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ACT11 捕虜

#10 アリア⑦

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 ひっ。
 アリアは両手で丸く開いた口を押さえた。
 ローターを飲み込んだ珍子の股間が、光り始めている。
 ひくひくうごめく穴の奥から、まばゆいほどの光芒があふれてくる。
 それに伴い、身体がぐずぐずと変形し始めた。
 ぶちっ。
 ぶちっ。
 ロープがちぎれ、跳ね飛んだ。
 アリアの前に仁王立ちになった珍子の身体は、すでにあの未成熟な少女のものではなかった。
 表皮が硬化して、胸から肩を覆うアーマー状の装甲に変化している。
 腰の周りにひれ状の皮膚が伸び、一見すると巻きスカートみたいな形状を呈していた。
「MILKY…」
 一歩下がって、アリアはうめいた。
 目の前にそびえ立っているのは、いわば質の悪いMILKYのコピーだった。
 外見は似ているが、MILKYの持つ神々しいまでの美しさはない。
 肉でMILKYのアーマーを擬態した、見るもおそましい生き物である。
 変身した珍子は、ひと回りもふた回りも大きくなっている。
 ぐわあっ!
 ひと声わめくと、水平に薙ぎ払った右腕で、近くに居たハルを無造作に跳ね飛ばした。
 そのまま、拘束されたビュンビュン丸に向き直る。
「珍子…? ど、どうしたんだ、おまえ…その恰好?」
 呆気にとられ、あんぐりと口を開けるビュンビュン丸。
 と、珍子がやにわにその怒張したペニスをつかんだ。
 剃刀のような指の爪でロープを断ち切り、尿道に突き刺さった爪楊枝を抜いた。
「がふっ! ぬわあああああっ!」
 ビュンビュン丸が絶叫した。
 スペルマが限界までたまり、ビール瓶状に膨れ上がっていたペニス。
 その拘束が解かれ、栓が外されたのである。
 怒涛のように噴き出る乳白色の液体が、天井にぶつかって四散した。
 大粒の雨と化して落ちてくる大量のスペルマが、変身した珍子の全身にふりかかった。
 口を大きく開け、降り注ぐ熱いエキスを飲み干す珍子。
 疑似アーマーから突き出た乳首を狂ったように揉みしだき、恍惚とした表情でスペルマを飲んでいる。
「なんだ? 何が起こったんだ_」
 場外からリングに這い上ってくると、ハルが訊いてきた。
「わ、わかりません」
 アリアはとぼけた。
 まさか、自分がローターを使ったからああなっただなんて、言えやしない。
「まるでMILKYの劣化コピーだな。あの女に、あんな能力があったとは」
 そうかな?
 とアリアは思う。
「珍子、どうしちゃったんだ…?」
 スペルマを全弾撃ち尽くし、虫の息になったビュンビュン丸は、そんな言葉をうわ言のようにつぶやいている。
 てことは、これは恋人のビュンビュン丸すら知らない力。
 つまり、あのローターによって覚醒されたものに違いない。
「こうなったら、仕方がない」
 ハルがリコのほうを振り向いた。
 リコは身の危険を感じてか、リング際まで下がっているところだった。
 そのリコに向かって、ハルが命令した。
「リコ、変身して、本物のMILKYの雄姿を見せてやれ」




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