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ACT3 共闘

#2 アリア①

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 その少し前。
 アリアは寒風吹きすさぶ廃工場の隅で、倉庫のシャッターに耳を押し当て、必死で中の音を聞き取ろうとしていた。
 宇宙刑事ハルと名乗る謎の女にリコが拉致され、この中に連れ込まれてからすでに1時間近く経っている。
 気になるのは、かすかに聞こえてくる喘ぎ声だ。
 信じられないことに、それはあのリコのものだった。
 リコさま…。
 アリアは気が気ではない。
 私のリコさま、いったいどうしちゃったっていうのだろう?
 颯爽と現れ、純白の美神と化して怪獣を倒し、アリアの命を救ってくれたリコ。
 人間の姿に戻ってからも、リコの姿は痺れるほど神々しかった。
 毅然とした態度。
 精悍な面持ち。
 記憶を持たない今のアリアにとって、リコこそがすべてに思われてならなかったのに…。
 なのに、どうして?
 この声、明らかにあの時の声だ。
 自分にまつわる記憶は、名前以外すっかり欠落しているアリアだったが、生活に必要なそれ以外のことはたいてい覚えている。
 己に性体験があるのかどうかは定かではないものの、女がこのような声をどんな時に出すのか、そのことについての知識はあるようなのだ。
 リコさまが、大変なことになってる…。
 まさか、あのハルって女が…?
 女同士、というケースがあることくらいは、アリアにもわかる。
 なぜなら、すでに自分もリコに強い恋心を抱いているからである。
 それだけに、怒りより嫉妬のほうが強かった。
 ああ、私もリコさまと…。
 妄想がふくらみ、無意識のうちにビスチェの前をはだけ、ブラウスの上から胸を鷲掴みにしていた。
 ブラをずらして乳首に触れると、すでに恥ずかしいほど勃起しているのがわかった。
 くうん。
 私もリコさまに、あんな声を出させてみたいのにい…。
 はあはあ喘ぎながら夢中で乳房をこね回していると、ふいにスカートのポケットの中が熱くなってきた。
 え?
 なに?
 びっくりして手で探る。
 指があの卵型の物体に当たった。
 どうやら熱を発しているのは、これのようだ。
 それだけでなく、心なしか、細かく振動しているような気さえするほどだ。
 その物体を指でつまみ出そうとした、その瞬間である。
 ザザッ。
 思いのほか近くで、砂を踏む音が聞こえた。
「キイッ」
 周囲で一斉に奇声が上がる。
 ハッと顔を上げたアリアは、驚愕で可愛い目を見開いた。
 なに、このひとたち?
 アリア、取り囲まれてる?
「キイッ」
 叫びながら、そのなかのひとりが襲いかかってきた。
 黒い全身タイツに身を包んだ、若い女である。
 全員同じ格好をしていて、背格好も鋳型で抜いたようにそっくりだ。
「きゃあっ!」
 手首をつかまれ、アリアは叫んだ。
「やめてえ! 何するの? いやあ、誰か、いえ、リコさま、助けてえ!」 





 
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