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第3章 阿修羅王
#9 アンアン、不意を突かれる
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鎮守の森は。神社の周囲に広がる雑木林みたいなもので、中は薄暗く、猫の子一匹いなかった。
「ま、鎮守といえば、昔から聖域とされてるからね。本来ならば女人禁制なんだ」
一ノ瀬が解説してくれたが、なんせ真っ裸なので説得力がない。
どの道、アンアンと阿修羅は神様レベルの存在だから、古代日本の聖域など屁でもないといったところだろう。
「あのさ、俺、いつまで裸でいなきゃなんないのかな? ひょっとして、俺、囮? 生贄?」
さっさと先を行く美少女ふたりの後を歩きながら、一ノ瀬が耳打ちしてきた。
「たぶんな」
適当に答えてやると、
「マジかよ。なんで俺なんだよ。元気はどうしてスルーなんだよ」
血相を変えて抗議した。
「だって俺はその」
「アンアンの生き別れてた兄貴だからか?」
「そうそう」
「にしても、不公平にもほどがある」
「俺に言うなよ。アンアンか阿修羅に言えよ」
「無理だよ。ふたりとも、怖いもん」
気持ちはわかる。
100人のゾンビを5分で根絶やしにしてしまうふたりは、およそJKからはほど遠い存在だ。
アニメキャラみたいに、特殊能力を持っていても可愛いところがある、みたいな設定ならいいが、あいにくふたりともオタクにはとことん冷たそうである。
そんな会話を交わしているうちに、森の出口が見えてきた。
そこは小学校の運動場くらいの広場になっていて、正面に横に長い建物が建っていた。
「廃病院って、あれね?」
阿修羅が振り向いて、一ノ瀬に訊いた。
「さ、さようでございます」
フルチンのまま、一ノ瀬が敬礼した。
阿修羅の視線が一瞬一ノ瀬の股間のイチモツに行き、とたんに見下したような表情になった。
おそるべしは、美少女の鑑定眼だ。
「思い切り怪しいところだな」
ツタの絡みついた壁を見上げて、アンアンが言った。
巨乳を支えるように両腕を組み、30度ほどの角度で長い脚を開いている。
「いかにもあのサマエルの好みそうな場所だ」
「まるで心霊スポットだぜ。本当にここに入るのか?」
どんよりした気分で、僕はたずねた。
3階建ての3つの建物でできた廃病院は、コの字形に広場を取り囲んでいる。
昔はかなり大きな病院だったのだろう。
しかし、今は窓という窓のガラスが割られ、それが無数の髑髏の眼窩みたいで、気味の悪いことこの上ない。
「なあ、アンアン、出直したほうがよくないか? もうすぐ日が暮れる。中に入ったところで、どうせ電気なんて来てないから、じきに真っ暗になるぞ」
駄目もとで提案してみると、
「それもそうだな」
アンアンがあっさりとうなずいた。
「元気の言うことも一理ある。暗闇では、地の利に明るいサマエルのほうが、圧倒的に有利だろう。そういうことで、阿修羅、きょうはここまでということにしよう」
「いいよ。あたしはいつでも」
阿修羅が笑った。
「なんちゃって、アンアン、あんた、本当はおなかすいただけなんでしょう?」
「てへ。ばれたか」
アンアンのてへぺろはなかなか様になっていて、お、可愛いじゃん、と思った矢先だった。
ふいに風を切る音が起こり、一ノ瀬の悲鳴が広場に響き渡った。
見ると、巨大な鳥みたいなものが一ノ瀬をつかみ上げ、廃病院のほうに飛んでいくところだった。
「ち、人質を取られたぞ」
「どうする?」
顔を見合わせる美少女ふたり。
「どうするも何も」
僕は横から口を出した。
「当然、助けに行くんだよな」
「ああ。明日な」
ぶっきらぼうに、アンアンが答えた。
「きょうは帰る。もう暗いし、腹が減って気乗りがしない」
「ま、鎮守といえば、昔から聖域とされてるからね。本来ならば女人禁制なんだ」
一ノ瀬が解説してくれたが、なんせ真っ裸なので説得力がない。
どの道、アンアンと阿修羅は神様レベルの存在だから、古代日本の聖域など屁でもないといったところだろう。
「あのさ、俺、いつまで裸でいなきゃなんないのかな? ひょっとして、俺、囮? 生贄?」
さっさと先を行く美少女ふたりの後を歩きながら、一ノ瀬が耳打ちしてきた。
「たぶんな」
適当に答えてやると、
「マジかよ。なんで俺なんだよ。元気はどうしてスルーなんだよ」
血相を変えて抗議した。
「だって俺はその」
「アンアンの生き別れてた兄貴だからか?」
「そうそう」
「にしても、不公平にもほどがある」
「俺に言うなよ。アンアンか阿修羅に言えよ」
「無理だよ。ふたりとも、怖いもん」
気持ちはわかる。
100人のゾンビを5分で根絶やしにしてしまうふたりは、およそJKからはほど遠い存在だ。
アニメキャラみたいに、特殊能力を持っていても可愛いところがある、みたいな設定ならいいが、あいにくふたりともオタクにはとことん冷たそうである。
そんな会話を交わしているうちに、森の出口が見えてきた。
そこは小学校の運動場くらいの広場になっていて、正面に横に長い建物が建っていた。
「廃病院って、あれね?」
阿修羅が振り向いて、一ノ瀬に訊いた。
「さ、さようでございます」
フルチンのまま、一ノ瀬が敬礼した。
阿修羅の視線が一瞬一ノ瀬の股間のイチモツに行き、とたんに見下したような表情になった。
おそるべしは、美少女の鑑定眼だ。
「思い切り怪しいところだな」
ツタの絡みついた壁を見上げて、アンアンが言った。
巨乳を支えるように両腕を組み、30度ほどの角度で長い脚を開いている。
「いかにもあのサマエルの好みそうな場所だ」
「まるで心霊スポットだぜ。本当にここに入るのか?」
どんよりした気分で、僕はたずねた。
3階建ての3つの建物でできた廃病院は、コの字形に広場を取り囲んでいる。
昔はかなり大きな病院だったのだろう。
しかし、今は窓という窓のガラスが割られ、それが無数の髑髏の眼窩みたいで、気味の悪いことこの上ない。
「なあ、アンアン、出直したほうがよくないか? もうすぐ日が暮れる。中に入ったところで、どうせ電気なんて来てないから、じきに真っ暗になるぞ」
駄目もとで提案してみると、
「それもそうだな」
アンアンがあっさりとうなずいた。
「元気の言うことも一理ある。暗闇では、地の利に明るいサマエルのほうが、圧倒的に有利だろう。そういうことで、阿修羅、きょうはここまでということにしよう」
「いいよ。あたしはいつでも」
阿修羅が笑った。
「なんちゃって、アンアン、あんた、本当はおなかすいただけなんでしょう?」
「てへ。ばれたか」
アンアンのてへぺろはなかなか様になっていて、お、可愛いじゃん、と思った矢先だった。
ふいに風を切る音が起こり、一ノ瀬の悲鳴が広場に響き渡った。
見ると、巨大な鳥みたいなものが一ノ瀬をつかみ上げ、廃病院のほうに飛んでいくところだった。
「ち、人質を取られたぞ」
「どうする?」
顔を見合わせる美少女ふたり。
「どうするも何も」
僕は横から口を出した。
「当然、助けに行くんだよな」
「ああ。明日な」
ぶっきらぼうに、アンアンが答えた。
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