52 / 60
51
しおりを挟む
源さんの家を出た頃には、もう夜の8時を回っていた。
街路樹に囲まれた通りには人気も車の行き来もなく、街灯の光の輪の届かないあたりに鬱蒼と茂る森が見える。
あの中にあるのが久保の家で、敷地の半分は神社だ。
久保の父親は民俗学の准教授の傍ら、神社の神主を務めているのである。
いや、もしかすると、神主のほうが本業なのかもしれない。
「ウタ子ちゃん、武者震いが止まらないじゃあ、ありませんか。ぶるるっ、いよいよアバクボコンビの出動ですよ」
自分お家に向かって歩きながら久保が言う。
「てことはやっぱり、チンボクサイの正体、わかってたのか」
「ちょうどさっき高田っちの携帯に相棒の刑事から連絡が来てた。それともう一つ、新たな誘拐拉致事件も発生」
あの時、着信音に気づいた久保が、高田刑事から素早くスマホを取り上げたのだ。
「だから急がないと。のんびりしてる暇はありません」
「ちょい待ち。まさか久保、おまえ今から」
あたしは目を剥いた。
いくらなんでも急すぎる。
ただでさえ遅い時間なのに、母ちゃんに何て言う?
「むろん速攻今から出動です。さあ、うちに寄って準備ですよ、ウタ子ちゃん」
あたしの胸中になどお構いなく、久保が制服の薄い胸を張った。
街路樹に囲まれた通りには人気も車の行き来もなく、街灯の光の輪の届かないあたりに鬱蒼と茂る森が見える。
あの中にあるのが久保の家で、敷地の半分は神社だ。
久保の父親は民俗学の准教授の傍ら、神社の神主を務めているのである。
いや、もしかすると、神主のほうが本業なのかもしれない。
「ウタ子ちゃん、武者震いが止まらないじゃあ、ありませんか。ぶるるっ、いよいよアバクボコンビの出動ですよ」
自分お家に向かって歩きながら久保が言う。
「てことはやっぱり、チンボクサイの正体、わかってたのか」
「ちょうどさっき高田っちの携帯に相棒の刑事から連絡が来てた。それともう一つ、新たな誘拐拉致事件も発生」
あの時、着信音に気づいた久保が、高田刑事から素早くスマホを取り上げたのだ。
「だから急がないと。のんびりしてる暇はありません」
「ちょい待ち。まさか久保、おまえ今から」
あたしは目を剥いた。
いくらなんでも急すぎる。
ただでさえ遅い時間なのに、母ちゃんに何て言う?
「むろん速攻今から出動です。さあ、うちに寄って準備ですよ、ウタ子ちゃん」
あたしの胸中になどお構いなく、久保が制服の薄い胸を張った。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
無限の迷路
葉羽
ミステリー
豪華なパーティーが開催された大邸宅で、一人の招待客が密室の中で死亡して発見される。部屋は内側から完全に施錠されており、窓も塞がれている。調査を進める中、次々と現れる証拠品や証言が事件をますます複雑にしていく。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
女ハッカーのコードネームは @takashi
一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか?
その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。
守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる