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#1 予兆
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ランドセルを置こうとして、それに気づいた。
隣の机に、花が飾られている。
安物の花瓶にさされた、名も知れぬ赤い花。
「小夜子、始まっちゃったんだって」
振り向いて、佳世が言った。
そばかすの散った顔に、悲しげな表情を浮かべている。
「しょうがないよね」
小さく肩をすくめて、僕を見た。
「始まっちゃったんだから」
「うん…」
あいまいに返事をして、椅子に座った。
始業直前の教室の中は、いつにも増してにぎやかだ。
誰も小夜子の不在を気にかけていないように見えるのは、これが日常茶飯事だからだろう。
佳世はまだこっちを見つめている。
どきどきして、顔を上げられない。
いろいろなイメージが頭に浮かんだ。
だめだ、そんなこと、今思い出しちゃあ。
「純もそろそろなんじゃない?」
案の定、佳世が痛いところを突いてきた。
佳世はブスの癖に、変に鋭いところがあるのだ。
「だって、それ」
僕の鼻の下あたりを指さして、意味ありげな目をしている。
「違うって」
僕はあわてて教科書を広げ、顔を隠した。
「もう、前向いてろよ。先生が来るぞ」
「怪しい」
佳世が意地悪く笑った。
「もう一輪、お花、用意しておいたほうがいいかなあ」
胸に突き刺さるひと言だった。
「だまれ」
怒りに任せ、僕は椅子の背を蹴った。
「おまえのほうが先かもしれないだろ。このブスが」
隣の机に、花が飾られている。
安物の花瓶にさされた、名も知れぬ赤い花。
「小夜子、始まっちゃったんだって」
振り向いて、佳世が言った。
そばかすの散った顔に、悲しげな表情を浮かべている。
「しょうがないよね」
小さく肩をすくめて、僕を見た。
「始まっちゃったんだから」
「うん…」
あいまいに返事をして、椅子に座った。
始業直前の教室の中は、いつにも増してにぎやかだ。
誰も小夜子の不在を気にかけていないように見えるのは、これが日常茶飯事だからだろう。
佳世はまだこっちを見つめている。
どきどきして、顔を上げられない。
いろいろなイメージが頭に浮かんだ。
だめだ、そんなこと、今思い出しちゃあ。
「純もそろそろなんじゃない?」
案の定、佳世が痛いところを突いてきた。
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「だって、それ」
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「違うって」
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「もう、前向いてろよ。先生が来るぞ」
「怪しい」
佳世が意地悪く笑った。
「もう一輪、お花、用意しておいたほうがいいかなあ」
胸に突き刺さるひと言だった。
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