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第6章 アンアン魔界行
#118 アンアン、地獄をめくる⑭
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万里の長城並みに長い壁である。
だから、当然、ひと続きではなく、いくつかの区画に分かれている。
つまり、動くのもブロックごとで、長大な壁が一気に迫ってくるというわけではない。
僕らにとって幸いだったのは、動き始めたのがかなり先のブロックからだったということである。
もちろん、ブロックの動きの伝播はかなり速くて、まごまごしている時間はない。
だが、少なくとも、瞬殺されることだけは、なんとか免れたようだった。
阿修羅、玉、一ノ瀬、アンアン、僕の順で、亡者の群れの間をかき分けかき分け、懸命に来たほうへと戻った。
ガシャーン! ガシャーン!
壁のブロックが後ろでどんどん閉まっていく。
そのたびに、耳をつんざくような絶叫が沸き起こり、肉と骨のつぶれる音が空気を震わせる。
「やべ! 俺、またションベンちびりそうだ!」
「我慢しろ! あたしにかけたら承知しないぞ!」
ガニ股で走る一ノ瀬の尻を、後ろからアンアンが蹴り飛ばす。
「早く早くゥ! 急いでください! すぐ後ろのブロックが動き出してますよ!」
改めて玉に指摘されるまでもなかった。
壁の動きが早くなっている。
僕らに狙いを定めているかのように、通りすぎるそばからそこの壁が動いて、ブロックとブロックが衝突する。
もたつく一ノ瀬が邪魔になったのか、アンアンはその襟首をつまんで宙吊りにしたまま走っている。
そうこうするうちに、地面にかがみこんだナイアルラトホテップのタキシード姿が見えてきた。
「急いで! このままでは、せっかくつくった魔法陣が飲み込まれてしまいます!」
ほうほうの体でたどり着くと、まだ穴は開き切っていなかった。
微光を発する魔法陣の真ん中にできた真っ黒な穴が、じわじわ広がっていく途中である。
グワッシャーン!
すぐ後ろのブロックが閉じた。
潰された亡者たちの血潮が、雨のように降り注ぐ。
「くう、もう少し時間があれば」
左右の壁が動き出したのを見て、ナイアルラホテップが恨めしそうにつぶやいた。
「しょうがないな」
こんな時、頼りになるのは、やはりアンアンである。
「あたしが壁を押さえて時間を稼ぐ。その間に、みんな穴から下に飛び降りるんだ」
そう言いながら、ぐんぐん大きくなっていく。
身長10メートルほどに巨大化すると、両手を左右の壁につけてブロックの動きを止めにかかった。
「なんとかいけそう! アンアン、恩に着るよ!」
玉と一ノ瀬を穴の中に放り込むと、その後を追って、阿修羅が飛び降りた。
「では、私も」
アンアンに向かって一礼し、邪神がそれに続く。
「アンアン、もういい。一緒に行こう」
アンアンの脚に手をかけて、僕は言った。
さすがのアンアンも、かなり苦しそうだ。
全身に縄のような筋肉の束が浮き上がり、滝のように汗を流している。
「あたしはいいから、先に行け」
苦痛に顔を歪めながら、アンアンが言った。
「でも…」
「い、いいから、早く!」
後ろ髪引かれる思いで、穴の縁に立った時だった。
僕はいきなり尻を蹴飛ばされ、宙を舞った。
アンアン!
空中で身体をねじって振り向こうとした、その瞬間。
ガガガガッガッ!
鈍い音とともに、頭上が真っ暗になった。
穴の真上で、壁を構成するブロック同士が、ついに衝突したのである。
だから、当然、ひと続きではなく、いくつかの区画に分かれている。
つまり、動くのもブロックごとで、長大な壁が一気に迫ってくるというわけではない。
僕らにとって幸いだったのは、動き始めたのがかなり先のブロックからだったということである。
もちろん、ブロックの動きの伝播はかなり速くて、まごまごしている時間はない。
だが、少なくとも、瞬殺されることだけは、なんとか免れたようだった。
阿修羅、玉、一ノ瀬、アンアン、僕の順で、亡者の群れの間をかき分けかき分け、懸命に来たほうへと戻った。
ガシャーン! ガシャーン!
壁のブロックが後ろでどんどん閉まっていく。
そのたびに、耳をつんざくような絶叫が沸き起こり、肉と骨のつぶれる音が空気を震わせる。
「やべ! 俺、またションベンちびりそうだ!」
「我慢しろ! あたしにかけたら承知しないぞ!」
ガニ股で走る一ノ瀬の尻を、後ろからアンアンが蹴り飛ばす。
「早く早くゥ! 急いでください! すぐ後ろのブロックが動き出してますよ!」
改めて玉に指摘されるまでもなかった。
壁の動きが早くなっている。
僕らに狙いを定めているかのように、通りすぎるそばからそこの壁が動いて、ブロックとブロックが衝突する。
もたつく一ノ瀬が邪魔になったのか、アンアンはその襟首をつまんで宙吊りにしたまま走っている。
そうこうするうちに、地面にかがみこんだナイアルラトホテップのタキシード姿が見えてきた。
「急いで! このままでは、せっかくつくった魔法陣が飲み込まれてしまいます!」
ほうほうの体でたどり着くと、まだ穴は開き切っていなかった。
微光を発する魔法陣の真ん中にできた真っ黒な穴が、じわじわ広がっていく途中である。
グワッシャーン!
すぐ後ろのブロックが閉じた。
潰された亡者たちの血潮が、雨のように降り注ぐ。
「くう、もう少し時間があれば」
左右の壁が動き出したのを見て、ナイアルラホテップが恨めしそうにつぶやいた。
「しょうがないな」
こんな時、頼りになるのは、やはりアンアンである。
「あたしが壁を押さえて時間を稼ぐ。その間に、みんな穴から下に飛び降りるんだ」
そう言いながら、ぐんぐん大きくなっていく。
身長10メートルほどに巨大化すると、両手を左右の壁につけてブロックの動きを止めにかかった。
「なんとかいけそう! アンアン、恩に着るよ!」
玉と一ノ瀬を穴の中に放り込むと、その後を追って、阿修羅が飛び降りた。
「では、私も」
アンアンに向かって一礼し、邪神がそれに続く。
「アンアン、もういい。一緒に行こう」
アンアンの脚に手をかけて、僕は言った。
さすがのアンアンも、かなり苦しそうだ。
全身に縄のような筋肉の束が浮き上がり、滝のように汗を流している。
「あたしはいいから、先に行け」
苦痛に顔を歪めながら、アンアンが言った。
「でも…」
「い、いいから、早く!」
後ろ髪引かれる思いで、穴の縁に立った時だった。
僕はいきなり尻を蹴飛ばされ、宙を舞った。
アンアン!
空中で身体をねじって振り向こうとした、その瞬間。
ガガガガッガッ!
鈍い音とともに、頭上が真っ暗になった。
穴の真上で、壁を構成するブロック同士が、ついに衝突したのである。
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