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#6 煩悶の夜
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途中、家族3人の分の弁当をコンビニで買って帰った。
祖母に弁当を食べさせ、風呂に入っていると兄の帰ってくる気配がした。
「コンビニ弁当でよければ」
「ああ、助かるよ」
疲れ切った表情の兄を残し、部屋に引っ込んだ。
見晴の部屋の隣の僕の部屋は、出て行った時そのままだった。
早々に布団を敷き、電気を消して寝る体勢に入った。
だが、疲れているはずなのに、眠気はいっこうに訪れてこなかった。
見晴の台詞が耳に甦り、こびりついて離れない。
不倫…。
あの義姉さんが?
あらぬ妄想に、僕は身悶えた。
僕に許されたのはキスまでだった。
その先を、そのスーパーの店長とやらに、義姉は許したというのだろうか。
嫉妬で胸が熱くなり、欲望で下半身の一部が硬くなる。
そこに、見晴のひと言が追い打ちをかけてきた。
-敬一郎のやつ、毎晩、詩帆さんをいじめてるー
-このままだと、詩帆さん、殺されちゃうかもー
僕はむっくり布団の上に身を起こした。
枕もとのスマホを引き寄せるよ、深夜2時の表示が出ていた。
ずいぶん長い間、悶々としていたらしい。
寝てなどいられなかった。
ふすまを開けて、廊下に出る。
雨戸のむこうから、降るような虫の声が聞こえてくる。
薄暗がりの中を、柱につかまりながら、手探りで歩く。
雨戸を開けると、濡れ縁の向こうに離れが見えてきた。
窓にオレンジ色の明かりが灯っている。
ドアの前まで近づいた時、声を聞いたように思った。
「…にしたように…やってみろ」
それは、低く押し殺した兄の声だった。
祖母に弁当を食べさせ、風呂に入っていると兄の帰ってくる気配がした。
「コンビニ弁当でよければ」
「ああ、助かるよ」
疲れ切った表情の兄を残し、部屋に引っ込んだ。
見晴の部屋の隣の僕の部屋は、出て行った時そのままだった。
早々に布団を敷き、電気を消して寝る体勢に入った。
だが、疲れているはずなのに、眠気はいっこうに訪れてこなかった。
見晴の台詞が耳に甦り、こびりついて離れない。
不倫…。
あの義姉さんが?
あらぬ妄想に、僕は身悶えた。
僕に許されたのはキスまでだった。
その先を、そのスーパーの店長とやらに、義姉は許したというのだろうか。
嫉妬で胸が熱くなり、欲望で下半身の一部が硬くなる。
そこに、見晴のひと言が追い打ちをかけてきた。
-敬一郎のやつ、毎晩、詩帆さんをいじめてるー
-このままだと、詩帆さん、殺されちゃうかもー
僕はむっくり布団の上に身を起こした。
枕もとのスマホを引き寄せるよ、深夜2時の表示が出ていた。
ずいぶん長い間、悶々としていたらしい。
寝てなどいられなかった。
ふすまを開けて、廊下に出る。
雨戸のむこうから、降るような虫の声が聞こえてくる。
薄暗がりの中を、柱につかまりながら、手探りで歩く。
雨戸を開けると、濡れ縁の向こうに離れが見えてきた。
窓にオレンジ色の明かりが灯っている。
ドアの前まで近づいた時、声を聞いたように思った。
「…にしたように…やってみろ」
それは、低く押し殺した兄の声だった。
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