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第2章 蠅の王
#5 アンアンと二人目の貴公子①
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アンアンが巨大化したせいで、水が半分に減ってしまったプール。
その中から姿を現したもの。
それは、見上げるほどもある、巨大な白い物体だった。
強いて似ているものがあるとすれば、蛆である。
生ごみなどに涌く、あの白くてくねくねした気色悪い生き物である。
「ぶはっ」
一ノ瀬が体育座りのまま、後ろにひっくり返った。
スク水姿の女生徒たちのあいだから、一斉に悲鳴が上がった。
「な、なんだ、これは?」
棒立ちになっているゴリラ、いや、体育教師に、観光バスほどもある巨大蛆が襲いかかる。
先端がユリの花みたいに開いたかと思うと、
パクッ。
軽い音がして、次の瞬間、その首から上がなくなっていた。
血しぶきが上がり、プールサイドのコンクリートに真っ赤な血の花が咲く。
「お、おい、アンアン、あれは」
「思った通りだ」
アンアンが準備体操を始めた。
両手を組んで伸ばし、頭の上で旋回させる。
屈伸運動すると、熟したスイカみたいなバストが三角ビキニの中でぶらぶら揺れた。
「ベルゼブブ。蠅の王さ」
「蠅の王?」
そうか。
そうだった。
どこかで聞いたことがあると思った。
ベルゼブブといえば、旧約聖書や新約聖書に登場する、悪霊の頭領の名だったはずである。
僕は別にキリスト教徒ではないけれど、以前やったゲームに出てきたことがある。
でも、そんなものが本当に存在するなんて。
体育教師を食った巨大蛆は、その勢いで生徒たちを追い回している。
そのうち、先細りの三角頭がこっちのほうにやってきた。
「た、助けてくれ!」
まずい。
今度は一ノ瀬が狙われている。
あんまり取り得のないやつだが、あれでも数少ない僕の友人のひとりだ。
腰を浮かせた一ノ瀬の頭上で、蛆の頭が4つに割れた。
「危ない!」
叫んだ時にはすでに遅かった。
パクッ。
”花”が閉じると、パッと血しぶきが飛散して、次の瞬間にはノ瀬の頭がなくなっていた。
ドサッ。
首なしになった一ノ瀬の身体が、プールサイドに棒みたいに倒れ込む。
と、蛆の頭部が、僕の方にミサイルみたいな先端を向けてきた。
「元気、行け!」
スクワットをくり返しながら、アンアンが叫んだ。
「あれだあれ!」
あれってどれだ?
そこで僕はふと思い出した。
そうか。
こういう時こそ、あれの出番じゃないか。
目を閉じた。
時間がない。
でも、うまくいくだろうか。
果たして間に合うのか。
目の前で怪物の口が開いた。
「早く!」
アンアンの怒鳴り声が聞こえてきた。
その中から姿を現したもの。
それは、見上げるほどもある、巨大な白い物体だった。
強いて似ているものがあるとすれば、蛆である。
生ごみなどに涌く、あの白くてくねくねした気色悪い生き物である。
「ぶはっ」
一ノ瀬が体育座りのまま、後ろにひっくり返った。
スク水姿の女生徒たちのあいだから、一斉に悲鳴が上がった。
「な、なんだ、これは?」
棒立ちになっているゴリラ、いや、体育教師に、観光バスほどもある巨大蛆が襲いかかる。
先端がユリの花みたいに開いたかと思うと、
パクッ。
軽い音がして、次の瞬間、その首から上がなくなっていた。
血しぶきが上がり、プールサイドのコンクリートに真っ赤な血の花が咲く。
「お、おい、アンアン、あれは」
「思った通りだ」
アンアンが準備体操を始めた。
両手を組んで伸ばし、頭の上で旋回させる。
屈伸運動すると、熟したスイカみたいなバストが三角ビキニの中でぶらぶら揺れた。
「ベルゼブブ。蠅の王さ」
「蠅の王?」
そうか。
そうだった。
どこかで聞いたことがあると思った。
ベルゼブブといえば、旧約聖書や新約聖書に登場する、悪霊の頭領の名だったはずである。
僕は別にキリスト教徒ではないけれど、以前やったゲームに出てきたことがある。
でも、そんなものが本当に存在するなんて。
体育教師を食った巨大蛆は、その勢いで生徒たちを追い回している。
そのうち、先細りの三角頭がこっちのほうにやってきた。
「た、助けてくれ!」
まずい。
今度は一ノ瀬が狙われている。
あんまり取り得のないやつだが、あれでも数少ない僕の友人のひとりだ。
腰を浮かせた一ノ瀬の頭上で、蛆の頭が4つに割れた。
「危ない!」
叫んだ時にはすでに遅かった。
パクッ。
”花”が閉じると、パッと血しぶきが飛散して、次の瞬間にはノ瀬の頭がなくなっていた。
ドサッ。
首なしになった一ノ瀬の身体が、プールサイドに棒みたいに倒れ込む。
と、蛆の頭部が、僕の方にミサイルみたいな先端を向けてきた。
「元気、行け!」
スクワットをくり返しながら、アンアンが叫んだ。
「あれだあれ!」
あれってどれだ?
そこで僕はふと思い出した。
そうか。
こういう時こそ、あれの出番じゃないか。
目を閉じた。
時間がない。
でも、うまくいくだろうか。
果たして間に合うのか。
目の前で怪物の口が開いた。
「早く!」
アンアンの怒鳴り声が聞こえてきた。
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