サイコパスハンター零

戸影絵麻

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第4章 百合と外道と疾走するウロボロス

#18 杏里、抱かれる

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 取調室の隣の小部屋に戻ると、三上が振り返った。

「あ、ニラさん。なんだか様子が変なんですが」

「どうした?」

 韮崎がゲジゲジ眉毛を吊り上げる。

「山さん、さっきから動かないんですよ」

「寝ちゃったんじゃないですか? 野崎なんか、さっきからずっと寝てるし」

 横から高山が呆れたように口を挟む。

 マジックミラーを覗くと、なるほど、零の前に座った山田巡査部長は、背筋をピンと伸ばして固まってしまったように見える。

 と、ふらりと零が立ち上がった。

「おじさんたち、もういいでしょう?」

 窓を擬したマジックミラーの前に立つと、切れ長の目でじっとこちらを見据えて、言った。

「こんなことして遊んでる暇はない。それに、私、そろそろ限界だし」

 言いながら、おもむろに両腕を広げてみせた。

 着物の袂が広がり、木の葉模様がひとつひとつ”眼”に変わり始めた。

 まるでオセロゲームで白いコマをひっくり返して、黒に変えるような感じだった。

 眼がひとつ開くたびに、

 パチッ。

 パチッ。

 とそんな音がする気さえした。

「あ」

 周囲を見回して、杏里は絶句した。

 みんな、動かなくなっている。

 韮崎も三上も高山も、零の着物の百目に魅入られたように固まって、微動だにしないのだ。

「杏里、帰ろう」

 マジックミラー越しに杏里を見つめて、零が言った。

「悪いが、すぐに”補給”させてくれ。大晦日が近いから、体調がどん底なんだ。この時期は、1年で月の力がいちばん弱くてね」

「わ、わかった」

 杏里はコクコクとうなずいてみせた。

 零は最初から知っていたのだ。

 この部屋から杏里たちが様子を窺っていたことを。



 廊下に出ると、ちょうど取調室から零が姿を現すところだった。

 反射的に体が動いていた。

 手にしていたバッグを放り出すと、杏里は物も言わずに零にしがみついた。

「疲れたよ」

 杏里の肩に顎を乗せて、零が苦笑混じりに言った。

「ごめんね…」

 杏里は零の胸元に頬を擦りつけた。

「零にばっかり、辛い思いさせちゃって…」

「馬鹿だな」

 零が杏里の頬を両手で挟み、顔を上向きにさせた。

「私はおまえを守る。それが生き甲斐なんだ」

 唇が近づいてくる。

 杏里はうっとりと瞳を閉じた。

「だがな、先に断っておくが、月の力が弱まると、私の中の獣性が目覚めてしまう。だから、今夜は少しばかり乱暴になるかもしれない。痛い思いをさせたら、許してくれ」
 
 キスが欲しくて、杏里にはもう、うなずくことしかできなかった。

 零の唇はひどく冷たく、塩辛い味がした。


 その夜、黒一色の零の部屋。

 蝋燭だけの明かりに照らされ、杏里は真っ白な裸身を零の前に晒していた。

 両手をうなじのあたりで縛られ、身動きできない状態でベッドに転がされているのだった。

 その上に、これまた全裸の零が四つん這いになって、跨っている。

 両手で杏里のこぼれるような乳房を揉みしだき、時折引き千切るようにこねまわす。

 先が注射針と化した長い舌が、杏里の首のつけ根につき刺さっていた。

 零が杏里の硬くなった乳首を指でつまみ、つねる。

 空いたほうの手を下に回し、杏里の太腿の間で濡れて光っている蕾を弄り始めた。

「あんっ」
 
 ベッドの上で、零に組み伏せられたまま杏里はのけぞった。

 溶ける。

 身体がどろどろに溶けていく…。

「だめ、零…もう、私」

 喘いだ。

「おかしくなっちゃいそう…」

 やがて零の指がくちゃくちゃと音を立て始め…。

「あふうっ」

 杏里は痺れるような愉悦の波にもまれて、あっけなく気を失った。

















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