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ACT12 腸詰帝国潜入作戦

#20 アリア⑨

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「へ?」
 アリアが頓狂な声を出したのも、無理はない。
 性的遊戯に関しては、アリアは初心者同然だ。
 ましてや男の乳首を吸うなどという行為は、想像したこともないのである。
「アリアが、ですかあ?」
 情けない声を出したが、ハルは明らかに聞いていなかった。
「うーん、こうなると、ベッドよりあれのほうがいいか」
 などと独り言を言い、失神寸前のビュンビュン丸を担ぎ上げると、ベッドの代わりにその下に跳び箱を置いた。
 ハルは華奢な外観からは想像もつかないほどの力持ちだ。
 地球より重力の強い惑星で育ったから、というのが、その理由らしい。
 そんなわけだから、ハルにとって、ビュンビュン丸を肩に担ぎながらのベッドと跳び箱の入れ替えは、造作もない作業であるらしかった。
 でも、なんで跳び箱なの?
 と一時は疑問を抱いたアリアだったが、新たに跳び箱にしばりつけられたビュンビュン丸の格好を見て、はあ、なるほど、と納得した。
 上部の面積の狭い跳び箱の場合、大人の男がその上に寝そべると、どうしても腰だけが上に乗り、上半身と足がへりからはみ出してしまうのである。
 だから被験者は、当然股間のイチモツだけを天に突き上げた姿勢にならざるをえないのだ。
「よし、これでいい」
 満足げにひとりごちると、またぞろペニスをしごき始めたハルが、鋭い視線をアリアに投げた。
「早くしろ。これもおまえのためだ」
 そうまで言われてしまっては、拒絶し続けるわけにもいかなかった。
 鉄の階段を降り、おそるおそる跳び箱に近づくと、アリアは悶えるビュンビュン丸を間近から見下ろした。
 ビュンビュン丸はいわば昆虫タイプの改造人間である。
 テレビの特撮番組の仮面なんとかの劣化版みたいな顔をしている。
 だが、身体はほとんど人間の男のままだった。
 特にたくましくも貧相でもない。
 ちょうどいい筋肉の付き具合といえば、そうである。
 ビュンビュン丸の乳首は、アリアのそれに比べると、色が黒ずんでいて、ひと回り大きかった。
 ぞっとしたのは、両方の乳頭から1本ずつ、それぞれ太い毛が生えていることだ。
 なんでこんなところに毛が?
 キモくてこれじゃ、くわえられないよ。
 仕方なく、アリアはそれを抜くことにした。
 指でつまんで引っ張ると、
「ああああっ」
 ビュンビュン丸があられもない声を張り上げた。
 見ると、アリアの右側で、怒張し、節くれだった太いペニスが天井を指して震えている。
 先に長い針が避雷針のごとく突き刺さり、見るからに痛々しい。
 手が滑り、失敗した。
 もう一度挑戦しようと学ランを腕まくりした時である。
 だしぬけにハルの怒声が飛んできた。
「何してるんだ。服を着たまま、ご奉仕するメイドがどこにいる? アリア、おまえも裸になるんだよ」
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