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第5章 見えない侵略者
#3 いらいらアンアン
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「ね? 荷物、どこに運べばいいかな?」
我が物顔にずかずか上がり込んでくると、阿修羅が訊いた。
「は?」
僕は阿修羅の小麦色の顔を見つめた。
何を言ってるんだ? こいつ。
肩のところで軽くウェーブのかかった髪。
長い睫毛に縁どられた、ぱっちりした大きな眼。
こうして改めて正面から見ると、阿修羅は典型的な美少女だ。
ワイルドが持ち味のアンアンとは一味違った趣がある。
「ここ、前は民宿だったのなら、いくらでもお部屋空いてるでしょ? 一ノ瀬君に聞いたよ」
「まあ、それはそうだけど…」
一ノ瀬のやつ、また面倒を持ち込んだんじゃないだろうな。
そう思いつつ、勢いに押されてつい答えてしまった。
「1階はアンアンが占拠してるからあれだけど、2階は俺が2部屋使ってるだけだから…」
「わかった。2階ね」
うなずくと、外へ戻っていき、引っ越しのお兄さんたちにてきぱきと指示を出す阿修羅。
「なんでもいいから、2階の空いた部屋に上げといて。うん、空き部屋全部使ってもかまわないから」
「承知しました」
廊下をかさばる家具がどんどん運ばれていく。
ベッドもあれば、衣装ダンスもある。
「なんだこれは? どういうことだ?」
さすがに腹に据えかねたのか、戻ってきた阿修羅をつかまえてアンアンが食ってかかった。
「見ればわかるでしょ? 引っ越しよ」
ケロリとした顔で阿修羅が答えた。
「きょうから私もここにお世話になるの。いい加減、ネット喫茶巡りは飽きたんでね。だからさ、思い切って家具もいっぱい買っちゃった」
こいつ、今までネット喫茶に寝泊まりしてたのか。
それじゃ、まるでホームレスか難民じゃん。
「だけど、なんでよりによってここなんだよ」
アンアンは明らかにイラついていた。
こめかみに青筋を立てているところを見ると、怒り心頭まであと少しという感じである。
「それはね」
突如として、阿修羅が意味ありげな視線を僕のほうに送ってきた。
「ダーリンと一緒に暮らしたいからよ」
「ダーリン?」
アンアンが、阿修羅と僕を見比べた。
「元気、これはどういうことだ?」
まずいぞ。
頬がひくひくしてる。
これはまさか、ディメンション・クラッシュの前触れじゃ?
「何のことだか、わかんないって。なんで俺がダーリンなんだよ?」
泡を喰って僕は抗議した。
阿修羅のダーリン候補はアンアンのはずだ。
なのにどうして意味深に僕に秋波を送ってくる?
「気が変わったの」
阿修羅が殊勝な口ぶりで言った。
「私、アンアンはあきらめて、人間のお嫁さんになろうって、そう決心したの」
「はあ?」
僕としては、はあ?としか言いようがない。
おいおい。
ついこの前、アンアンは私のもの、とか叫んでたじゃないか。
あれはどうなったんだ?
「実を言うとね、もう魔界はこりごりなの。私もアンアンと同じ気持ち。これからは、人間界で静かに暮らしたい。その時、ふと閃いたんだ。私をもらってくれるのは、この山田元気君しかいないって」
夢見るような瞳で阿修羅が僕を見た。
な、なんだそれ。
僕はよろよろと後じさった。
どういう理屈だ。
論理もへったくれもないじゃないか。
まったくもって、意味不明だぞ。
「どう? うれしい?」
阿修羅がにこっと笑って僕に言う。
「魔界きっての美少女ふたりに囲まれて生活できるのよ。これってちょっとしたハーレムじゃなくって?」
我が物顔にずかずか上がり込んでくると、阿修羅が訊いた。
「は?」
僕は阿修羅の小麦色の顔を見つめた。
何を言ってるんだ? こいつ。
肩のところで軽くウェーブのかかった髪。
長い睫毛に縁どられた、ぱっちりした大きな眼。
こうして改めて正面から見ると、阿修羅は典型的な美少女だ。
ワイルドが持ち味のアンアンとは一味違った趣がある。
「ここ、前は民宿だったのなら、いくらでもお部屋空いてるでしょ? 一ノ瀬君に聞いたよ」
「まあ、それはそうだけど…」
一ノ瀬のやつ、また面倒を持ち込んだんじゃないだろうな。
そう思いつつ、勢いに押されてつい答えてしまった。
「1階はアンアンが占拠してるからあれだけど、2階は俺が2部屋使ってるだけだから…」
「わかった。2階ね」
うなずくと、外へ戻っていき、引っ越しのお兄さんたちにてきぱきと指示を出す阿修羅。
「なんでもいいから、2階の空いた部屋に上げといて。うん、空き部屋全部使ってもかまわないから」
「承知しました」
廊下をかさばる家具がどんどん運ばれていく。
ベッドもあれば、衣装ダンスもある。
「なんだこれは? どういうことだ?」
さすがに腹に据えかねたのか、戻ってきた阿修羅をつかまえてアンアンが食ってかかった。
「見ればわかるでしょ? 引っ越しよ」
ケロリとした顔で阿修羅が答えた。
「きょうから私もここにお世話になるの。いい加減、ネット喫茶巡りは飽きたんでね。だからさ、思い切って家具もいっぱい買っちゃった」
こいつ、今までネット喫茶に寝泊まりしてたのか。
それじゃ、まるでホームレスか難民じゃん。
「だけど、なんでよりによってここなんだよ」
アンアンは明らかにイラついていた。
こめかみに青筋を立てているところを見ると、怒り心頭まであと少しという感じである。
「それはね」
突如として、阿修羅が意味ありげな視線を僕のほうに送ってきた。
「ダーリンと一緒に暮らしたいからよ」
「ダーリン?」
アンアンが、阿修羅と僕を見比べた。
「元気、これはどういうことだ?」
まずいぞ。
頬がひくひくしてる。
これはまさか、ディメンション・クラッシュの前触れじゃ?
「何のことだか、わかんないって。なんで俺がダーリンなんだよ?」
泡を喰って僕は抗議した。
阿修羅のダーリン候補はアンアンのはずだ。
なのにどうして意味深に僕に秋波を送ってくる?
「気が変わったの」
阿修羅が殊勝な口ぶりで言った。
「私、アンアンはあきらめて、人間のお嫁さんになろうって、そう決心したの」
「はあ?」
僕としては、はあ?としか言いようがない。
おいおい。
ついこの前、アンアンは私のもの、とか叫んでたじゃないか。
あれはどうなったんだ?
「実を言うとね、もう魔界はこりごりなの。私もアンアンと同じ気持ち。これからは、人間界で静かに暮らしたい。その時、ふと閃いたんだ。私をもらってくれるのは、この山田元気君しかいないって」
夢見るような瞳で阿修羅が僕を見た。
な、なんだそれ。
僕はよろよろと後じさった。
どういう理屈だ。
論理もへったくれもないじゃないか。
まったくもって、意味不明だぞ。
「どう? うれしい?」
阿修羅がにこっと笑って僕に言う。
「魔界きっての美少女ふたりに囲まれて生活できるのよ。これってちょっとしたハーレムじゃなくって?」
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