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#8 開校! 日の丸学習塾
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いい加減疲れて村に帰ると、なんと塾の校舎は半ば完成していた。
20人ほどは入れる教室が2つと、個別指導用のブースで仕切られた部屋がひとつ。
ちゃんと休憩室もあり、本棚には本もそろっている。
「やるね、あなたたち」
入ってきた俺とヒバナを見るなり、相好をくずして緋美子が言った。
「さっそく申し込みに来たよ。それも10人というか、10匹も」
「10、匹?」
俺はヒバナと顔を見合わせた。
ゴブリンは5匹くらいしかいなかったはずなのに、10匹ってのはどういうことだ?
「ゴブリンが5匹と、コボルトが2匹、それからトロールとスライムが2匹ずつ。なんでもあなたたちに勧誘されたゴブリンの親分が、仲間に声をかけてくれたらしいの」
「あいつ、意外にいいやつだったんだね」
ヒバナが不思議そうに言った。
「『意外に』は、失礼だろ? むちゃいいやつじゃん」
俺はなんだか胸がジーンと熱くなるのを覚えた。
しかし、正直、なんでそこまで気に入られたのか、そこがわからない。
「ゴブリンの親分はね,昔、魔王と戦ったことがあるそうなの。召喚された勇者のしもべとしてね。でも、その時は、ぼこぼこにやられちゃったんだって。それで、思ったらしいの。力では、とうてい魔王にかなわない。何か他の方法を考えないと、って」
「だから、勉強?」
「そう。見かけは怖いけど、とても立派な動機だと思う」
「でも、その後はどうなったんだ? 勇者がやられちゃったんなら、世界はとっくに滅びてるはずじゃ」
「それがね、もうパーティ全滅か、って時に、女神さまが現れて、魔王を封印してくれたんだって」
「女神さま?」
女神といえば、僕らをクラス転移させたあの神様のことだろうか?
しかし、そんなことができるなら、女神のやつ、今回だって何も俺らに頼まず自分で世界を救えばいいものを。
「まあ、とにかく、上々のスタートだね。これもヒバナちゃんと五代君のおかげだよ」
「てへ。そう言ってもらえるとなんか泣けてきちゃう」
ひみこファンのヒバナはもうデレデレ状態だ。
「人間のほうも、たぶん大丈夫だと思う。実はさっき、おっきな町でバビロニアの領主とかいうおっさんにチラシ渡したら、近いうちにぜひ行くみたいなこと言ってたから」
「領主さま? すごいじゃない」
緋美子が瞳を輝かせた時である。
「緋美ねえ、看板つけたぜ」
入り口からスポーツ刈りの太田が顔を出した。
「名前は、ヒバナがチラシに書いてた日の丸学習塾でいいんだろ?」
「ええ。ここなら右翼と間違えられることもないでしょうし」
外に出て、入口の上にかけられた看板を見て、驚いた。
「うは。これは」
日の丸は日の丸でも、それは旭日旗だったからである。
20人ほどは入れる教室が2つと、個別指導用のブースで仕切られた部屋がひとつ。
ちゃんと休憩室もあり、本棚には本もそろっている。
「やるね、あなたたち」
入ってきた俺とヒバナを見るなり、相好をくずして緋美子が言った。
「さっそく申し込みに来たよ。それも10人というか、10匹も」
「10、匹?」
俺はヒバナと顔を見合わせた。
ゴブリンは5匹くらいしかいなかったはずなのに、10匹ってのはどういうことだ?
「ゴブリンが5匹と、コボルトが2匹、それからトロールとスライムが2匹ずつ。なんでもあなたたちに勧誘されたゴブリンの親分が、仲間に声をかけてくれたらしいの」
「あいつ、意外にいいやつだったんだね」
ヒバナが不思議そうに言った。
「『意外に』は、失礼だろ? むちゃいいやつじゃん」
俺はなんだか胸がジーンと熱くなるのを覚えた。
しかし、正直、なんでそこまで気に入られたのか、そこがわからない。
「ゴブリンの親分はね,昔、魔王と戦ったことがあるそうなの。召喚された勇者のしもべとしてね。でも、その時は、ぼこぼこにやられちゃったんだって。それで、思ったらしいの。力では、とうてい魔王にかなわない。何か他の方法を考えないと、って」
「だから、勉強?」
「そう。見かけは怖いけど、とても立派な動機だと思う」
「でも、その後はどうなったんだ? 勇者がやられちゃったんなら、世界はとっくに滅びてるはずじゃ」
「それがね、もうパーティ全滅か、って時に、女神さまが現れて、魔王を封印してくれたんだって」
「女神さま?」
女神といえば、僕らをクラス転移させたあの神様のことだろうか?
しかし、そんなことができるなら、女神のやつ、今回だって何も俺らに頼まず自分で世界を救えばいいものを。
「まあ、とにかく、上々のスタートだね。これもヒバナちゃんと五代君のおかげだよ」
「てへ。そう言ってもらえるとなんか泣けてきちゃう」
ひみこファンのヒバナはもうデレデレ状態だ。
「人間のほうも、たぶん大丈夫だと思う。実はさっき、おっきな町でバビロニアの領主とかいうおっさんにチラシ渡したら、近いうちにぜひ行くみたいなこと言ってたから」
「領主さま? すごいじゃない」
緋美子が瞳を輝かせた時である。
「緋美ねえ、看板つけたぜ」
入り口からスポーツ刈りの太田が顔を出した。
「名前は、ヒバナがチラシに書いてた日の丸学習塾でいいんだろ?」
「ええ。ここなら右翼と間違えられることもないでしょうし」
外に出て、入口の上にかけられた看板を見て、驚いた。
「うは。これは」
日の丸は日の丸でも、それは旭日旗だったからである。
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