夜通しアンアン

戸影絵麻

文字の大きさ
上 下
46 / 249
第3章 阿修羅王

#7 アンアン、無茶をする

しおりを挟む
「どうする?」
 そう言ったのは、僕でも一ノ瀬でもなく、阿修羅だった。
「一度屍人ウィルスに感染した者は、元には戻せないよ。これ以上被害を広げたくなかったら」
「殲滅するしかないということか」
「だね。手伝おうか?」
 ぶっそうな会話である。
 このふたりの会話は、ノー天気なJKのそれとはレベルが違うのだ。
 殲滅?
 もしかして、ふたりであのゾンビたちを?
「阿修羅、おまえ、何を企んでる?」
 が、アンアンも僕と同じ疑問を抱いていたようだ。
 すぐには首を縦に振らず、セーラー服の美少女を疑わしげにねめつけた。
「魔界の住人があたしの味方して、どうするんだ? あたしは故郷を捨てた身だぞ。親父に知れたらおまえもただじゃ済まないと思うが」
「そんときはそんときのことよ。それより私も楽しみたいの。萌え萌えの人間界の青春ってやつを」
 あの、人間界の青春には、ゾンビ殲滅はふつう入っていないんだけど。
「嘘臭いが、まあ、いいだろう、じゃ、とにかく、やるか」
 半信半疑といった感じで、アンアンが中途半端なうなずき方をする。
「密集し過ぎてるね。まず、店の中に居る連中を、外に誘き出さないと」
「そうだな。どんな方法がある?」
「こういうのはどう?」
 阿修羅がいきなり一ノ瀬の腕をつかんで、引き寄せた。
「囮を使うの。こいつを餌に、やつらを一か所に引き寄せる」
「え? 何? ふたりとも、何の話してるの? わ、や、やめ」
 ふたりの美少女の手で、たちまち裸に剥かれる一ノ瀬。
 股間を両手で押さえて、ぴょんぴょん飛び跳ねている。
 かわいそうだが、まあ、僕が囮にされるよりはマシだろう。
「キスしてあげる」
 阿修羅が言い、だしぬけに一ノ瀬の首にかみついた。
「ぎゃああつ!」
 悲鳴とともに、血がしぶく。
 一ノ瀬が悲鳴を上げたのも、無理はない。
 それはキスなどという生易しいものではなかった。
 阿修羅が一気に一ノ瀬の首の皮膚を食いちぎったのだ。
「動脈は逸れてるから心配ないよ」
 血をたらたら流している一ノ瀬に向かい、にっこり笑ってみせる。
「じゃ、行ってらっしゃい」
「え? 行くって、どこに? うわああああ!」
 疑問が途中から悲鳴に変わったのは、アンアンが一ノ瀬の腕を取るや否や、ハンマー投げの要領で振り回したからである。
「てーっ!」
 真っ裸のまま、すっ飛んでいく一ノ瀬。
 アンアンの怪力にかかっては、体重60キロに満たない一ノ瀬など、枯れ木同然だ。
 スーパーの前に群がるゾンビの群れの手前にぼとんと落ちると、蛙のように大の字になってひっくり返る。
 グワアアアアッ。
 ゾンビたちが一斉に振り向いたのは、血の臭いをかぎつけたからにちがいない。
「行くぞ、阿修羅」
 それを合図に、アンアンがジャンプした。
「あいよ!」
 続いて阿修羅も大ジャンプ。
 素晴らしい。
 美少女ふたりのパンチラ2連発。
 スーパーの入口から、ゾンビの大群があふれ出してきた。
 その数、ざっと百人。
 そして、死闘が始まった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

処理中です...