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ACT12 腸詰帝国潜入作戦

#37 リコ⑰

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「まあ、それはそれとして」

 ビュンビュン丸が、気まずくなった3人の間を取り持つように、横から口を出した。

「問題は、どうしてここにいきなり怪獣が現れたのかってことですよね。まさか、宙から降って湧いたわけでもないでしょう」

「うちらの行動が、敵に筒抜けって証拠だろうな。たとえばビュンビュン丸、おまえがスパイだったりして」

 切れ長の目でリコが睨むと、ビュンビュン丸の昆虫顔が蒼白になった。

「そんな、滅相もない! リコったら、まだ俺を疑ってるんですか?」

「おまえにその気がなくても、発信機ぐらい身体に取りつけられてる可能性はあるだろう。ここで解剖して調べてみるべきかもしれないな」

 何事もなかったように上体を起こし、ハルが言う。

「や、やめてくださいよ! ハルさんまで! 冗談はよし子さんにしてくださいよ!」

「よし子さん? 誰だ、そいつは」

 宇宙刑事に親父ギャグは通じない。

 それに、ハルは冗談など言わないのだ。

 解剖すると決めたら、本気で解剖するつもりに違いない。

「大ダコならあ、きっとあそこから出てきたんじゃないかと思いますぅ。ほら、プールの中を見てください」

 ビュンビュン丸を救ったのは、無邪気なアリアのひと声だった。

「ん? なんだ、あれは?」

 振り返って、リコは眉をひそめた。

 おっぱいビームのせいでプールの水は全て蒸発してしまっているのだが、その壁に大きな穴が開いているのだ。

「なるほど、そういうことか」

 ハルが眼鏡のフレームを2本の指で持ち上げ、目を細めて穴を見た。

「つまりはあの穴が、腸詰帝国の秘密基地に直結していると、そういうわけなんだな」

「夜まで待たなくてもいいんじゃないか。どうせこっちの動きは読まれてるんだ。だったら、いっそのこと、こっちから攻撃をしかけてみたらどうなんだ?」

 元レディースだけあって、リコは短気である。
 
 昔から待つのは苦手なのだ。

「アリアも賛成です。まごまごしてると、また別の怪獣に襲われる気がします」

 そそくさと水着の上からトレードマークの学ランを羽織りながら、アリアが言った。

「一理ある」

 あっさりとハルがうなずいた。

「ならば、あの穴を逆にたどって、基地に侵入してやろう。ビュンビュン丸が位置情報を敵に流しているとしても、そいつを逆利用するという手もあるしな」

「ですから、そんなことしてませんって!」

 必死で抗弁する改造人間だが、女子3人はまるでガン無視のままである。

「でもその前に、お食事しませんか?」

 とアリア。

「変身したら、おなかすいちゃって」

「同感だ」

 リコもうなずいた。

「次の変身に備えて、うちも栄養補給の必要がありそうだ」

「わかった」

 ハルがポーチからスマホを取り出した。

「ちょうど私もオナニーで小腹がすいたところだ。ここに出前を取ることにしよう。寿司と鰻のどっちがいい? あるいはピザという選択肢もあるが」


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