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第3部 凶愛のエロス
プロローグ
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その”襲撃”は想定内だった。
これだけエレベーターが混んでいれば、必ずひとりは狂う者が出る。
それは杏里が”タナトス”である限り、仕方のないことなのだ。
背後から胸を揉みしだかれながら、ちらっと隣の小田切を見上げる。
気づいているはずなのに、小田切は何もいわない。
我関せずといった様子で、杏里に冷たい横顔を見せているだけだ。
杏里は心の中でため息をつき、”処理”にかかった。
短いスカートがめくられ、薄い下着の布地越しに硬く熱いものが当っている。
棒状のそれは、杏里の尻の割れ目にぐいぐいと押しつけられ、ゆるやかな前後運動を始めていた。
杏里は両手を後ろに回した。
手探りで当たりをつけると、
ズボンの上からその棒状のふくらみを撫でさすった。
亀頭がはちきれんばかりに膨張している。
そこを中心に愛撫を繰り返す。
すぐ後ろでうめき声が聞こえた。
切なげに喘いでいる。
空いている左手でチャックを下ろす。
相手は下着を穿いていなかった。
杏里の右の掌が、飛び出してきた獲物をつかまえた。
左手で根元を強く握り、右手でしごく。
しごくたびに指の腹に亀頭の先端が当るように、人差し指を立てておくのも忘れない。
すでに亀頭はぬるぬるの液で覆われていた。
だが、これは精液ではない。
前駆液だ。
握りを強め、さらにピストン運動を速くする。
チン、と澄んだ音がして、エレベーターが止まるのと、男が果てるのとがほとんど同時だった。
-あうー
くぐもったうめき声とともに、右手の中のそれがありえないくらい太く膨らんだ。
杏里はとっさに先端を横に逸らした。
肉棒がどくんどくんと蠢動する。
煮えたぎる精液が飛び散り、
「きゃ、何これ」
後ろで悲鳴が上がる。
杏里はしぼみ始めた”それ”から手を離し、そ知らぬ顔でエレベーターを降りた。
充分距離を取ってから振り向くと、エレベーターの床に眼鏡をかけた小太りの男が座り込んでいた。
横に中年の女が立っていて、男に向かって何やらわめいている、
大方クリーニング代の請求でもしているのだろう。
「ご苦労」
杏里と肩を並べて歩きながら、小田切がいった。
「鮮やかなもんだな」
杏里はそれには応えず、ちょっと立ち止まって、ステンレススチールの壁を鏡代わりに、身なりを整えた。
襟ぐりの大きく開いたノースリーブの白いブラウス。
股下5cmの短すぎるチェックのミニスカート。
年齢の割に豊満過ぎる胸。
くびれた腰。
張り出した尻。
むっちりした生白い太腿、
適度に長い脚。
ふんわりとした髪に覆われた貌は、体とはアンバランスに、あまりにも童顔である。
切なげな瞳とちょっと厚めの蕾のような唇が、何かを訴えているようにも見える。
が、それらの外見は、すべて"タナトス仕様”なのだった。
杏里の内面とは無関係に、ただ獲物を惹きつける目的のためだけに、磨きあげられている。
杏里の獲物は、"死への衝動"を限界にまで高め、それを他者への攻撃へ転化しようとする者たち。
杏里はそれを吸収し、エロスに変えて"浄化"する。
「あそこだ」
下りのエスカレーターに乗ったところで、小田切が前方を指差した。
ガラス張りの外壁を通して、滑走路の向こうに円形の背の低い建物が見える。
「最終試験って、何やるの?」
鉛色の空の下で銀色に光るその建物を眺めながら、杏里は訊いた。
「さあ」
小田切が首をかしげる。
「冬美は、模擬戦闘みたいなものだ、といってたが」
「パスできるかな。あの子」
そうつぶやいている自分に気づいて、杏里はあわてて首をぶるると横に振り、己の台詞を打ち消した。
「ま、私にはどうでもいいことなんだけどね」
むらむらと怒りが胸の底からこみ上げてくる。
怒りはどうしようもない切なさを伴い、
