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第6章 アンアン魔界行
#103 アンアンとアンダーバベルの恐怖⑰
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バリアが消えていた。
空気の動きで、それとわかった。
と、そこに、
「どうするって、こうするんだよ!」
突然、雷のような声が響き渡った。
「くらえ! ディメンション・クラッーシュ!」
と、次の瞬間、どーんという振動音が鳴り渡り、クトゥルフ本体がびりびりと激しく震えた。
「あ、アンアン…」
僕はあんぐりと口を開けてしまった。
ナイアルラトホテップの背後に、巨大化したアンアンの顔。
バリアが消えた隙を逃がさず、アンアンが右のこぶしで、残った邪神の左目をぶっ潰したのだ。
「これ、もらってくぜ」
ずぼっ。
陥没した眼窩から腕を引き抜くと、アンアンがその手でクトゥルフの顎の下から宝玉を奪い取った。
すかさず空いたほうの手を伸ばし、僕の前で手のひらを広げて優しい口調で言った。
「よくやった、元気。さあ、乗れ」
「いやはや」
重力を無視して空中を漂いながら、ナイアルラトホテップが呆れたようにつぶやいた。
「なんとも乱暴なお嬢さんだ。そんな無茶をして、”彼”が暴走しても知りませんよ」
アンアンの右肩に無事戻り、ふうっと全身で息をつく。
高度を上げたアンアンを、上空で阿修羅が待っていた。
「やったね、ふたりとも! これでやっと轟天号を動かせるよ!」
あちこちにスリットの入った阿修羅のミニスカートは、まるでこいのぼりの吹き流し状態で、その隙間から時々のぞく小麦色に日焼けした太腿が、なんとも悩ましい。
「喜ぶのはまだ早い」
翼を広げ、空中でバランスを取りながら、アンアンが言う。
「見ろ。邪神のオーバードライブが始まった」
ゴゴゴゴゴゴゴ…。
アンアンの言う通りだった。
クトゥルフの丸い頭が、真ん中からめりめりと裂けていく。
代わりに中から出現したのは、高圧電線の鉄塔ほどもある巨大な軟体動物だ。
直立したナメクジとでもいうべきか。
細くなった頭部にはもじゃもじゃと細かい触手が密生していて、イソギンチャクみたいな口が開いたり開いたりを繰り返しているのだ。
その長い首がくわんとしなり、僕らのほうを向いた。
かっと開いた口から発射されたのは、乳白色の消化液のようなものである。
アンアンと阿修羅がその奔流をひらりとよけた。
放物線を描いてしたたり落ちた液体が、じゅうじゅうと石畳を溶かしていくのが見えた。
「どこまでも不潔なやつだねえ。往生際が悪いにもほどがある」
怒ったように、まなじりを吊り上げて阿修羅がぼやいた。
「しょうがない。アンアン、あれ、やってくれる?」
アンアンに目を向けると、肩をすくめて、そう言った。
「あれって、あれのことか?」
アンアンが、意味不明の返事を返す。
「うん。あれ。あんまり気が進まないけど、これ以上は時間の無駄だから」
「そうだな。じゃ、ここはおまえに任せた」
阿修羅の背後に、アンアンが回った。
その顔を両手で挟むと、気の毒そうにつぶやいた。
「少し痛いが、我慢しろ」
空気の動きで、それとわかった。
と、そこに、
「どうするって、こうするんだよ!」
突然、雷のような声が響き渡った。
「くらえ! ディメンション・クラッーシュ!」
と、次の瞬間、どーんという振動音が鳴り渡り、クトゥルフ本体がびりびりと激しく震えた。
「あ、アンアン…」
僕はあんぐりと口を開けてしまった。
ナイアルラトホテップの背後に、巨大化したアンアンの顔。
バリアが消えた隙を逃がさず、アンアンが右のこぶしで、残った邪神の左目をぶっ潰したのだ。
「これ、もらってくぜ」
ずぼっ。
陥没した眼窩から腕を引き抜くと、アンアンがその手でクトゥルフの顎の下から宝玉を奪い取った。
すかさず空いたほうの手を伸ばし、僕の前で手のひらを広げて優しい口調で言った。
「よくやった、元気。さあ、乗れ」
「いやはや」
重力を無視して空中を漂いながら、ナイアルラトホテップが呆れたようにつぶやいた。
「なんとも乱暴なお嬢さんだ。そんな無茶をして、”彼”が暴走しても知りませんよ」
アンアンの右肩に無事戻り、ふうっと全身で息をつく。
高度を上げたアンアンを、上空で阿修羅が待っていた。
「やったね、ふたりとも! これでやっと轟天号を動かせるよ!」
あちこちにスリットの入った阿修羅のミニスカートは、まるでこいのぼりの吹き流し状態で、その隙間から時々のぞく小麦色に日焼けした太腿が、なんとも悩ましい。
「喜ぶのはまだ早い」
翼を広げ、空中でバランスを取りながら、アンアンが言う。
「見ろ。邪神のオーバードライブが始まった」
ゴゴゴゴゴゴゴ…。
アンアンの言う通りだった。
クトゥルフの丸い頭が、真ん中からめりめりと裂けていく。
代わりに中から出現したのは、高圧電線の鉄塔ほどもある巨大な軟体動物だ。
直立したナメクジとでもいうべきか。
細くなった頭部にはもじゃもじゃと細かい触手が密生していて、イソギンチャクみたいな口が開いたり開いたりを繰り返しているのだ。
その長い首がくわんとしなり、僕らのほうを向いた。
かっと開いた口から発射されたのは、乳白色の消化液のようなものである。
アンアンと阿修羅がその奔流をひらりとよけた。
放物線を描いてしたたり落ちた液体が、じゅうじゅうと石畳を溶かしていくのが見えた。
「どこまでも不潔なやつだねえ。往生際が悪いにもほどがある」
怒ったように、まなじりを吊り上げて阿修羅がぼやいた。
「しょうがない。アンアン、あれ、やってくれる?」
アンアンに目を向けると、肩をすくめて、そう言った。
「あれって、あれのことか?」
アンアンが、意味不明の返事を返す。
「うん。あれ。あんまり気が進まないけど、これ以上は時間の無駄だから」
「そうだな。じゃ、ここはおまえに任せた」
阿修羅の背後に、アンアンが回った。
その顔を両手で挟むと、気の毒そうにつぶやいた。
「少し痛いが、我慢しろ」
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