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ACT12 腸詰帝国潜入作戦
#14 リコ⑤
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タールを流したような黒い海の向こうで、石油化学コンビナートが蛍のような微光を発している。
街灯もない砂浜はほぼ闇に近い状態だったが、MILKYに変身したリコは夜目が効く。
それはブラック・アリアンに変身したアリアも同じらしく、その流れるような動作からして視界に不自由はしていないようだった。
「まずはスピードを見よう。東の岩場まで全力疾走だ」
「まるで体力測定ですね」
アリアが笑って、位置についた。
「いつでもどうぞ」
「よし、じゃ、スタート!」
リコの合図で、アリアがダッシュした。
フレアミニが翻り、疾風が砂浜を駆け抜けた。
Uの字型に砂埃がもどってきたかと思うと、次の瞬間、目の前にメイド服姿のアリアンが立っていた。
「速いな」
リコは内心、舌を巻く思いだった。
なるほど、アリアの変身も伊達じゃなさそうだ。
「次は、腕力だ。そこの大木、あれがちょうどいいだろう。素手で攻撃してみるがいい」
リコは背後の崖を指さした。
崖の根元から、ねじれた松の大木が浜辺のほうに突き出している。
あの太さなら、人間にはまずへし折ることは不可能だ。
「ラジャーです」
アリアンがうなずいた。
体をかがめると、助走もつけず、ジャンプした。
空中で足を伸ばし、松の幹めがけてキックをお見舞いする。
ブーツの踵が軽々とその太い幹をへし折ると、空中で前転して軽やかに大地に降り立った。
頭上に倒れかけてきた松の木を、右によけながら肘打ちで粉々に砕いてしまう。
「破滅の天使との関連性は?」
リコは声をひそめてイオにたずねた。
「アリアがジラフでないにしても、破滅の天使の使者である可能性は捨てきれない」
『不明です。ただ、アリアのエネルギー反応は、これまで探知したどの怪獣反応とも異なります』
「怪獣でないということは、破滅の天使との関連性も薄いということか」
”破滅の天使”とは、エウロパ超古代文明の遺産イオが、2020年に太陽系に到来すると予測した宇宙の絶対悪である。
破滅の天使の襲来から、太陽系を救う戦士を養成する。
それこそが、そもそもイオがリコに寄生した理由なのだ。
『今の段階ではなんとも言えませんが、もしも嫌疑が晴れた場合、ブラック・アリアンがMILKYと共闘してくれるというのは心強いですね』
「そうだな。うちもそう思う」
そこにアリアの声が飛んできた。
「どうですかあ? これで合格ですかあ?」
「もうひとつ、最後に」
リコは声を張り上げると、アリアに注文をつけた。
「何か必殺技を見せてくれないか。武器でもビームでも何でもいい。スーパーヒーローなら、何かとどめの一撃を持ってるはずだろう?」
街灯もない砂浜はほぼ闇に近い状態だったが、MILKYに変身したリコは夜目が効く。
それはブラック・アリアンに変身したアリアも同じらしく、その流れるような動作からして視界に不自由はしていないようだった。
「まずはスピードを見よう。東の岩場まで全力疾走だ」
「まるで体力測定ですね」
アリアが笑って、位置についた。
「いつでもどうぞ」
「よし、じゃ、スタート!」
リコの合図で、アリアがダッシュした。
フレアミニが翻り、疾風が砂浜を駆け抜けた。
Uの字型に砂埃がもどってきたかと思うと、次の瞬間、目の前にメイド服姿のアリアンが立っていた。
「速いな」
リコは内心、舌を巻く思いだった。
なるほど、アリアの変身も伊達じゃなさそうだ。
「次は、腕力だ。そこの大木、あれがちょうどいいだろう。素手で攻撃してみるがいい」
リコは背後の崖を指さした。
崖の根元から、ねじれた松の大木が浜辺のほうに突き出している。
あの太さなら、人間にはまずへし折ることは不可能だ。
「ラジャーです」
アリアンがうなずいた。
体をかがめると、助走もつけず、ジャンプした。
空中で足を伸ばし、松の幹めがけてキックをお見舞いする。
ブーツの踵が軽々とその太い幹をへし折ると、空中で前転して軽やかに大地に降り立った。
頭上に倒れかけてきた松の木を、右によけながら肘打ちで粉々に砕いてしまう。
「破滅の天使との関連性は?」
リコは声をひそめてイオにたずねた。
「アリアがジラフでないにしても、破滅の天使の使者である可能性は捨てきれない」
『不明です。ただ、アリアのエネルギー反応は、これまで探知したどの怪獣反応とも異なります』
「怪獣でないということは、破滅の天使との関連性も薄いということか」
”破滅の天使”とは、エウロパ超古代文明の遺産イオが、2020年に太陽系に到来すると予測した宇宙の絶対悪である。
破滅の天使の襲来から、太陽系を救う戦士を養成する。
それこそが、そもそもイオがリコに寄生した理由なのだ。
『今の段階ではなんとも言えませんが、もしも嫌疑が晴れた場合、ブラック・アリアンがMILKYと共闘してくれるというのは心強いですね』
「そうだな。うちもそう思う」
そこにアリアの声が飛んできた。
「どうですかあ? これで合格ですかあ?」
「もうひとつ、最後に」
リコは声を張り上げると、アリアに注文をつけた。
「何か必殺技を見せてくれないか。武器でもビームでも何でもいい。スーパーヒーローなら、何かとどめの一撃を持ってるはずだろう?」
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