サイコパスハンター零

戸影絵麻

文字の大きさ
上 下
5 / 157
第1章 黄泉の国から来た少女

#4 杏里、恍惚となる

しおりを挟む
 ほとんど初対面といっていい、どこの誰ともわからぬ少女。

 いくら美人だからとはいえ、その見知らぬ少女に「服を脱げ」と言われたからといって、その通りにしなければならない理由などない。

 にもかかわらず、ふと気がつくと杏里はセーラー服の上着とブラジャーを脱ぎ捨て、上半身裸で妖しい蝋燭の光の中に震えながら立っていたのだった。

 たわわに実ったふたつの乳房を右腕で隠してはいるものの、その丸く柔らかな果実は、今にも腕の間からこぼれ落ちそうに、小刻みに震えていた。

「下も」

 妙に掠れた声で、零が言った。

 小さくうなずき、ミニひだスカートのファスナーを下げると、杏里は腰を軽くひと振りして、それを床に落とした。

 白い小さなビキニパンティに包まれた下半身が露わになる。

 パンティは上下が浅く、両サイドが紐状になっているため、むっちりした太腿のつけ根から、恥骨のあたりまでがむき出しになってしまっている。

 ああ…。

 無遠慮な少女の視線にさらされながら、杏里は心の中でつぶやいた。

 なんだろう、この感じ。

 すごくドキドキする。

 恥ずかしい。

 恥ずかしくてならないけど、でも…。

 なんだか、すごく、ゾクゾクする…。

 「手を」

 零が、そっと上腕部に触れてきた。

 脱力したように、両手を脇に垂らす杏里。

 こぼれ出たのは、先がつんと上を向いた、真っ白な乳房だ。

 見るからに重量感のある、熟した果実のような肉の丘である。

 その釣り鐘型の綺麗なラインが、鎖骨までなだらかに続いている。

 その頂点で、早くも薄桃色の突起が硬く尖り始めていた。

「ほう」

 零が感心したようにつぶやいた。

 一歩下がって、しげしげと杏里の裸身に見入る。

「見事なもんだな。よもや、これほどとは、思わなかった」

 私、見られてるんだ。

 かっと顔が熱くなる。

 体の震えが激しくなる。

 身体の奥からわきあがる疼きに気づいて、杏里は反射的に太腿をきつく閉じた。

「寒いのか」

 固く尖ったふたつのつぼみに目をやって、零が小声で訊ねてきた。

 ゆるゆるとかぶりを振る杏里。

 体の表面は寒いのに、中は炉心に火が点ったように熱い。

「どうする気…?」

 うつむいたまま、かろうじて声を絞り出す。

「少し痛むかもしれない。だからまず、別の感覚を呼び覚ます」

 別の感覚?

