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♯9 順風満帆
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なんだかんだで嵐のように忙しい1ヶ月が過ぎた。
そして今や、塾生数は、なんと200人。
3分の1はゴブゴブ団のつてで集まってきたモブ。
残りがミルナの村及び、その近隣からやってくる人間たちである。
中でも、隣町で知り合ったバビロニア領主ヒロトさまの影響力はものすごく、彼の一声で軽く50人は入塾したんじゃないかと思う。
科目分担は、重人が数学、貞子が、理科、山本が社会、緋美子が国語、そしてヒバナが体育だ。
集団授業の教室は当然どこもいっぱいで、個別指導も村の老人たちを臨時講師として雇わないと回らない有様だった。
俺の仕事はというと、そのスケジュールを組む係。
90分単位で生徒2人に講師ひとりを当てはめていくという、めんどう極まりない作業。
でも、それなりに塾運営に貢献することができ、自分なりに満足だった。
残った脳筋男の太田は、建物や備品のメンテナンス係である。
今は、あちこちから色々な素材を調達してきては、念願の黒板づくりに大わらわだ。
そんなわけで塾運営は好調だったけれど、問題は山積していた。
まず、トロルなどの大型塾生の扱いである。
でかすぎて教室に入らないのだ。
これは、トロルのために校庭で青空教室を開くことで解決した。
校庭に彼専用のテントを立てたのである。
また、スライムも面倒な生徒だった。
しゃべらないし、手も足もない。
仕方なく、テレパシーでスライムと交感できるという、ゴブの親分を通訳に立てることにした。
そんなこんなでバタバタしている、ある昼下がりのことである。
事務所でひとり、スケジュール管理に汗を流していると、塾長の緋美子がやってきた。
「あ、五代君、ちょうどいいところに」
「ん? 何?」
窓の外では、レオタード姿のヒバナがゴブリンやコボルトの子供たちに、ダンスを教えているところである。
そのにぎやかな掛け声が、さわやかな風に乗ってカーテン越しに入ってくる。
「ヒロトさまがね、バビロニアにも教室を出してほしいって言ってきてるんだけど、五代君、どう思う?」
「えー、マジか」
俺は目を丸くした。
「正直言って、講師が足りないって。ここ1教室でさえ、俺たちだけではもう回らないだろう?」
「そうよねえ」
テーブルに頬杖を突き、緋美子がつぶやく。
「まさか、もと居た世界から応援を頼むわけにもいかないし」
「そりゃ、本末転倒じゃね? 元の世界に帰れるなら、こんなとこで塾やんなくても済むわけだからさ」
「まあ、それはそうなんだけどね」
「現実的な策としては、講師の養成しかないだろうな。この世界の人間から、授業ができる者を育てるっていうか」
「珍しく、まともなこと、言うじゃない」
「そりゃ、ずっとこのコマ入れやってるとね」
俺は作りかけのスケジュール表をひらひら振ってみせた。
「ま、講師は別に人間じゃなくてもいいんだし、それこそゴブでもスライムでも、優秀なら誰でも」
「講師養成用の特別クラスをつくるってことね」
「うん。割増料金取って、休日を使ったらどうかな」
「わかった。ヒロトさまには、その線で話してみるわ」
緋美子が立ち上がりかけた時である。
入り口に小柄な人影が現れた。
白い顎髭を伸ばした、村長である。
なぜだか真っ青な顔をしている。
「どうしたんですか?」
緋美子が訊いた。
「そ、それが、大変なんじゃy」
村長が唇を震わせて、答えた。
「魔王の空中戦艦が、こっちに向かってきよる。今、斥候から、そう連絡が入ったのじゃよ」
そして今や、塾生数は、なんと200人。
3分の1はゴブゴブ団のつてで集まってきたモブ。
残りがミルナの村及び、その近隣からやってくる人間たちである。
中でも、隣町で知り合ったバビロニア領主ヒロトさまの影響力はものすごく、彼の一声で軽く50人は入塾したんじゃないかと思う。
科目分担は、重人が数学、貞子が、理科、山本が社会、緋美子が国語、そしてヒバナが体育だ。
集団授業の教室は当然どこもいっぱいで、個別指導も村の老人たちを臨時講師として雇わないと回らない有様だった。
俺の仕事はというと、そのスケジュールを組む係。
90分単位で生徒2人に講師ひとりを当てはめていくという、めんどう極まりない作業。
でも、それなりに塾運営に貢献することができ、自分なりに満足だった。
残った脳筋男の太田は、建物や備品のメンテナンス係である。
今は、あちこちから色々な素材を調達してきては、念願の黒板づくりに大わらわだ。
そんなわけで塾運営は好調だったけれど、問題は山積していた。
まず、トロルなどの大型塾生の扱いである。
でかすぎて教室に入らないのだ。
これは、トロルのために校庭で青空教室を開くことで解決した。
校庭に彼専用のテントを立てたのである。
また、スライムも面倒な生徒だった。
しゃべらないし、手も足もない。
仕方なく、テレパシーでスライムと交感できるという、ゴブの親分を通訳に立てることにした。
そんなこんなでバタバタしている、ある昼下がりのことである。
事務所でひとり、スケジュール管理に汗を流していると、塾長の緋美子がやってきた。
「あ、五代君、ちょうどいいところに」
「ん? 何?」
窓の外では、レオタード姿のヒバナがゴブリンやコボルトの子供たちに、ダンスを教えているところである。
そのにぎやかな掛け声が、さわやかな風に乗ってカーテン越しに入ってくる。
「ヒロトさまがね、バビロニアにも教室を出してほしいって言ってきてるんだけど、五代君、どう思う?」
「えー、マジか」
俺は目を丸くした。
「正直言って、講師が足りないって。ここ1教室でさえ、俺たちだけではもう回らないだろう?」
「そうよねえ」
テーブルに頬杖を突き、緋美子がつぶやく。
「まさか、もと居た世界から応援を頼むわけにもいかないし」
「そりゃ、本末転倒じゃね? 元の世界に帰れるなら、こんなとこで塾やんなくても済むわけだからさ」
「まあ、それはそうなんだけどね」
「現実的な策としては、講師の養成しかないだろうな。この世界の人間から、授業ができる者を育てるっていうか」
「珍しく、まともなこと、言うじゃない」
「そりゃ、ずっとこのコマ入れやってるとね」
俺は作りかけのスケジュール表をひらひら振ってみせた。
「ま、講師は別に人間じゃなくてもいいんだし、それこそゴブでもスライムでも、優秀なら誰でも」
「講師養成用の特別クラスをつくるってことね」
「うん。割増料金取って、休日を使ったらどうかな」
「わかった。ヒロトさまには、その線で話してみるわ」
緋美子が立ち上がりかけた時である。
入り口に小柄な人影が現れた。
白い顎髭を伸ばした、村長である。
なぜだか真っ青な顔をしている。
「どうしたんですか?」
緋美子が訊いた。
「そ、それが、大変なんじゃy」
村長が唇を震わせて、答えた。
「魔王の空中戦艦が、こっちに向かってきよる。今、斥候から、そう連絡が入ったのじゃよ」
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