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第1章 転校生
#4 触れ合い
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自慢するわけではないが、私は勉強が得意である。
体育のような実技と違い、頭だけを使えばそれで済むからだ。
だから成績もクラスで上位なのだが、その日ばかりは勝手が違った。
隣の席が気になって、授業に集中できないのだ。
横目で観察すると、杏里は突き出た胸を机の上に乗せるようにして座っていた。
そしてけだるげに頬杖をつき、愁いを帯びた瞳を黒板のほうに向けている。
肌は驚くほど肌理が細かく、つやつや輝いて見えるほどだった。
更に私を落ち着かなくさせたのは、その匂いである。
杏里はシャンプーやリンスとも違う、独特の匂いを周囲に漂わせていた。
フェロモンに匂いというものがあるのなら、おそらくこんな感じではないかと思わせる、ひどく”そそる”匂いだった。
私は高鳴る鼓動を抑え切れなかった。
あの肌に触りたいと思った。
もっとそばに寄って、心ゆくまで匂いを嗅ぎたかった。
ふつうなら、これは強硬手段に出ない限り、かなわぬ思いである。
ところが、なぜか今回だけは勝手が違った。
1時間目が終わり、放課になると、どうしたことか、杏里のほうから話しかけてきたのである。
「鰐部さん、お願いがあるんだけど…」
びくっとして振り向いた私の眼は、吸い込まれるようにその太腿と太腿の間に釘付けになった。
杏里は身体ごとこっちを向いている。
そのため、股間から白いパンティがもろに見えているのだ。
座った拍子に下着が丸見えになってしまうほど、スカート丈が短いのである。
私は杏里の股間から無理やり視線を引きはがし、そのふっくらした胸、それから愛くるしい顏へと目をやった。
「あのね、もし余分に持ってたらなんだけど、消しゴム、貸してくれないかなと思って」
バツの悪そうな表情を浮かべ、杏里が微笑んだ。
「筆箱に入れたつもりだったんだけどね、今見たら入ってなくって」
これには驚いた。
消しゴムなど、前の席の生徒に借りればいいだけのことである。
普通の人間なら、奇怪なマスクで顔を隠した私などには、おいそれと話しかけてこないものなのだ。
もちろん、消しゴムの予備くらいは持っていた。
私は黙って右手を伸ばし、杏里の机に消しゴムを置いた。
返事をしなかったのには理由がある。
私の場合、口がふたつに分かれているため、声を出そうとすると、空気が抜けたみたいに奇妙な発声になってしまうのだ。
だから極力しゃべらない。
教師たちもそれを知っているから、授業中、指名されることもない。
「わあ、ありがとう」
杏里が嬉しそうに言って、手を伸ばした。
私がまだ消しゴムを離す前だったから、必然的に指と指が触れ合った。
感電したようなショックがあった。
気がつくと、私は杏里の手をきつく握りしめていた。
私の節くれだった指につかまれた杏里の掌は、かすかに湿っていて、ひどく柔らかかった。
「どうしたの?」
杏里がこっちに身を乗り出し、下から不思議そうに私の顔を覗き込んでいた。
セーラー服の胸元が開き、ふわっとあの体臭が立ち昇る。
その官能的な匂いと柔らかな掌の感触に、頭がくらくらした。
体の芯が疼く。
乳首が、痛いほど、勃ってきている。
私はひそかに喘ぎ、そして痛切に思った。
この子を、飼いたい。
私だけのものに、してしまいたい…。
「後で、一緒にお弁当、食べていい?」
手を引っ込めると、杏里が笑った。
そこにだけ急に陽が射したような屈託のない微笑に、私は思わず見とれてしまっていた。
こんな僥倖が、あっていいものだろうか。
獲物のほうから、身を差し出そうというのである。
私はぎこちなくうなずいてみせた。
そして、興奮を抑え、じっくり計画を練ることにした。
体育のような実技と違い、頭だけを使えばそれで済むからだ。
だから成績もクラスで上位なのだが、その日ばかりは勝手が違った。
隣の席が気になって、授業に集中できないのだ。
横目で観察すると、杏里は突き出た胸を机の上に乗せるようにして座っていた。
そしてけだるげに頬杖をつき、愁いを帯びた瞳を黒板のほうに向けている。
肌は驚くほど肌理が細かく、つやつや輝いて見えるほどだった。
更に私を落ち着かなくさせたのは、その匂いである。
杏里はシャンプーやリンスとも違う、独特の匂いを周囲に漂わせていた。
フェロモンに匂いというものがあるのなら、おそらくこんな感じではないかと思わせる、ひどく”そそる”匂いだった。
私は高鳴る鼓動を抑え切れなかった。
あの肌に触りたいと思った。
もっとそばに寄って、心ゆくまで匂いを嗅ぎたかった。
ふつうなら、これは強硬手段に出ない限り、かなわぬ思いである。
ところが、なぜか今回だけは勝手が違った。
1時間目が終わり、放課になると、どうしたことか、杏里のほうから話しかけてきたのである。
「鰐部さん、お願いがあるんだけど…」
びくっとして振り向いた私の眼は、吸い込まれるようにその太腿と太腿の間に釘付けになった。
杏里は身体ごとこっちを向いている。
そのため、股間から白いパンティがもろに見えているのだ。
座った拍子に下着が丸見えになってしまうほど、スカート丈が短いのである。
私は杏里の股間から無理やり視線を引きはがし、そのふっくらした胸、それから愛くるしい顏へと目をやった。
「あのね、もし余分に持ってたらなんだけど、消しゴム、貸してくれないかなと思って」
バツの悪そうな表情を浮かべ、杏里が微笑んだ。
「筆箱に入れたつもりだったんだけどね、今見たら入ってなくって」
これには驚いた。
消しゴムなど、前の席の生徒に借りればいいだけのことである。
普通の人間なら、奇怪なマスクで顔を隠した私などには、おいそれと話しかけてこないものなのだ。
もちろん、消しゴムの予備くらいは持っていた。
私は黙って右手を伸ばし、杏里の机に消しゴムを置いた。
返事をしなかったのには理由がある。
私の場合、口がふたつに分かれているため、声を出そうとすると、空気が抜けたみたいに奇妙な発声になってしまうのだ。
だから極力しゃべらない。
教師たちもそれを知っているから、授業中、指名されることもない。
「わあ、ありがとう」
杏里が嬉しそうに言って、手を伸ばした。
私がまだ消しゴムを離す前だったから、必然的に指と指が触れ合った。
感電したようなショックがあった。
気がつくと、私は杏里の手をきつく握りしめていた。
私の節くれだった指につかまれた杏里の掌は、かすかに湿っていて、ひどく柔らかかった。
「どうしたの?」
杏里がこっちに身を乗り出し、下から不思議そうに私の顔を覗き込んでいた。
セーラー服の胸元が開き、ふわっとあの体臭が立ち昇る。
その官能的な匂いと柔らかな掌の感触に、頭がくらくらした。
体の芯が疼く。
乳首が、痛いほど、勃ってきている。
私はひそかに喘ぎ、そして痛切に思った。
この子を、飼いたい。
私だけのものに、してしまいたい…。
「後で、一緒にお弁当、食べていい?」
手を引っ込めると、杏里が笑った。
そこにだけ急に陽が射したような屈託のない微笑に、私は思わず見とれてしまっていた。
こんな僥倖が、あっていいものだろうか。
獲物のほうから、身を差し出そうというのである。
私はぎこちなくうなずいてみせた。
そして、興奮を抑え、じっくり計画を練ることにした。
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