 ふいに零が右腕を伸ばし、伸ばした人差し指で左の乳首の触れてきた時、すぐにその意味がわかった。

「あ」

 無意識のうちに声が出た。

 そこを起点に電撃が走ったのだ。

 杏里はびくんと身悶えた。

 零がそのまま2本の指で乳首を挟み、親指の腹で円を描くようにゆっくりと乳頭を刺激する。

「ああ…ん」

 杏里の喘ぎが大きくなる。

 零がてのひらで杏里の乳房を包み込み、指と指の間から乳首を出す。

 指のつけ根で乳首を刺激しながら、おもむろに乳房を揉み始めた。

「いや…」

 杏里はのけぞった。

 白い喉を露わにして、呻いた。

「感じているのか」

 零が訊いた。

 答えられない。

 そんな恥ずかしいこと、口にできるわけがない。

「どれ」

 零が、空いたほうの手を杏里の股間に伸ばしてきた。

 いとも簡単に膝を割られ、太腿と太腿の間を指先で撫でられた。

「もう、濡れているみたいだが」

 薄いパンティの生地を通して、杏里の大事な部分をそうっと撫でさすりながら、零が言う。

「そんな恥ずかしいこと、言わないで…」

 閉じたくても、膝が勝手に開いていく。

 自然に零のほうに、腰を突き出す格好になった。

「そろそろ行くぞ」

 乳房と股間を愛撫しながら、零が身を寄せてくる。

 妖しく光る双眸が、杏里を正面から見据えた。

 漆黒のストレートヘアに包まれた、小悪魔めいた顔が近づいてくる。

 と、零の口が開いて、ふわりと舌が伸び出した。

 人間のものとは似もつかぬ、不思議な形状の舌だった。

 先がふたつに割れているところは、蛇のそれにそっくりだ。

 が、蛇の舌に比べると、格段に長かった。

 優に額に届くほどの長さである。

 割れた先端がくっついてひとつになり、宙で大きくうねると、その長い舌が杏里の首筋に巻きついた。

 蛇そっくりに鎌首をもたげた鋭い先端が、狙いを定めて杏里の左の頚静脈に突き刺さる。

 太い注射針を突き刺されたような激しい痛みを感じ、杏里は唇を噛み締めた。

 だが、それもほんの束の間のことだった。

 零の愛撫によって引き出された快感が、すぐに痛みを押し流したのだ。

「あん…」

 執拗に乳房を揉まれ、同時に股間のスリットを下着の上からなぞられて、大きくのけぞる杏里。

 その首筋に突き立った舌が、どくんどくんと脈動する。

 零は、杏里の血を吸っているのだった。

 それは蛭の吸血の様子に酷似していた。

 極細のチューブ状になった舌の中を、吸い上げられた杏里の血液が奔流となって移動していく。

 どのくらいそうして悶え狂ったのか。

 頭の中が真っ白になり、ほとんど恍惚状態に陥りかけた時、

「終わった。もういい」

 突然零が言い、杏里の裸身から無造作に身を離した。

 舌がはずれ、支えを失ってその場に崩れ落ちる杏里。

 かなり大量の血を失ったらしく、身体に力が入らない。

 だが、もっとやっかいなのは、身体の中心に居座る激しい疼きだった。

 下着がぐっしょり濡れているのがわかる。

 その奥、子宮あたりでマグマが煮えたぎっている。

 太腿の内側を、生温かいものが伝い落ちていた。

 24ともなれば、杏里とて処女ではない。

 しかし、ここまで濡れたのは初めてだった。

 過去に愛を交わした男たちが杏里に与えてくれなかったもの。

 それを零は、指の愛撫だけで…。

「美味だな。さすが、人魚姫の血だ」

 満足げな零のつぶやきが聞こえてきた。

「実は、体のあちこちが腐り始めていたところだった」

 首をひねって見上げると、零が着物の袖をめくり上げていた。

 見ると、右の上腕部から肩にかけて、紫色の痣のようなものが広がっている。

「狂人の脳を食らった副作用だ。でも、おまえの血のおかげで、それが治りかけている」

 零はすっかり上機嫌のようだ。

 杏里が今どんな状態なのか、気にかけてもいないらしい。

 虚しさがこみ上げるとともに、頭がくらくらした。

 貧血を起こした時のように、視野が狭くなり、手足の先が冷たくなってきていた。

 零が杏里の傍らに膝をついた。

「人魚姫の血があれば、狂人の脳を食らわなくても、私はこの世界でやっていけるということか」

「確かめるって、私の、血を、飲むことだったのね…?」

 顔を上げ、零を見つめ返して、杏里はたずねた。

 零がうなずいた。

「おまえが本物の人魚姫なら、もしやと思ってね」

「そんな、ひどい…」

 とたんに、ぶわっと熱い涙があふれてくる。

「私はあなたの食料代わりってこと? 家畜みたいなもの? 人をこんなふうにしておいて、あなただけ満腹になってご満悦ってわけ?」

「怒ったのか?」

 零の眼が丸くなる。

 なんだか意外そうな表情をしている。

「おまえが嫌なら無理にとは言わない。また元の捕食活動に戻ればいいだけの話だから」

「そういうことじゃなくって」

 杏里は恨みがましく零を睨みつけた。

 このしれっとした顏が、また腹立たしい。

「零、あなたが更生するなら、私の血なんて、いくらでもあげる。でも、そのたびにこんな思いをするのは嫌。私にだって、プライドはある!」

「こんな思いって、どんな思い?」

 零が、きょとんとした表情で、杏里を見返した。

「もういい。説明なんてできない。さ、それより、そうと決まったらすぐにお引越しだよ! さっさと準備して!」

「いいのか? ずいぶん機嫌が悪いようだが…?」

「いいったら、いいの!」

 零を追い払って、スカートを穿き、ブラに大き過ぎる乳房を押しこんだところで、唐突にスマホが鳴った。

 出ると、韮崎の怒鳴り声が耳に飛び込んできた。

『笹原! おまえどこに行きやがったんだ? おまえの見たっていう怪しい中年男なんてどこにもいねーぞ! また寝ぼけてたんじゃないのかよ!』

 杏里は舌を出し、肩をすくめた。

 そして、わざと苦しそうな声で答えた。

「すみません、ニラさん、きょうは気分悪いんで、このまま直帰させていただきます。詳しい報告は、また明日ということで。じゃ、三上さんや高山先輩によろしくです。おやすみなさい」
















 






 



















しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

無能な陰陽師

もちっぱち
ホラー
警視庁の詛呪対策本部に所属する無能な陰陽師と呼ばれる土御門迅はある仕事を任せられていた。 スマホ名前登録『鬼』の上司とともに 次々と起こる事件を解決していく物語 ※とてもグロテスク表現入れております お食事中や苦手な方はご遠慮ください こちらの作品は、 実在する名前と人物とは 一切関係ありません すべてフィクションとなっております。 ※R指定※ 表紙イラスト:名無死 様

カフェ・シュガーパインの事件簿

山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。 個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。 だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

処理中です...