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第4章 百合と外道と疾走するウロボロス
#11 杏里、現場に急ぐ
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「犯人は、子ども…?」
杏里は呆然とつぶやいた。
「赤ランドセルなら、血がこぼれても、目立たない…?」
ということは、女の子?
「馬鹿野郎、そんなことあってたまるかよ!」
韮崎が怒りで真っ赤になって噛みついた。
「なんで子どもがそんなことするんだよ? 動機がないだろう動機が!」
「動機? だからそれが魔法陣なんでしょ? あ、そういえば、佐々木涼子の事件は、あなたたちの管轄だったわね。ほら、これが涼子の死亡推定時刻直前に、マンションの防犯カメラに写ってた映像。こっちは同じく、北区の事件現場の防犯カメラに写ってたもの。今朝やっと上がってきた生情報なんだけど、比べてみて。どう思う?」
大判の茶封筒から取り出し、ヤチカがマグネットでホワイトボードに貼ったのは、2枚の黒いセーラー服を着た少女の写真だった。
写真の少女はいずれも赤いランドセルを背負って、エレベーターを待っている。
小6くらいの、大柄な少女である。
顏こそ見えないが、背格好や髪形、服装からして同一人物に間違いない。
「照和区と北区はかなり離れてる。なのになぜ同じ女の子が現場にいたわけ? 最初はマンションの住人だろうと思って見過してたけど、よく調べてみると、どちらのマンションにも該当する女児はいなかった。今、東区と南区の現場付近の防犯カメラをしらみつぶしに当たってもらってるけれど、十中八九、この子が映ってるんじゃないかと思う」
「むうう」
唸る韮崎。
「ニラさん、急がないと」
杏里は言った。
零はもう次の現場に向かっているのだ。
私達も、もたもたしてる場合じゃない。
「市内の産婦人科に片っ端から電話してみます。予想される次の被害者は、これまでの4人のケースからみて、おそらく妊娠8か月の女性でしょう。御所駅付近に住んでいる妊娠8か月の女性がそんなにたくさんいるとは思えませんから、意外に早く見つかるかもしれません」
息せき切って三上が言った。
「わかった」
迷いを吹っ切るように、韮崎がうなずいた。
「じゃ、俺と笠原は現場に直行する。わかったらすぐ連絡を頼む。こっちはこっちでまずこの女子小学生を探してみよう」
「ありがとうございます!」
杏里はぴょこんと頭を下げた。
韮崎は物分かりは悪いが、いったんこうと決めると行動は早い。
「やっぱり杏里ちゃんに目をつけて正解だったわ」
満足げにヤチカが微笑んだ。
「どういうことだ?」
部屋を出ようとして、韮崎がふり向いた。
「こういうオカルトチックな事件を解決できるのは、彼女しかいないと思ってたの。だからさっき本部で高山君に会った時、『杏里ちゃんがみんなを集めたがってる』って言うのを聞いて、すぐぴんときたわけよ。あ、彼女、また何か閃いたんだな、って」
「私が閃いたんじゃ…」
言いかけて杏里はうっと口をつぐんだ。
ここで零のことを口にするわけにはいかないのだ。
民間人に情報を漏らしたカドで、杏里自信が捕まってしまう。
「何ぽーっとしてるんだ。行くぞ笹原!」
韮崎に怒鳴られ、杏里は駆け出した。
やったよ、零。
心の中で快哉を叫ぶ。
待っててね、今行くから!
杏里は呆然とつぶやいた。
「赤ランドセルなら、血がこぼれても、目立たない…?」
ということは、女の子?
「馬鹿野郎、そんなことあってたまるかよ!」
韮崎が怒りで真っ赤になって噛みついた。
「なんで子どもがそんなことするんだよ? 動機がないだろう動機が!」
「動機? だからそれが魔法陣なんでしょ? あ、そういえば、佐々木涼子の事件は、あなたたちの管轄だったわね。ほら、これが涼子の死亡推定時刻直前に、マンションの防犯カメラに写ってた映像。こっちは同じく、北区の事件現場の防犯カメラに写ってたもの。今朝やっと上がってきた生情報なんだけど、比べてみて。どう思う?」
大判の茶封筒から取り出し、ヤチカがマグネットでホワイトボードに貼ったのは、2枚の黒いセーラー服を着た少女の写真だった。
写真の少女はいずれも赤いランドセルを背負って、エレベーターを待っている。
小6くらいの、大柄な少女である。
顏こそ見えないが、背格好や髪形、服装からして同一人物に間違いない。
「照和区と北区はかなり離れてる。なのになぜ同じ女の子が現場にいたわけ? 最初はマンションの住人だろうと思って見過してたけど、よく調べてみると、どちらのマンションにも該当する女児はいなかった。今、東区と南区の現場付近の防犯カメラをしらみつぶしに当たってもらってるけれど、十中八九、この子が映ってるんじゃないかと思う」
「むうう」
唸る韮崎。
「ニラさん、急がないと」
杏里は言った。
零はもう次の現場に向かっているのだ。
私達も、もたもたしてる場合じゃない。
「市内の産婦人科に片っ端から電話してみます。予想される次の被害者は、これまでの4人のケースからみて、おそらく妊娠8か月の女性でしょう。御所駅付近に住んでいる妊娠8か月の女性がそんなにたくさんいるとは思えませんから、意外に早く見つかるかもしれません」
息せき切って三上が言った。
「わかった」
迷いを吹っ切るように、韮崎がうなずいた。
「じゃ、俺と笠原は現場に直行する。わかったらすぐ連絡を頼む。こっちはこっちでまずこの女子小学生を探してみよう」
「ありがとうございます!」
杏里はぴょこんと頭を下げた。
韮崎は物分かりは悪いが、いったんこうと決めると行動は早い。
「やっぱり杏里ちゃんに目をつけて正解だったわ」
満足げにヤチカが微笑んだ。
「どういうことだ?」
部屋を出ようとして、韮崎がふり向いた。
「こういうオカルトチックな事件を解決できるのは、彼女しかいないと思ってたの。だからさっき本部で高山君に会った時、『杏里ちゃんがみんなを集めたがってる』って言うのを聞いて、すぐぴんときたわけよ。あ、彼女、また何か閃いたんだな、って」
「私が閃いたんじゃ…」
言いかけて杏里はうっと口をつぐんだ。
ここで零のことを口にするわけにはいかないのだ。
民間人に情報を漏らしたカドで、杏里自信が捕まってしまう。
「何ぽーっとしてるんだ。行くぞ笹原!」
韮崎に怒鳴られ、杏里は駆け出した。
やったよ、零。
心の中で快哉を叫ぶ。
待っててね、今行くから!
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