サイコパスハンター零

戸影絵麻

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第6章 となりはだあれ?

#18 魔獣狩り⑥

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「どういうことだ? わけがわからん。意味不明もいいとこだ」

 不機嫌そうに韮崎が言い、煙草を口にくわえ、百円ライターを取り出した。

「ニラさん、地下鉄構内はどこも禁煙ですよ」

 杏里がすばやくその手からライターを奪い取ると、韮崎が恨めしそうに杏里を睨んだ。

「んなこたあ、わかってるよ。それより、何なんだ? 今の証言は?」

 5人全員の話を聞き終えたところである。

 協力してくれたのは、壮年のサラリーマン、中年の主婦、男子大学生2人、そして女子中学生という顔ぶれだ。

 事件の時、それぞれ立っている位置こそ異なってはいたものの、全員に共通しているのは、

 -被害者の老人が優先席に腰掛けた瞬間、”それ”が始まった、という点だった。

「まるでミンチにかけられたみたいでした」

 分厚い眼鏡をかけた女子中学生は、言ったものだ。

「前に映画で観たことありますけど、さっすが、現実は迫力が違いますよね」

 怖がっているどころか、いかにも興奮冷めやらぬといった表情で。

 ”この子も危ないな”というのが、話を聞いた杏里の正直な感想だった。

「いきなり血と一緒に肉や骨が噴き出してきたんすよ! なんかあれ、ジューサーを逆回転させたみたいな?」

 とは、見るからに軽そうな男子大学生の証言だ。

 ピアスをいじりながら話すその口調は耳触りだったが、”ジューサーを逆回転”なる表現はなかなか的確で、杏里は少しだけ感心させられた。

「で、その間も、あの子、ずっと平気で横に座って本、読んでるんです。そんなの信じられます? 隣でおじいちゃんが血だらけになって、ばらばらに分解されてるんですよ? なのに、いったいどういう神経してるんだか…。きっと、あの子の仕業に違いありませんよ。あの娘が、なんらかの方法を使って…」

 小太りの主婦は、嫌悪感丸出しだった。

 ”あの子”については、サラリーマンも証言でこう触れている。

「うーん、制服からして高校生くらいですかねえ。前髪で目を隠してて、なんかこう、ちょっと気味が悪い感じっていうか…。若いのにシルバーシートに座ってるから、いつか注意してやろうと思ってたんですが、その矢先に」



「とにかく、その容疑者とやらに会うしかなさそうですね」

 杏里は言って、奥の扉に目をやった。

 あの控室の中に、その謎の人物がいるのだ。

「ま、被害者の隣に座ってただけで容疑者扱いするのも、私はどうかと思いますけど」
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