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ACT8 帝国の秘密
#8 リコ③
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翌日の朝は、あわただしい物音で目が覚めた。
窓から外を覗くと、前庭にコンテナ車が停まって、荷物を下ろしているところだった。
従業員たちにてきぱきと指示を出しているのは、ジャージの上下に野球帽をかぶったハルである。
リコは、非常時に備え、裸に極小下着をつけただけの姿だ。
ひも水着はゆうべ洗濯機に入れたから、以前グラビア撮影で使った別のセクシー系下着セットである。
この程度の布切れなら、変身解けた後、身体と一緒に再構成されるはずなのだ。
ノックの音がしたので、慌ててその上からコートを羽織ると、顔を出したのはアリアだった。
きょうのアリアは、栗色のふわふわの髪をふたつのお団子にして頭に乗せている。
それがぬいぐるみの耳みたいで、童顔と相まってなんとも可愛らしい。
「いつまで寝てるんですかあ? さ、早く支度しないと。今からおうちの模様替えで、ここは大騒ぎになっちゃいますよ! 業者さんの邪魔にならぬよう、アリアたちはおでかけするのです」
どうやら、きのうイオンで買い込んだハルとアリアの家具だのなんだのが届いたらしい。
「おでかけって、どこへだよ」
寝ぼけまなこで訊くと、アリアが呆れたように目を見開いた。
「やだなあ、リコさまったら、もう忘れちゃったんですかあ? カニバルバーガー食べに行こうって、ゆうべ決めたじゃないですかあ」
「食べるのが目的じゃないだろ? あくまで偵察じゃなかったのか?」
「そんなのどっちでも同じですよぉ。あ、それから、ハルが、面が割れてるから変装してこいって。アリアはほら、この髪型でしょ? で、こう、丸眼鏡をかけて、おひげをつけて、と。じゃーん、これでもう、誰だかわかんなくなりましたあ!」
「わかるだろ? その学ラン見たら」
「えー、でも、この学ラン、今までのとは色違いなんですよぉ! ほうら、グレーでおしゃれじゃないですかあ」
届いた荷物の中から引っ張り出してきたのだろう。
確かに色は違うが、学ランであることには間違いない。
「それに、見てください! 下のお洋服も、ほら、前のは黒できょうは赤。白いレースが可愛いでしょ?」
その”お洋服”も、相変わらずのゴスロリ系だ。
「そんな変な格好してるの、おまえしかいないだろ」
相手にするのも疲れてきたので、リコは着替えることにした。
ハルの言う通り、腸詰帝国の面々に、リコたち3人は顔を知られてしまっている。
変装とまではいかないまでも、多少は身なりを変えていくのが無難というものだろう。
「わあ、リコさまの下着、セクシーなんだあ!」
アリアがはやしたてるのを無視して、白のブラウスに黒のタイトスカートで決めてみた。
これで縁なし眼鏡をかければ、新米の女教師か駆け出しのキャリアウーマンくらいには見えるだろう。
「先行ってな。ちょっくら用足して歯磨いて化粧してくから」
「はあい」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら、アリアが出ていった。
その後ろ姿に、イオが言う。
『不思議な子ですね。どこから見ても、純粋無垢の天真爛漫な少女にしか見えないのに…。きのうリコをイカせたあのテクニックときたら…』
「その話はもうやめろ」
トイレのドアを開け、スカートとビキニパンティを膝まで下ろし、便器に腰かけるとリコは言った。
「たまたま、あの毒のせいで、うちの身体のほうがおかしくなってただけさ。ああ、そういえば、爪で突き刺された傷はどうなった?」
『それは大丈夫です。変身する際、あるいは変身が解ける際には、どうせ身体はいったん分子レベルにまで分解されて再構成されるわけですから、よほどの致命傷でない限り、自然と治ってしまいます。毒の効果も同じです。その意味では、リコ、あなたは不死身に近いのですよ』
窓から外を覗くと、前庭にコンテナ車が停まって、荷物を下ろしているところだった。
従業員たちにてきぱきと指示を出しているのは、ジャージの上下に野球帽をかぶったハルである。
リコは、非常時に備え、裸に極小下着をつけただけの姿だ。
ひも水着はゆうべ洗濯機に入れたから、以前グラビア撮影で使った別のセクシー系下着セットである。
この程度の布切れなら、変身解けた後、身体と一緒に再構成されるはずなのだ。
ノックの音がしたので、慌ててその上からコートを羽織ると、顔を出したのはアリアだった。
きょうのアリアは、栗色のふわふわの髪をふたつのお団子にして頭に乗せている。
それがぬいぐるみの耳みたいで、童顔と相まってなんとも可愛らしい。
「いつまで寝てるんですかあ? さ、早く支度しないと。今からおうちの模様替えで、ここは大騒ぎになっちゃいますよ! 業者さんの邪魔にならぬよう、アリアたちはおでかけするのです」
どうやら、きのうイオンで買い込んだハルとアリアの家具だのなんだのが届いたらしい。
「おでかけって、どこへだよ」
寝ぼけまなこで訊くと、アリアが呆れたように目を見開いた。
「やだなあ、リコさまったら、もう忘れちゃったんですかあ? カニバルバーガー食べに行こうって、ゆうべ決めたじゃないですかあ」
「食べるのが目的じゃないだろ? あくまで偵察じゃなかったのか?」
「そんなのどっちでも同じですよぉ。あ、それから、ハルが、面が割れてるから変装してこいって。アリアはほら、この髪型でしょ? で、こう、丸眼鏡をかけて、おひげをつけて、と。じゃーん、これでもう、誰だかわかんなくなりましたあ!」
「わかるだろ? その学ラン見たら」
「えー、でも、この学ラン、今までのとは色違いなんですよぉ! ほうら、グレーでおしゃれじゃないですかあ」
届いた荷物の中から引っ張り出してきたのだろう。
確かに色は違うが、学ランであることには間違いない。
「それに、見てください! 下のお洋服も、ほら、前のは黒できょうは赤。白いレースが可愛いでしょ?」
その”お洋服”も、相変わらずのゴスロリ系だ。
「そんな変な格好してるの、おまえしかいないだろ」
相手にするのも疲れてきたので、リコは着替えることにした。
ハルの言う通り、腸詰帝国の面々に、リコたち3人は顔を知られてしまっている。
変装とまではいかないまでも、多少は身なりを変えていくのが無難というものだろう。
「わあ、リコさまの下着、セクシーなんだあ!」
アリアがはやしたてるのを無視して、白のブラウスに黒のタイトスカートで決めてみた。
これで縁なし眼鏡をかければ、新米の女教師か駆け出しのキャリアウーマンくらいには見えるだろう。
「先行ってな。ちょっくら用足して歯磨いて化粧してくから」
「はあい」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら、アリアが出ていった。
その後ろ姿に、イオが言う。
『不思議な子ですね。どこから見ても、純粋無垢の天真爛漫な少女にしか見えないのに…。きのうリコをイカせたあのテクニックときたら…』
「その話はもうやめろ」
トイレのドアを開け、スカートとビキニパンティを膝まで下ろし、便器に腰かけるとリコは言った。
「たまたま、あの毒のせいで、うちの身体のほうがおかしくなってただけさ。ああ、そういえば、爪で突き刺された傷はどうなった?」
『それは大丈夫です。変身する際、あるいは変身が解ける際には、どうせ身体はいったん分子レベルにまで分解されて再構成されるわけですから、よほどの致命傷でない限り、自然と治ってしまいます。毒の効果も同じです。その意味では、リコ、あなたは不死身に近いのですよ』
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