夜通しアンアン

戸影絵麻

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第6章 アンアン魔界行

#85 アンアン、地底軍艦に乗る⑰

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 その後、いったい何が起こったのか。
「やい、化け物、こっちを見ろ!」
 思いもかけぬほど近くで、だしぬけにアンアンの声がした。
「わわっ! 何をするんだ?」
 続けて起こった一ノ瀬の悲鳴。
 メデューサのぎらつく凶眼が、すっと声のほうに逸れ、そこで大きく見開かれた。
 かちん。
 音がして、
「ぎゃ」
 一ノ瀬がうめいた。
 振り向くと、とんでもない光景が視界に飛び込んできた。
 ズボンとパンツをずり下ろされた一ノ瀬を、アンアンが後ろから抱え上げている。
 一ノ瀬の股間を、メデューサの鼻先に突きつけているのだ。
 化け物の視線は、どうやらその股間の一点に釘付けになってしまっているようだ。
 なぜって、こんな時だというのに、一ノ瀬のやつ、どこで催したのか、見事に勃起してしまっているのである!
 だが、それが功を奏したようだった。
 あまりに凝視がピンポイントだったせいか…。
 石化しているのは、一ノ瀬のペニスだけだった。
「わああああっ! 俺のチンコがあ!」
 わめく一ノ瀬。
 と、同時に、一ノ瀬の背中に隠れてアンアンが叫んだ。
「阿修羅! 今だ!」
「待ってました!」
 ひらりとスカートを翻し、素敵なパンチラとともに、阿修羅が舞い降りてきた。
 両手に例の鞭を握っている。
 メデューサの背後に立つと、その鞭を怪物の首に巻きつけて、左右に一気に引き絞る。
 ぎゃあああっ!
 断末魔の悲鳴。
 噴き出す青い血。
 顔の周りで、無数の蛇たちが硬直した。
 ぐらり。
 メデューサの頭が、ゆっくりとかたむいていく。
 頭部がごろんと床に落ちると同時に、大蛇のような巨体が大きくバウンドし、やがて動かなくなった。
「やったね!」
 阿修羅がアンアンとハイタッチした。
「蚊トンボったら、またしても大活躍じゃん!」
 阿修羅は興奮冷めやらぬ表情だ。
 唖然としつつ、僕は傘をたたんだ。
 しかし、なんという無謀な作戦だろう。
 一ノ瀬の勃起チンポを囮にして、メデューサの視線をその一点に引きつけておき、その隙に首をぶった切る。
 囮にされたのが一ノ瀬で、本当によかった。
 こいつを連れてきたのは、まさに大正解だったというべきだろう。
「そ、そんなこと言われたって、全然うれしくない! お、俺のチンコはどうなるんだあ!」
 ただの灰色の石の棒と化した己の一物を握りしめ、一ノ瀬が泣きわめく。
「大丈夫」
 阿修羅がにっこり笑って、怪物の首を拾い上げた。
「石化はね、メデューサの血を塗れば、あっという間に治っちゃうの。まず玉を元に戻して、それででもまだ血が余ってるようなら、蚊トンボ君のちんちんにも塗ってあげるね」
「ちょ、ちょっと、なんで俺は後回しなんだよお?」
「どうせそれ、たいして使い道ないだろ」
 一ノ瀬の石棒をチラ見して、横からアンアンが、ぼそりと言う。
「別にそのままでもいいじゃないか」
 


 
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