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第6章 となりはだあれ?
#1 惨殺列車
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地下鉄は、通勤客や学生でいつにも増して混み合っていた。
朝一番の営業会議に間に合わせるため、1本早い電車に乗ったばかりにこの始末だ。
空調はまったく役に立たず、周囲から押し寄せてくる汗と腋臭と化粧の匂いに、彼は今にも吐きそうだった。
身体をおしつけてくる背広姿の男たち。
目と鼻の先には若いOLの髪の毛がきていて、ともすれば彼の鼻孔をくすぐった。
汗ばんだ身体同士が密着して、下手すれば痴漢に間違われそうだった。
そんなに押すなっていうのに。
彼は敵意むき出しの眼で、周囲を睨みつけた。
だいたい、なんで若い女やガキどもが座席に座ってやがるんだ。
まったく、どいつもこいつも…。
心の中で、そう愚痴った時である。
ふと、人垣の間から空席が見えた。
こんなに混雑しているのに、そこだけひとり分、シートがぽっかりと空いている。
自分の眼が信じられなかった。
シルバーシートでもないのに、これはいったいどうしたことだろう?
が、迷っている場合ではなかった。
会社まで、あと1時間近く電車に揺られていなければならないのだ。
ゆうべ飲み歩いて遅かったせいで、睡眠も足りていない。
ここはぜひとも席を確保して、少しでも身体を休めたいところである。
つり革を次々に持ち替えて、移動を開始した。
押しのけられたOLが睨んできたが、何、かまうものか。
どけどけどけ!
俺はあの席に座りたいんだよ!
苦難の末、やっと空席の前に来た。
3人掛けのシートのドアに近い所に老婆、真ん中に髪の長い女が腰かけていて、奥の一人分だけが空いている。
やった!
間に合った!
カバンを抱え、腰を下ろそうとした時だった。
真ん中の女が、ふいに顔を上げた。
垂らした長い前髪の間から、血走った眼が覗いている。
その目と、一瞬、視線が絡み合った気がした。
なんだこいつ、気味悪いな。
心持ち老婆の方に身を寄せて、彼はシートに腰を下ろした。
とたんに、激痛が全身を駆け抜けた。
満員の車内に、悲鳴が上がった。
「血が…血が…!」
若い女の声だった。
「誰か、け、警察を!」
男の声が叫んだ。
誰かが非常ボタンを押したらしい。
警報が車内に鳴り響く。
金切り声を上げて、列車が減速し始めた。
車体が大きく傾き、あちこちから怒号と悲鳴が沸き起こる。
その反動で、乗客たちの足元に、ねっとりとした血の川が流れ始めた。
朝一番の営業会議に間に合わせるため、1本早い電車に乗ったばかりにこの始末だ。
空調はまったく役に立たず、周囲から押し寄せてくる汗と腋臭と化粧の匂いに、彼は今にも吐きそうだった。
身体をおしつけてくる背広姿の男たち。
目と鼻の先には若いOLの髪の毛がきていて、ともすれば彼の鼻孔をくすぐった。
汗ばんだ身体同士が密着して、下手すれば痴漢に間違われそうだった。
そんなに押すなっていうのに。
彼は敵意むき出しの眼で、周囲を睨みつけた。
だいたい、なんで若い女やガキどもが座席に座ってやがるんだ。
まったく、どいつもこいつも…。
心の中で、そう愚痴った時である。
ふと、人垣の間から空席が見えた。
こんなに混雑しているのに、そこだけひとり分、シートがぽっかりと空いている。
自分の眼が信じられなかった。
シルバーシートでもないのに、これはいったいどうしたことだろう?
が、迷っている場合ではなかった。
会社まで、あと1時間近く電車に揺られていなければならないのだ。
ゆうべ飲み歩いて遅かったせいで、睡眠も足りていない。
ここはぜひとも席を確保して、少しでも身体を休めたいところである。
つり革を次々に持ち替えて、移動を開始した。
押しのけられたOLが睨んできたが、何、かまうものか。
どけどけどけ!
俺はあの席に座りたいんだよ!
苦難の末、やっと空席の前に来た。
3人掛けのシートのドアに近い所に老婆、真ん中に髪の長い女が腰かけていて、奥の一人分だけが空いている。
やった!
間に合った!
カバンを抱え、腰を下ろそうとした時だった。
真ん中の女が、ふいに顔を上げた。
垂らした長い前髪の間から、血走った眼が覗いている。
その目と、一瞬、視線が絡み合った気がした。
なんだこいつ、気味悪いな。
心持ち老婆の方に身を寄せて、彼はシートに腰を下ろした。
とたんに、激痛が全身を駆け抜けた。
満員の車内に、悲鳴が上がった。
「血が…血が…!」
若い女の声だった。
「誰か、け、警察を!」
男の声が叫んだ。
誰かが非常ボタンを押したらしい。
警報が車内に鳴り響く。
金切り声を上げて、列車が減速し始めた。
車体が大きく傾き、あちこちから怒号と悲鳴が沸き起こる。
その反動で、乗客たちの足元に、ねっとりとした血の川が流れ始めた。
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