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#13 JK世界イデア②
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「じゃ、そろそろ行きましょうか。まずは校長先生にごあいさつね」
「だね。もしかしたら、新たに”女子高生”を呼んだ事情、何かお話ししてくださるかもね」
というわけで、俺たちはイオン・イデア店を出て、聖アユタヤ学園に向かうことになった。
「あ、先に言っとくけど、北側の玄関から出ちゃだめだよ。あっちは大東亜帝国学院エリアだから。やつらに見つかると、面倒なことになっちゃうよ」
フードコートを出るなり、ラビが言った。
耳を立てているのは、周囲を警戒しているからなのか。
「面倒なことって?」
「あっちはね、とにかくさっきみたいな血の気の多いやつばっかだから、エンカウント率が異様に高いの。もう、バトルに次ぐバトル。まあ、早くレベルを上げたいなら、あえて止めはしないけど」
「いえ、遠慮しておきます」
俺はぶるぶる首を横に振った。
「そうねえ。あっち側へ行くのは、もう少し、準備を整えてからのほうがいいかもねえ。イオン周辺はまだいいけれど、うわさによると、大東亜帝国学院の敷地内には、完全なアクティブバトルのエリアまであるそうよ。そんなところに連れ込まれたら、今のあなたならイチコロだわ」
游奈が思案顔でうなずいた。
アクティブバトルということは、さっきのターン制と違い、ゆっくり考えながら戦えないということだ。
現実の戦闘さながらに、ステータスの優劣がそのまま勝敗を決めてしまう。
女子力しか上げていないこの笹原杏里では、游奈の言う通り、おそらく瞬殺されてしまうだろう。
「ポイントの振り方は、学校に戻ってから教えてあげる。その前に、校長をはじめ、みんなにあなたのこと、紹介しなきゃね」
「だねえ。武器屋や防具屋、道具屋はこのイオン内にあるけど、今は営業時間外なんで、明日の放課後つきあってあげるよ」
「あ、ありがとう」
ふたりの親切さには頭が下がった。
このふたり、NPCとは思えないから、たぶん俺と同じように、中身はリアル世界のプレイヤーなのだろうけど、初対面にもかかわらず、なかなか友情に厚い、性格のいい子たちである。
外に出ると、そこは相変わらずの霧だった。
真っ白な空間を、道路だけがまっすぐ伸びている。
「聖アユタヤ学園って、ミッション系なんだよね?」
遠くにかすむ尖塔の黒いシルエットに目をやって、俺はたずねた。
「違うよ。カタカナの名前はみんなカトリック系と思ったら大間違い。アユタヤってのはね、元はと言えば、タイの王朝の名前だよ」
俺の愚問に、ラビがウサギっぽい鼻の頭にしわをよせた。
そうだったのか。
俺はひとりで赤くなった。
世界史とってないから、そんなの知らなかったぜ。
「まあ、だからといって別に仏教系でもないから。一部、タイっぽい所もあるけどね、でも、なんていうのかな。つまりはテキトーなネーミングかと」
俺より頭ひとつ分背の高い游奈が、頭上でふふっと笑いながら、言う。
「だってさ、校長の名前からしてそうだもんね」
「そうそう」
ふたりで顔を見合わせ、くすくす笑い出す。
「え? 校長先生って、どんな名前なの?」
「聞いて驚くな」
「怒んないでね」
「う、うん」
なんでもいいよ、どうせゲームなんだし。
「まるこ・デラックス」
声を潜め、重大な秘密を打ち明けるように、ラビが言った。
「通称、まるこDXね」
「だね。もしかしたら、新たに”女子高生”を呼んだ事情、何かお話ししてくださるかもね」
というわけで、俺たちはイオン・イデア店を出て、聖アユタヤ学園に向かうことになった。
「あ、先に言っとくけど、北側の玄関から出ちゃだめだよ。あっちは大東亜帝国学院エリアだから。やつらに見つかると、面倒なことになっちゃうよ」
フードコートを出るなり、ラビが言った。
耳を立てているのは、周囲を警戒しているからなのか。
「面倒なことって?」
「あっちはね、とにかくさっきみたいな血の気の多いやつばっかだから、エンカウント率が異様に高いの。もう、バトルに次ぐバトル。まあ、早くレベルを上げたいなら、あえて止めはしないけど」
「いえ、遠慮しておきます」
俺はぶるぶる首を横に振った。
「そうねえ。あっち側へ行くのは、もう少し、準備を整えてからのほうがいいかもねえ。イオン周辺はまだいいけれど、うわさによると、大東亜帝国学院の敷地内には、完全なアクティブバトルのエリアまであるそうよ。そんなところに連れ込まれたら、今のあなたならイチコロだわ」
游奈が思案顔でうなずいた。
アクティブバトルということは、さっきのターン制と違い、ゆっくり考えながら戦えないということだ。
現実の戦闘さながらに、ステータスの優劣がそのまま勝敗を決めてしまう。
女子力しか上げていないこの笹原杏里では、游奈の言う通り、おそらく瞬殺されてしまうだろう。
「ポイントの振り方は、学校に戻ってから教えてあげる。その前に、校長をはじめ、みんなにあなたのこと、紹介しなきゃね」
「だねえ。武器屋や防具屋、道具屋はこのイオン内にあるけど、今は営業時間外なんで、明日の放課後つきあってあげるよ」
「あ、ありがとう」
ふたりの親切さには頭が下がった。
このふたり、NPCとは思えないから、たぶん俺と同じように、中身はリアル世界のプレイヤーなのだろうけど、初対面にもかかわらず、なかなか友情に厚い、性格のいい子たちである。
外に出ると、そこは相変わらずの霧だった。
真っ白な空間を、道路だけがまっすぐ伸びている。
「聖アユタヤ学園って、ミッション系なんだよね?」
遠くにかすむ尖塔の黒いシルエットに目をやって、俺はたずねた。
「違うよ。カタカナの名前はみんなカトリック系と思ったら大間違い。アユタヤってのはね、元はと言えば、タイの王朝の名前だよ」
俺の愚問に、ラビがウサギっぽい鼻の頭にしわをよせた。
そうだったのか。
俺はひとりで赤くなった。
世界史とってないから、そんなの知らなかったぜ。
「まあ、だからといって別に仏教系でもないから。一部、タイっぽい所もあるけどね、でも、なんていうのかな。つまりはテキトーなネーミングかと」
俺より頭ひとつ分背の高い游奈が、頭上でふふっと笑いながら、言う。
「だってさ、校長の名前からしてそうだもんね」
「そうそう」
ふたりで顔を見合わせ、くすくす笑い出す。
「え? 校長先生って、どんな名前なの?」
「聞いて驚くな」
「怒んないでね」
「う、うん」
なんでもいいよ、どうせゲームなんだし。
「まるこ・デラックス」
声を潜め、重大な秘密を打ち明けるように、ラビが言った。
「通称、まるこDXね」
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