだね。この偽善者め」
杏里のかすむ視界の隅に、ふいに明るいオレンジが飛び込んできたのはその時だ。
リサの右耳の後ろ。
耳たぶに隠れたあたりが、ぼんやりオレンジ色の微光を放っている。
杏里は目を見開いた。
見つけた。
リサの性感帯。
目を閉じ、触手をイメージする。
乳首の先が熱くなり、身体からぬるりと何かが離脱していく感触。
再び目を開けると、2本の触手がリサの腋の下を通って伸び上がり、背後でゆらゆら揺れていた。
‼
気合とともに、片方の触手が舞い降りて、リサの耳の後ろに貼りついた。
触手の先端は、媚薬成分を含んだ体液を吐き出す”口”になっている。
その環形動物の口吻に似た器官が、リサの性感帯に吸着したのだ。
「ううっ」
チェーンを操るリサの力が緩んだ。
杏里は右手を伸ばし、その胸元をつかんだ。
ハイネックの服を、力任せに引き破る。
ボタンが跳ね飛び、白い胸元がのぞいた。
案の定、服に隠れていた鎖骨の下あたりにも、オレンジの斑点が見えた。
ためらわず、もう一本の触手でそこを攻撃する。
「な、何? こ、これ?」
快感に体を小刻みに震わせながら、リサが叫ぶ。
その手から乾いた音を立て、チェーンが落ちた。
自分で服の前を開き、下着をずらして己の乳房をまさぐり始めるリサ。
杏里の乳首から伸びた触手は、リサの2か所の性感帯をピンポイントで捕らえ、その皮膚の下深く潜り込んでいる。
触手全体が規則正しく蠕動しているのは、杏里の体液をリサの体内に送り込んでいる証拠だろう。
それと同時に、杏里の身体では、凄まじい速さで修復作業が行われ始めていた。
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つぶれた喉が再生し、少しかすれてはいるものの、なんとか声を出せるところまで回復してきていた。
「タナトスである以上、あなたは、この快楽から、逃れられない」
杏里は自分と同じ背丈のリサの首に、ゆっくりと両手をかけた。
「そして、その愉悦の中で、あなたは死ぬの」
両手にぐっと力を籠める。
「ぐっ」
リサの口から泡とともに薄桃色の舌が飛び出した。
足元に崩れ落ちるリサ。
「逝きなさい」
親指を喉にかけると、全身の力をその指に込めて、杏里はリサの気管をずぶずぶと押しつぶしにかかった。
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