68 / 249
第4章 海底原人
#4 アンアンと夏休み④
しおりを挟む
ダゴンというのは、アメリカの怪奇小説作家、HP.ラブクラフトの小説に出てくる邪神の名だ。
僕の記憶が正しければ、『インスマウスの影』に登場したのではなかったか。
ほかにもあるかもしれないけど、とりあえず僕が読んだのはそれだけだ。
「おまえ、ほんと、守備範囲、広いんだな」
僕はあきれ返った。
悪魔から妖怪、そして邪神と、まさになんでもござれ状態じゃないか。
「守備範囲って言うな」
アンアンがむくれた。
「別にあたしが望んだわけじゃない。だいたい、親父があたしの15の誕生日を魔界中に発表するからいけないんだ。何万というビデオレターが届いて、王宮は大混乱さ。しかもみんなキモいのばかりときている。その中から親父が選んだのが、カロンをはじめとする6人というわけだ」
なんだ。そのビデオレターというのは。
魔界には今時、時代遅れのビデオデッキが普及しているってことか。
「それにしてもだな、ダゴンなんて、小説家の空想の産物じゃないのかよ」
「それがそうでもない」
アンアンは僕を押しのけると、慣れた手つきでキーボードを操作し、得意のウィキを呼び出した。
「見ろ。元は古代メソポタミアの神と書いてある。悪魔学では堕天使にも分類されてるぞ。そのなんとかって作家は、そいつをもとにして小説にでっちあげたにすぎないのさ」
「まあ、そのダゴンが実在するとして、また返り討ちにしようって考えてるのか?」
「ああ。同じ魔界の魔人同士だから、処理は阿修羅に任せてもいいのだが、正直、あいつにあまり借りは作りたくないからな」
「借りが積もり積もると、そいつをカタに結婚を迫られるってか」
「あいつの考えそうなことさ」
なるほど。
阿修羅はそれで色々アンアンを手助けしてるってわけなのか。
それは十分あり得る展開である。
「でもさ、阿修羅ならかわいいし、嫁になってやってもいいんじゃないの? 女の姿であのレベルなら、男になっても十分にイケメンのはずだろ?」
「おまえはあいつの第3の貌を知らないからそんなのんきなことが言えるんだ。チャラチャラしてるように見えるが、曲がりなりにもあれは帝釈天と互角の力を持つ破壊神だぞ。仏の顔も三度までということわざは、阿修羅のためにあるようなものなんだから」
そうだった。
阿修羅王は三面六臂の神なのだ。
美少女の顔、美少年の顔の裏にもうひとつ、悪鬼みたいな顔が隠されていても不思議じゃない。
僕の記憶が正しければ、『インスマウスの影』に登場したのではなかったか。
ほかにもあるかもしれないけど、とりあえず僕が読んだのはそれだけだ。
「おまえ、ほんと、守備範囲、広いんだな」
僕はあきれ返った。
悪魔から妖怪、そして邪神と、まさになんでもござれ状態じゃないか。
「守備範囲って言うな」
アンアンがむくれた。
「別にあたしが望んだわけじゃない。だいたい、親父があたしの15の誕生日を魔界中に発表するからいけないんだ。何万というビデオレターが届いて、王宮は大混乱さ。しかもみんなキモいのばかりときている。その中から親父が選んだのが、カロンをはじめとする6人というわけだ」
なんだ。そのビデオレターというのは。
魔界には今時、時代遅れのビデオデッキが普及しているってことか。
「それにしてもだな、ダゴンなんて、小説家の空想の産物じゃないのかよ」
「それがそうでもない」
アンアンは僕を押しのけると、慣れた手つきでキーボードを操作し、得意のウィキを呼び出した。
「見ろ。元は古代メソポタミアの神と書いてある。悪魔学では堕天使にも分類されてるぞ。そのなんとかって作家は、そいつをもとにして小説にでっちあげたにすぎないのさ」
「まあ、そのダゴンが実在するとして、また返り討ちにしようって考えてるのか?」
「ああ。同じ魔界の魔人同士だから、処理は阿修羅に任せてもいいのだが、正直、あいつにあまり借りは作りたくないからな」
「借りが積もり積もると、そいつをカタに結婚を迫られるってか」
「あいつの考えそうなことさ」
なるほど。
阿修羅はそれで色々アンアンを手助けしてるってわけなのか。
それは十分あり得る展開である。
「でもさ、阿修羅ならかわいいし、嫁になってやってもいいんじゃないの? 女の姿であのレベルなら、男になっても十分にイケメンのはずだろ?」
「おまえはあいつの第3の貌を知らないからそんなのんきなことが言えるんだ。チャラチャラしてるように見えるが、曲がりなりにもあれは帝釈天と互角の力を持つ破壊神だぞ。仏の顔も三度までということわざは、阿修羅のためにあるようなものなんだから」
そうだった。
阿修羅王は三面六臂の神なのだ。
美少女の顔、美少年の顔の裏にもうひとつ、悪鬼みたいな顔が隠されていても不思議じゃない。
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
「こんにちは」は夜だと思う
あっちゅまん
ホラー
主人公のレイは、突然の魔界の現出に巻き込まれ、様々な怪物たちと死闘を繰り広げることとなる。友人のフーリンと一緒にさまよう彼らの運命とは・・・!? 全世界に衝撃を与えたハロウィン・ナイトの惨劇『10・31事件』の全貌が明らかになる!!
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
オーデション〜リリース前
のーまじん
ホラー
50代の池上は、殺虫剤の会社の研究員だった。
早期退職した彼は、昆虫の資料の整理をしながら、日雇いバイトで生計を立てていた。
ある日、派遣先で知り合った元同僚の秋吉に飲みに誘われる。
オーデション
2章 パラサイト
オーデションの主人公 池上は声優秋吉と共に収録のために信州の屋敷に向かう。
そこで、池上はイシスのスカラベを探せと言われるが思案する中、突然やってきた秋吉が100年前の不気味な詩について話し始める
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる