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ACT12 腸詰帝国潜入作戦

#24 リコ⑧

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 ヘッドギアを頭につけ、椅子に座ったリコの前に、もうひとつの椅子に座り、ハルが向かい合っている。
「では、行くぞ」
 足を組み、眼を閉じると、低い声でハルが言った。
 頭の前のほう、前頭葉でイオが身じろぎしたのがわかった。
『なんや、あんた、ずいぶんべっぴんさんやなあ』
 奇妙な関西弁が頭の中で鳴り響き、リコは驚愕した。
 な、なんだ? 今のは?
 まさか、これが、ハルのAIっていうんじゃないだろうな?
『そのまさかや。わいは銀河帝国潜入捜査課のセラフィムちゅうもんや。以後、お見知りおきを』
『わ、わたしは、エウロパ第3文明所属、未来予測機イオ。破滅の天使から、この太陽系を守るために、リコの身を借りています』
 なんで宇宙から来たAIが関西弁なんだ?
 混乱するリコに輪をかけてイオは戸惑っているようだったが、根が生真面目なたちなのか、しっかり自己紹介から入るところがほほえましい。
『破滅の天使、無の鉄槌の話なら、そこのリコはんから聞いてまっせ。お互い、難儀なこっちゃなあ。わいのほうは、ジラフ探しで大わらわや。一時はアリアが怪しい思うたんやけど、どうやらそれも外れだったみたいでのう。まあ、一緒にがんばっていきましょ』
『は、はあ。こちらこそ、よろしくです』
 通信は、そこで途絶えた。
「これでおしまいか?」
 あきれてリコは訊いた。
 ハルが薄目を開けて、リコを見た。
「そうだ。まずは挨拶からということだ」
「なんで関西弁なんだ?」
「知らない。単にセラフィ―の趣味だろう。それより、おまえのイオは、メスらしいな」
「はあ? AIにも性別があるのか?」
「人格がある以上、そこには自然と性別も備わるはずだ。うちのセラフィーはおっさんだから、つり合いが取れていいかもな」
「なんのつり合いだ?」
「知らん。ただ言ってみただけだ」
「なんだよ、それ」
 付き合い切れないな。宇宙人には。
 肩をすくめて、リコは腰を上げた。
「待て。どこへ行く?」
 ハルが呼び止めてきた。
「出撃にはまだかなり時間があるんだろう? トレーニングだよ。プールで身体を流してくる」
「眠らないのか」
「朝っぱらから眠れるか」
「ならば、私もつき合おう」
 ハルが腰を上げた。
「はあ?」
 あっけにとられるリコ。
「どうせ暇だし、アリアも連れて行こう。そのプールとやらに」
 マジかよ。
 リコは、心の中でため息をついた。
 なぜだか、いやな予感がしてならなかったのだ。


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