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ACT13 怪獣牧場

#14 ビュンビュン丸①

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 改造人間として生まれ変わって早一年。

 だが、巨大化するのは、これが初めてだった。

 それにしても、いきなりケダモノに襲いかかられるとはー。

「うわっ!」

 背中に爪を立てられ、ビュンビュン丸は前のめりに倒れ込んだ。

 恐怖で全身から冷たい汗が一斉に噴き出すのがわかった。

 だめだ! 殺される! 

 両手で頭を抱え、防御の構えを取った。

 といっても、裸の尻を敵に向けて、プリケツ状態になっただけである。

 が、不思議なことに、いつまで経ってもクァールは襲ってこなかった。

 薄目を開けて様子をうかがうと、少し離れたところを、唸り声を上げながらゆっくり周回しているだけなのだ。

 そうか。

 ビュンビュン丸は悟った。

 原因は、おそらくこの体臭。

 キモ汁ビュンビュン丸なる呼称は伊達ではない。

 ビュンビュン丸の腋臭はハエをも殺し、その毛穴からにじみ出る汗はどんな殺虫剤より有効なのだ。

 嗅覚に優れた猫族の怪獣には、およそ耐え難いものに違いない。

「ふふふ、そうか、そんなに臭いか」

 自信が湧いてきた。

 立ち上がると、クァールのほうに向き直る。

 クァールは長い触角をぴくぴくさせて、突然元気になったビュンビュン丸を警戒しているようだ。

「だったら、これでもくらえ!」

 大地を蹴って、ビュンビュン丸はジャンプした。

「必殺! 腋臭アタあックうう!」

 逃げようとするクァールの触角をつかみ、両の腋の下ではさみこむ。

 グワオウッ!

 クァールが悶絶した。

 思った通りだった。

 この怪物、触角が鼻の役割を果たしているのだ。

 その最も敏感な部分に、世界一臭い腋臭をかがせてやったのである。

 どおおん。

 巨大な猫が横倒しになった。

 ビュンビュン丸の腋臭のあまりの臭さに気絶したらしい。

「アリアを放せ!」

 半裸のアリアを組み敷いたもう一頭に近づくと、ビュンビュン丸は叫んだ。

「でないと、俺様の最終兵器で、きさまの息の根を止めてやる!」
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