サイコパスハンター零

戸影絵麻

文字の大きさ
上 下
134 / 157
第6章 となりはだあれ?

#4 都市伝説③

しおりを挟む
「わー、すっごーい! おいしそー!」
「ねね、写真撮ろーよー!」
「だねー、さっそくインスタにアップしなきゃ!」
 フルーツてんこ盛りのパフェを前に盛り上がる3人組。
 ここは駅の隣にある三越百貨店の展望レストラン。
 窓の向こうには、初夏の青空を背景にして、東山公園のタワーや観覧車が見えている。
 警察手帳を示しても、杏里が刑事であることをなかなか信じようとしなかったJK3人組だったが、特製パフェをおごるからのひと言で簡単に落ちた。
 3人はこの近所の私立高校、桃花学園の2年生で、予想通り中間テストで早帰りの最中だった。
「それで、さっきの話の続きなんだけど」
 騒ぎが収まるのを辛抱強く待って、杏里は口を出した。
「その”噛み子伝説”とかいうの、もう少し詳しく教えてくれないかな」
「ああ、あれ、あたしらもよくは知らないんだけどさ」
 完全なため口で、少し太めの少女が切り出した。
「なんでも、噛み子に呪われると、どこに居てもがぶりと食べられちゃうんだって」
「先月、失踪した男子高校生ってのは?」
「えとね、そいつ、盗撮魔でさ。星が丘工業の1年生。名前? 盗撮魔の名前なんて知らないよ。でさ、先月の半ばだったかな、地下鉄のエスカレーターに乗ってて、そいつ、急に消えちゃったんだって」
「消えた?」
「うん。周りの友だちとかが気づいたらさ、スマホだけが落ちてて、血の跡があって、そいつ、いなくなってたんだって」
「血の跡とか、超きもいしー!」
「なんでもね、噂だと、そいつ、よせばいいのに間違えて噛み子のスカートの中写そうとして、食べられちゃったらしいんだ」
「そのスマホは、どこに行ったのかな」
「たぶん、警察が持ってったんじゃない? おまわりさん来てたって、同級生が言ってたし」
 なるほど、それならまだ、この駅を管轄とする千種署にあるはずだ。
「噛み子って、あなたたちと同じ、女子高生なの?」
「さあ、どうなんだか。あたしたちは見たことないから知らないけど。でもさ、ツイッターなんかじゃ、たまに地下鉄の中やホームで噛み子を見たってつぶやき、見かけるよ」
「それで、今度の事件も、その噛み子の仕業だと思うわけ?」
「まあねえ。それはあたしの意見というよりは、元はと言えばネットで話題になってたんだけどさあ」
「ふうん、ネットでねえ」
 フェイスブック、X、インスタグラム。
 そうしたツールにあまり興味のない私はもうおばさんなのかもしれない。
 杏里は苦笑を噛み殺すと、手帳を閉じ、パフェにかぶりつき始めた3人組に声をかけた。
「じゃ、その噛み子について、また新しい情報が入ったら、私に気軽に電話してくれる? はい、これ、私の名刺。携帯に直接つながるから、110当番と違ってこわいおまわりさんは出ないわよ」



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能な陰陽師

もちっぱち
ホラー
警視庁の詛呪対策本部に所属する無能な陰陽師と呼ばれる土御門迅はある仕事を任せられていた。 スマホ名前登録『鬼』の上司とともに 次々と起こる事件を解決していく物語 ※とてもグロテスク表現入れております お食事中や苦手な方はご遠慮ください こちらの作品は、 実在する名前と人物とは 一切関係ありません すべてフィクションとなっております。 ※R指定※ 表紙イラスト:名無死 様

カフェ・シュガーパインの事件簿

山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。 個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。 だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

処理中です...