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終章
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そうして平穏な日々が戻ってきた。
あたし的にいえば、くだらぬスクールライフというやつである。
クラスの男どもは相変わらずバカばっかりだ。
あたしをゴリラを見るような目で見ながらも、いざ視線が合うと目を伏せる。
久保は久保で最近BL漫画にはまってて、推すの推さないのとさわがしい。
その日、図書室でBL漫画を読むと言い張る久保を放っておいて、あたしは珍しくひとりで帰路についた。
門の所で、長身イケメンの黒木一茶と偶然一緒になった。
「ああ、小幡。ちょうどいい、ちょっと来てくれないか。裏山で変なもの見つけたんだが」
「変なもの?」
黒木はクラスの中で唯一まともな男子なので、話しかけられるとこんなあたしでもドキドキしてしまう。
なんだろうと思いながら枯れ葉に覆われた学校裏の里山に登っていくと、登り切ったところに古びた祠があって、その前にあの陰キャの代表ツシマが坐り込んでいた。
「中を見てみろ」
ツシマをどかして黒木が祠の中を上げでしゃくってみせる。
「な、なんだよ」
のぞいてみて、後悔した。
首があった。
切断された、少女の首である。
眼鏡をかけた、真面目そうな少女だった。
中学生だろうか。
切断面が斜めなので、首は少し左に傾いている。
「これ、誰?」
かすれた声であたしは訊いた。
「わからん」
黒木がしかめっ面でかぶりを振った。
「あんたがやったの?」
今度は尻もちをついているツシマに訊くと、
「チ、チガ」
真っ青になって否定した。
「とりあえず、110番しなよ」
栗木にそう告げると、あたしは二人を残し、一足先に山を下りた。
あーあ、と思う。
一難去って、また一難。
世の中、よくもこんなに壊れたものだ。
図書室の入口から中を覗くと、久保がひとり自習室に居座り、茹蛸みたいに顔を赤くしてえっちな漫画を読んでいた。
「おい」
あたしは呼んだ。
「あ、ウタ子ちゃん」
久保が顔を上げ、とろんとした眼であたしを見た。
「また出た」
「へ?」
「出動だ。ぼやぼやすんな、このスク水女」
「へいへい」
こうしてあたしらは、またしても生きた信楽焼タヌキのキンタマの裏を触る羽目に陥ったのだ。
あたし的にいえば、くだらぬスクールライフというやつである。
クラスの男どもは相変わらずバカばっかりだ。
あたしをゴリラを見るような目で見ながらも、いざ視線が合うと目を伏せる。
久保は久保で最近BL漫画にはまってて、推すの推さないのとさわがしい。
その日、図書室でBL漫画を読むと言い張る久保を放っておいて、あたしは珍しくひとりで帰路についた。
門の所で、長身イケメンの黒木一茶と偶然一緒になった。
「ああ、小幡。ちょうどいい、ちょっと来てくれないか。裏山で変なもの見つけたんだが」
「変なもの?」
黒木はクラスの中で唯一まともな男子なので、話しかけられるとこんなあたしでもドキドキしてしまう。
なんだろうと思いながら枯れ葉に覆われた学校裏の里山に登っていくと、登り切ったところに古びた祠があって、その前にあの陰キャの代表ツシマが坐り込んでいた。
「中を見てみろ」
ツシマをどかして黒木が祠の中を上げでしゃくってみせる。
「な、なんだよ」
のぞいてみて、後悔した。
首があった。
切断された、少女の首である。
眼鏡をかけた、真面目そうな少女だった。
中学生だろうか。
切断面が斜めなので、首は少し左に傾いている。
「これ、誰?」
かすれた声であたしは訊いた。
「わからん」
黒木がしかめっ面でかぶりを振った。
「あんたがやったの?」
今度は尻もちをついているツシマに訊くと、
「チ、チガ」
真っ青になって否定した。
「とりあえず、110番しなよ」
栗木にそう告げると、あたしは二人を残し、一足先に山を下りた。
あーあ、と思う。
一難去って、また一難。
世の中、よくもこんなに壊れたものだ。
図書室の入口から中を覗くと、久保がひとり自習室に居座り、茹蛸みたいに顔を赤くしてえっちな漫画を読んでいた。
「おい」
あたしは呼んだ。
「あ、ウタ子ちゃん」
久保が顔を上げ、とろんとした眼であたしを見た。
「また出た」
「へ?」
「出動だ。ぼやぼやすんな、このスク水女」
「へいへい」
こうしてあたしらは、またしても生きた信楽焼タヌキのキンタマの裏を触る羽目に陥ったのだ。
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