236 / 249
第6章 アンアン魔界行
#137 アンアン、死す④
しおりを挟む
グギッ。
ギッ。
ギギッ。
軋みを上げて、阿修羅の首が一回転した。
その瞬間、僕は玉の絶望する理由を悟って青ざめた。
阿修羅は首をねじられたくらいで、死にはしない。
玉はそのことに絶望の声を上げたのではなかったのだ。
首が360度回転すると、阿修羅はペルソナ・チェンジをしてしまう。
つまり、第2人格が現れる。
そして彼女の第2人格と言えば…。
「な、なんだ、おまえ?」
前鬼が初めて、人語を発した。
それほど阿修羅の人格変換に驚いたのだろう。
そう、阿修羅はあのスタイル抜群の美少女から、男に変わり始めていた。
胸がしぼみ、平たくなって、ブラがぶかぶかになった。
つんと突き出したかっこいいお尻も、なんだかひとまわりサイズが縮んでしまったようだ。
女物のブラとショーツをつけた若い男。
今、前鬼に組み伏せられようとしているのは、あの美少女戦士ではなく、単なる変態なのだ。
「いてえんだよ! おっさん! 手え、放せよ!」
例の草食系イケメン少年に変身した阿修羅がわめいた。
「なんで男が? げ、キモい、キモ過ぎる!」
前鬼が負けず劣らず大声でわめき、男阿修羅を投げ飛ばす。
「うわっ! な、なんだこりゃ? げ、し、しびれるぅ!」
ロープに引っかかって感電した阿修羅が、全身から焦臭い匂いをさせて僕らの足元に転がってきた。
「こんな大事な時に、どうしておまえが出てくるんだよ!」
すっかりボンクラと化した阿修羅を引きずり起こして、僕は毒づいた。
「早く元に戻るか、第3人格に変身しろよ! おまえじゃクソの役にもたないじゃないか!」
「クソの役? 相変わらず下品なやつだな」
シートに這い上がると、焦げた前髪を気にしながら、ボンクラでくのぼうが、威張った口調で言い返してきた。
「そんなんじゃ、いつまでたっても、女の子にモテないぞ」
「モテるモテないはこの際関係ない。いいか? おまえは今、アンアンと組んで、魔界・地獄界対抗格闘技選手権の試合中なんだ。早くリングに戻らないと、アンアンが大変なことになる」
「無理だね」
男阿修羅の返事はそっけなかった。
「俺はペンより重いものは持ったことがないんだ。もちろん、格闘技なんて、興味もない。ゲームだって、格闘ゲーより、RPG系のが好きなんでね。ここは下ろさせてもらうよ」
「勝手なこというなよ、このヘタレ!」
業を煮やして、一ノ瀬が阿修羅に飛びかかった。
「こうなったら、俺がもう一度、その首、ねじ切ってやる!」
「や、やめろ! 痛いって!」
一ノ瀬にスリーパーホールドをかけられて、男阿修羅がバタバタ暴れ出す。
「間に合うといいですけど…」
心配そうにリングのほうに目をやって、玉がつぶやいた。
その時、リング上では、新たな動きが起ころうとしていたのだ。
ギッ。
ギギッ。
軋みを上げて、阿修羅の首が一回転した。
その瞬間、僕は玉の絶望する理由を悟って青ざめた。
阿修羅は首をねじられたくらいで、死にはしない。
玉はそのことに絶望の声を上げたのではなかったのだ。
首が360度回転すると、阿修羅はペルソナ・チェンジをしてしまう。
つまり、第2人格が現れる。
そして彼女の第2人格と言えば…。
「な、なんだ、おまえ?」
前鬼が初めて、人語を発した。
それほど阿修羅の人格変換に驚いたのだろう。
そう、阿修羅はあのスタイル抜群の美少女から、男に変わり始めていた。
胸がしぼみ、平たくなって、ブラがぶかぶかになった。
つんと突き出したかっこいいお尻も、なんだかひとまわりサイズが縮んでしまったようだ。
女物のブラとショーツをつけた若い男。
今、前鬼に組み伏せられようとしているのは、あの美少女戦士ではなく、単なる変態なのだ。
「いてえんだよ! おっさん! 手え、放せよ!」
例の草食系イケメン少年に変身した阿修羅がわめいた。
「なんで男が? げ、キモい、キモ過ぎる!」
前鬼が負けず劣らず大声でわめき、男阿修羅を投げ飛ばす。
「うわっ! な、なんだこりゃ? げ、し、しびれるぅ!」
ロープに引っかかって感電した阿修羅が、全身から焦臭い匂いをさせて僕らの足元に転がってきた。
「こんな大事な時に、どうしておまえが出てくるんだよ!」
すっかりボンクラと化した阿修羅を引きずり起こして、僕は毒づいた。
「早く元に戻るか、第3人格に変身しろよ! おまえじゃクソの役にもたないじゃないか!」
「クソの役? 相変わらず下品なやつだな」
シートに這い上がると、焦げた前髪を気にしながら、ボンクラでくのぼうが、威張った口調で言い返してきた。
「そんなんじゃ、いつまでたっても、女の子にモテないぞ」
「モテるモテないはこの際関係ない。いいか? おまえは今、アンアンと組んで、魔界・地獄界対抗格闘技選手権の試合中なんだ。早くリングに戻らないと、アンアンが大変なことになる」
「無理だね」
男阿修羅の返事はそっけなかった。
「俺はペンより重いものは持ったことがないんだ。もちろん、格闘技なんて、興味もない。ゲームだって、格闘ゲーより、RPG系のが好きなんでね。ここは下ろさせてもらうよ」
「勝手なこというなよ、このヘタレ!」
業を煮やして、一ノ瀬が阿修羅に飛びかかった。
「こうなったら、俺がもう一度、その首、ねじ切ってやる!」
「や、やめろ! 痛いって!」
一ノ瀬にスリーパーホールドをかけられて、男阿修羅がバタバタ暴れ出す。
「間に合うといいですけど…」
心配そうにリングのほうに目をやって、玉がつぶやいた。
その時、リング上では、新たな動きが起ころうとしていたのだ。
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる