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第2章 謝肉祭

#21 杏里の水着

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 不可解な話題で私を混乱に陥れた杏里だったが、いざお店を回り始めると、いつものキラキラ輝く美少女のオーラをすぐに取り戻した。
「お部屋の模様替えするの。杏里ならどれがいいと思う?」
 そう予防線を張っておいて、私は壁紙やらカーペットを予定通り買いそろえた。
 杏里の意見を訊いたのはほかでもない。
 私の監禁部屋の主人は、私ではなく、あくまでも杏里自身だからである。
「いっぱい買っちゃったね。私も持ってあげる」
「助かるよ。じゃ、これお願い」
 かさばる荷物を杏里にも持ってもらって、私たちは最後の目的地、水着売り場へと足を向けた。
「スクール水着なら、学生服のコーナーじゃない?」
 大人用の下着専門店に入ろうとする杏里にそう声をかけると、
「せっかく買うなら、私はこっちのほうがいいな」
 杏里が悪戯っぽく肩をすくめてみせた。
 私ひとりではとても入れない店である。
 ショーウィンドウのマネキンが身に着けているのは、どれもアダルトな下着ばかりだ。
 でも、大人びた杏里と一緒だと、カラフルな下着で埋め尽くされた店内も、それほど恥ずかしくなくなるから不思議だった。
 店は奥が水着コーナーになっていた。
 まだ5月半ばだというのに、新作水着がずらりと並んでいる。
「なるべくスク水に近くて、かっこいいの」
 そんなことを言いながら、一枚一枚手に取って、品定めする杏里。
 私はといえば、マネキンが着ているマイクロビキニに釘づけだった。
 何も自分が着たいと思ったわけではない。
 杏里がこれを身に着けたら、どんなにか素敵なことだろう。
 思わずそう妄想してしまったのである。
「試着できますか?」
 ふと我に返ると、杏里が店員に訊いていた。
 ボーイッシュなショートカットを明るいブラウンに染めた、制服姿の活発そうな女性である。
「え、ええ、できますよ」
 杏里を見守る店員の目が、怪しく輝いているのを私は見逃さなかった。
 この女、早くもタナトスとやらの影響を受け始めているのに違いない。
「よどみ。こっちに来て。一緒に見てほしいの」
 試着室の前から、杏里が手招きした。
「待って」
 私は衝動的に、マネキンが着ているのと色違いのマイクロビキニを手に取った。
 試着ができるのなら、これも着てもらおう。
 そして写メを撮らせてもらっちゃおう。
 そう思ったのである。
 自分の選んだ水着を手に、杏里が試着室に入っていった。
 店員は、少し離れたところからその様子を食い入るようにじいっと見つめている。
「うわ、きつい」
 衣ずれの音に混じって、杏里の悲鳴が聞こえてくる。
「こりゃ、ちょっと、ダイエットしなきゃ」
 やがて、カーテンを開けて杏里が恥ずかしそうに外に出てきた。
「やだ。マジでそれなの?」
 私は絶句した。
 杏里が身に着けている水着は、なるほど紺色のワンピースタイプである。
 水着だから身体のラインが強調されてしまっているのは、ある程度仕方ないだろう。
 だが、問題は股繰りの部分のデザインだった。
 目が覚めるほど急角度のハイレグなのだ。
 杏里でなくては、とても着られない露出度の高さなのである。
 私はバスの中で来た杏里のあそこを思い出していた。
 剃っているわけでもなかろうに、杏里のあそこはつるつるだったのだ。
 だからこそ、こんなハイレグを着てもさまになる。
「それじゃ、先生に叱られない?」
 呆れてコメントすると、
「大丈夫。タナトスの衣装は”委員会”公認だから」
 またしても、杏里が意味不明なことを言った。
 委員会?
 何だろう?
 教育委員会のことだろうか?
「ま、そこまで言うなら、お好きなように」
 私はそれ以上追及するのはやめて、代わりにジーンズのポケットからスマホを取り出した。
「じゃさ、ちょっと写メ撮らせてもらっていいかな」

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