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第4章 百合と外道と疾走するウロボロス
#3 杏里、クリスマスの朝に泣く
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12月25日午前9時40分。
杏里は吹きすさぶ寒風の中、広い階段の真ん中あたりで立ち竦んでいた。
愛知県警本部の前である。
階段を登ってくるコート姿の男たちが、杏里を押しのけては1階ロビーへと駆けこんでいく。
大会議室の脇に立てかけられているのは、『連続妊婦殺傷事件』の立て看板。
せっかくのクリスマスだっていうのに…。
唇を噛み締めて、思う。
あの事件のせいで、昨日のイブもほとんど徹夜だった。
こんな悲惨なクリスマス、初めてだ。
それに、あんな悲惨な事件も…。
もう丸一日以上、零にも会えていない。
こんな時こそ、零の顏が見たいのに…。
「何ボケッとしてるんだ。行くぞ」
韮崎が杏里の肩をどついてきた。
「あ、は、はい」
はっと我に返る杏里。
「立ったまま寝てるのか。相変わらず器用なやつだな」
「い、いえ、そうじゃなくって、昨日のあの事件が、まさか連続殺人だったなんて」
「ああ。この前の人食い炬燵と言い、もうわけがわかんねえよ」
韮崎が肩をすくめた。
杏里も同感だった。
今年は異様な事件が多すぎる。
女性の子宮を持ち去る『赤い真珠事件』。
人間の髑髏を集める『お化けヤドカリ事件』。
それからついこの間遭遇した、『人食い炬燵事件』。
どれも驚天動地のものばかりだったが、中でも今回のものは極めつきだった。
きのう起こった連続妊婦殺傷事件。
わずか半日のうちに、4人の妊婦が殺されるという猟奇殺人である。
しかも、殺害方法があまりにも鬼畜過ぎた。
瞼の裏にゆうべ見た血の海が浮かび、杏里は胸の底から吹き上がる悲しみをこらえた。
あの被害者の女の人。
どんなにつらかったことだろう。
新婚さんだったのに、どんなに残念だったことだろう。
「いいから、行くぞ」
もう一度韮崎が言った。
杏里の涙に気づいたのか、声が幾分優しくなっているようだった。
杏里は吹きすさぶ寒風の中、広い階段の真ん中あたりで立ち竦んでいた。
愛知県警本部の前である。
階段を登ってくるコート姿の男たちが、杏里を押しのけては1階ロビーへと駆けこんでいく。
大会議室の脇に立てかけられているのは、『連続妊婦殺傷事件』の立て看板。
せっかくのクリスマスだっていうのに…。
唇を噛み締めて、思う。
あの事件のせいで、昨日のイブもほとんど徹夜だった。
こんな悲惨なクリスマス、初めてだ。
それに、あんな悲惨な事件も…。
もう丸一日以上、零にも会えていない。
こんな時こそ、零の顏が見たいのに…。
「何ボケッとしてるんだ。行くぞ」
韮崎が杏里の肩をどついてきた。
「あ、は、はい」
はっと我に返る杏里。
「立ったまま寝てるのか。相変わらず器用なやつだな」
「い、いえ、そうじゃなくって、昨日のあの事件が、まさか連続殺人だったなんて」
「ああ。この前の人食い炬燵と言い、もうわけがわかんねえよ」
韮崎が肩をすくめた。
杏里も同感だった。
今年は異様な事件が多すぎる。
女性の子宮を持ち去る『赤い真珠事件』。
人間の髑髏を集める『お化けヤドカリ事件』。
それからついこの間遭遇した、『人食い炬燵事件』。
どれも驚天動地のものばかりだったが、中でも今回のものは極めつきだった。
きのう起こった連続妊婦殺傷事件。
わずか半日のうちに、4人の妊婦が殺されるという猟奇殺人である。
しかも、殺害方法があまりにも鬼畜過ぎた。
瞼の裏にゆうべ見た血の海が浮かび、杏里は胸の底から吹き上がる悲しみをこらえた。
あの被害者の女の人。
どんなにつらかったことだろう。
新婚さんだったのに、どんなに残念だったことだろう。
「いいから、行くぞ」
もう一度韮崎が言った。
杏里の涙に気づいたのか、声が幾分優しくなっているようだった。
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