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第6章 となりはだあれ?
#4 都市伝説③
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「わー、すっごーい! おいしそー!」
「ねね、写真撮ろーよー!」
「だねー、さっそくインスタにアップしなきゃ!」
フルーツてんこ盛りのパフェを前に盛り上がる3人組。
ここは駅の隣にある三越百貨店の展望レストラン。
窓の向こうには、初夏の青空を背景にして、東山公園のタワーや観覧車が見えている。
警察手帳を示しても、杏里が刑事であることをなかなか信じようとしなかったJK3人組だったが、特製パフェをおごるからのひと言で簡単に落ちた。
3人はこの近所の私立高校、桃花学園の2年生で、予想通り中間テストで早帰りの最中だった。
「それで、さっきの話の続きなんだけど」
騒ぎが収まるのを辛抱強く待って、杏里は口を出した。
「その”噛み子伝説”とかいうの、もう少し詳しく教えてくれないかな」
「ああ、あれ、あたしらもよくは知らないんだけどさ」
完全なため口で、少し太めの少女が切り出した。
「なんでも、噛み子に呪われると、どこに居てもがぶりと食べられちゃうんだって」
「先月、失踪した男子高校生ってのは?」
「えとね、そいつ、盗撮魔でさ。星が丘工業の1年生。名前? 盗撮魔の名前なんて知らないよ。でさ、先月の半ばだったかな、地下鉄のエスカレーターに乗ってて、そいつ、急に消えちゃったんだって」
「消えた?」
「うん。周りの友だちとかが気づいたらさ、スマホだけが落ちてて、血の跡があって、そいつ、いなくなってたんだって」
「血の跡とか、超きもいしー!」
「なんでもね、噂だと、そいつ、よせばいいのに間違えて噛み子のスカートの中写そうとして、食べられちゃったらしいんだ」
「そのスマホは、どこに行ったのかな」
「たぶん、警察が持ってったんじゃない? おまわりさん来てたって、同級生が言ってたし」
なるほど、それならまだ、この駅を管轄とする千種署にあるはずだ。
「噛み子って、あなたたちと同じ、女子高生なの?」
「さあ、どうなんだか。あたしたちは見たことないから知らないけど。でもさ、ツイッターなんかじゃ、たまに地下鉄の中やホームで噛み子を見たってつぶやき、見かけるよ」
「それで、今度の事件も、その噛み子の仕業だと思うわけ?」
「まあねえ。それはあたしの意見というよりは、元はと言えばネットで話題になってたんだけどさあ」
「ふうん、ネットでねえ」
フェイスブック、X、インスタグラム。
そうしたツールにあまり興味のない私はもうおばさんなのかもしれない。
杏里は苦笑を噛み殺すと、手帳を閉じ、パフェにかぶりつき始めた3人組に声をかけた。
「じゃ、その噛み子について、また新しい情報が入ったら、私に気軽に電話してくれる? はい、これ、私の名刺。携帯に直接つながるから、110当番と違ってこわいおまわりさんは出ないわよ」
「ねね、写真撮ろーよー!」
「だねー、さっそくインスタにアップしなきゃ!」
フルーツてんこ盛りのパフェを前に盛り上がる3人組。
ここは駅の隣にある三越百貨店の展望レストラン。
窓の向こうには、初夏の青空を背景にして、東山公園のタワーや観覧車が見えている。
警察手帳を示しても、杏里が刑事であることをなかなか信じようとしなかったJK3人組だったが、特製パフェをおごるからのひと言で簡単に落ちた。
3人はこの近所の私立高校、桃花学園の2年生で、予想通り中間テストで早帰りの最中だった。
「それで、さっきの話の続きなんだけど」
騒ぎが収まるのを辛抱強く待って、杏里は口を出した。
「その”噛み子伝説”とかいうの、もう少し詳しく教えてくれないかな」
「ああ、あれ、あたしらもよくは知らないんだけどさ」
完全なため口で、少し太めの少女が切り出した。
「なんでも、噛み子に呪われると、どこに居てもがぶりと食べられちゃうんだって」
「先月、失踪した男子高校生ってのは?」
「えとね、そいつ、盗撮魔でさ。星が丘工業の1年生。名前? 盗撮魔の名前なんて知らないよ。でさ、先月の半ばだったかな、地下鉄のエスカレーターに乗ってて、そいつ、急に消えちゃったんだって」
「消えた?」
「うん。周りの友だちとかが気づいたらさ、スマホだけが落ちてて、血の跡があって、そいつ、いなくなってたんだって」
「血の跡とか、超きもいしー!」
「なんでもね、噂だと、そいつ、よせばいいのに間違えて噛み子のスカートの中写そうとして、食べられちゃったらしいんだ」
「そのスマホは、どこに行ったのかな」
「たぶん、警察が持ってったんじゃない? おまわりさん来てたって、同級生が言ってたし」
なるほど、それならまだ、この駅を管轄とする千種署にあるはずだ。
「噛み子って、あなたたちと同じ、女子高生なの?」
「さあ、どうなんだか。あたしたちは見たことないから知らないけど。でもさ、ツイッターなんかじゃ、たまに地下鉄の中やホームで噛み子を見たってつぶやき、見かけるよ」
「それで、今度の事件も、その噛み子の仕業だと思うわけ?」
「まあねえ。それはあたしの意見というよりは、元はと言えばネットで話題になってたんだけどさあ」
「ふうん、ネットでねえ」
フェイスブック、X、インスタグラム。
そうしたツールにあまり興味のない私はもうおばさんなのかもしれない。
杏里は苦笑を噛み殺すと、手帳を閉じ、パフェにかぶりつき始めた3人組に声をかけた。
「じゃ、その噛み子について、また新しい情報が入ったら、私に気軽に電話してくれる? はい、これ、私の名刺。携帯に直接つながるから、110当番と違ってこわいおまわりさんは出ないわよ」
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