同時に、悔し涙が溢れそうになった。
一週間ほど前の、あの屈辱を思い出したのだ。
これだけエレベーターが混んでいれば、必ずひとりは狂う者が出る。
それは杏里が”タナトス”である限り、仕方のないことなのだ。
背後から胸を揉みしだかれながら、ちらっと隣の小田切を見上げる。
気づいているはずなのに、小田切は何もいわない。
我関せずといった様子で、杏里に冷たい横顔を見せているだけだ。
杏里は心の中でため息をつき、”処理”にかかった。
短いスカートがめくられ、薄い下着の布地越しに硬く熱いものが当っている。
棒状のそれは、杏里の尻の割れ目にぐいぐいと押しつけられ、ゆるやかな前後運動を始めていた。
杏里は両手を後ろに回した。
手探りで当たりをつけると、
ズボンの上からその棒状のふくらみを撫でさすった。
亀頭がはちきれんばかりに膨張している。
そこを中心に愛撫を繰り返す。
すぐ後ろでうめき声が聞こえた。
切なげに喘いでいる。
空いている左手でチャックを下ろす。
相手は下着を穿いていなかった。
杏里の右の掌が、飛び出してきた獲物をつかまえた。
左手で根元を強く握り、右手でしごく。
しごくたびに指の腹に亀頭の先端が当るように、人差し指を立てておくのも忘れない。
すでに亀頭はぬるぬるの液で覆われていた。
だが、これは精液ではない。
前駆液だ。
握りを強め、さらにピストン運動を速くする。
チン、と澄んだ音がして、エレベーターが止まるのと、男が果てるのとがほとんど同時だった。
-あうー
くぐもったうめき声とともに、右手の中のそれがありえないくらい太く膨らんだ。
杏里はとっさに先端を横に逸らした。
肉棒がどくんどくんと蠢動する。
煮えたぎる精液が飛び散り、
「きゃ、何これ」
後ろで悲鳴が上がる。
杏里はしぼみ始めた”それ”から手を離し、そ知らぬ顔でエレベーターを降りた。
充分距離を取ってから振り向くと、エレベーターの床に眼鏡をかけた小太りの男が座り込んでいた。
横に中年の女が立っていて、男に向かって何やらわめいている、
大方クリーニング代の請求でもしているのだろう。
「ご苦労」
杏里と肩を並べて歩きながら、小田切がいった。
「鮮やかなもんだな」
杏里はそれには応えず、ちょっと立ち止まって、ステンレススチールの壁を鏡代わりに、身なりを整えた。
襟ぐりの大きく開いたノースリーブの白いブラウス。
股下5cmの短すぎるチェックのミニスカート。
年齢の割に豊満過ぎる胸。
くびれた腰。
張り出した尻。
むっちりした生白い太腿、
適度に長い脚。
ふんわりとした髪に覆われた貌は、体とはアンバランスに、あまりにも童顔である。
切なげな瞳とちょっと厚めの蕾のような唇が、何かを訴えているようにも見える。
が、それらの外見は、すべて"タナトス仕様”なのだった。
杏里の内面とは無関係に、ただ獲物を惹きつける目的のためだけに、磨きあげられている。
杏里の獲物は、"死への衝動"を限界にまで高め、それを他者への攻撃へ転化しようとする者たち。
杏里はそれを吸収し、エロスに変えて"浄化"する。
「あそこだ」
下りのエスカレーターに乗ったところで、小田切が前方を指差した。
ガラス張りの外壁を通して、滑走路の向こうに円形の背の低い建物が見える。
「最終試験って、何やるの?」
鉛色の空の下で銀色に光るその建物を眺めながら、杏里は訊いた。
「さあ」
小田切が首をかしげる。
「冬美は、模擬戦闘みたいなものだ、といってたが」
「パスできるかな。あの子」
そうつぶやいている自分に気づいて、杏里はあわてて首をぶるると横に振り、己の台詞を打ち消した。
「ま、私にはどうでもいいことなんだけどね」
むらむらと怒りが胸の底からこみ上げてくる。
怒りはどうしようもない切なさを伴い、
同時に、悔し涙が溢れそうになった。
一週間ほど前の、あの屈辱を思い出したのだ。
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