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「あたしじゃないよ」
叫ぶように、美咲が言った。
「あたしは誰にも言ってない。信じて、鈴」
歪んだ顔には、必死の表情が浮かんでいる。
どうやら嘘ではないようだ。
だったら、誰が・・・。
考え込んでいる場合ではなかった。
もうすぐ朝のHRの時間だ。
先生にあんなもの見られたら・・・。
スカートの裾を翻し、通路を走った。
白板消しをつかむと、懸命に落書きを消しにかかった。
背中にクラスメイトたちの視線が突き刺さる。
「大人しい顔して、やりまくってるだなんてさ」
「その相手が実の親だなんて、エンコーよりたちが悪いよね」
「親とやるだなんて、きもーい。信じられない!」
違う!
違うんだよ!
死に物狂いで手を動かしながら、心の中で鈴は叫んだ。
私はただ、パパに喜んでもらいたかっただけ!
パパも言ってた。
鈴とパパは愛し合ってるから、これは虐待や”同意のない性交”とは違うんだって。
愛し合ってる者同士が、相手を気持ちよくさせるのは、むしろ当然の行為なんだって・・・。
なんとか間に合った。
先生がやってきて、出席を取り、短い連絡事項の後、授業が始まった。
授業中も、針のむしろの上に座らされているような居心地の悪さに、めまいがしそうだった。
それでもなんとか、午前中をしのいだ。
昼休みのチャイムが鳴り終わるや否や、鈴は教室を飛び出し、校舎裏に避難した。
放課はトイレはに隠れて難を避けたが、時間の長い昼休みは危険だった。
隠れた個室を特定されたら、どんな悪戯をされるかわからないからだ。
校舎裏には、長屋のような運動部の部室と焼却炉が並んでいる。
フェンスの向こうは人通りのない公道である。
フェンスにもたれて息を整えていると、ふいにいちばん手前の部室のドアが開いた。
耳障りな笑い声とともに現れたのは、上級生の男子3人だ。
3人とも、カッターシャツの裾をズボンから出し、前をはだけて派手な色のTシャツを見せびらかしている。
少年たちの方からは、かすかに煙草の臭いが漂ってくる。
鈴は視線を逸らした。
明らかにまともな生徒ではなさそうだ。
腋の下を冷たい汗が伝うのがわかった。
嫌な予感に駆られ、踵を返そうとした時である。
3人組の真ん中の、ひと際背の高い少年が鈴のほうを見た。
「あれ、あいつ、どっかで見たことがあるな」
「もしかして、葵鈴じゃね?」
向かって右側の、軽薄そうなニキビ面が言う。
「インスタに上がってたっていう、あのビッチですよ」
「面白い」
にたっと笑ったのは、向かって左側に立つ前髪の長いイケメンだ。
整った顔に、酷薄な笑みを浮かべている。
「親父とやりまくってるっていう、2年生の近親相姦女だな」
「ほう、そうなのか。けど、よく見ると、なかなか可愛い顔してるじゃねえか。中2にしては躰のラインもけっこうエロっぽい」
前髪を逆立てたリーダー格の少年が、とたんに好色そうな顔つきになる。
「おまえさ」
逃げる暇もなく、呼び止められた。
「親父とやれるなら、誰とでもOKってことなんだよな」
囲まれて、壁際に追い詰められた。
「そ、そんな」
長身の少年に、両手首をつかまれた。
「ならさ、当然、俺たちにもさせてくれるってことだよな? おまえ、淫乱なんだからさ」
叫ぶように、美咲が言った。
「あたしは誰にも言ってない。信じて、鈴」
歪んだ顔には、必死の表情が浮かんでいる。
どうやら嘘ではないようだ。
だったら、誰が・・・。
考え込んでいる場合ではなかった。
もうすぐ朝のHRの時間だ。
先生にあんなもの見られたら・・・。
スカートの裾を翻し、通路を走った。
白板消しをつかむと、懸命に落書きを消しにかかった。
背中にクラスメイトたちの視線が突き刺さる。
「大人しい顔して、やりまくってるだなんてさ」
「その相手が実の親だなんて、エンコーよりたちが悪いよね」
「親とやるだなんて、きもーい。信じられない!」
違う!
違うんだよ!
死に物狂いで手を動かしながら、心の中で鈴は叫んだ。
私はただ、パパに喜んでもらいたかっただけ!
パパも言ってた。
鈴とパパは愛し合ってるから、これは虐待や”同意のない性交”とは違うんだって。
愛し合ってる者同士が、相手を気持ちよくさせるのは、むしろ当然の行為なんだって・・・。
なんとか間に合った。
先生がやってきて、出席を取り、短い連絡事項の後、授業が始まった。
授業中も、針のむしろの上に座らされているような居心地の悪さに、めまいがしそうだった。
それでもなんとか、午前中をしのいだ。
昼休みのチャイムが鳴り終わるや否や、鈴は教室を飛び出し、校舎裏に避難した。
放課はトイレはに隠れて難を避けたが、時間の長い昼休みは危険だった。
隠れた個室を特定されたら、どんな悪戯をされるかわからないからだ。
校舎裏には、長屋のような運動部の部室と焼却炉が並んでいる。
フェンスの向こうは人通りのない公道である。
フェンスにもたれて息を整えていると、ふいにいちばん手前の部室のドアが開いた。
耳障りな笑い声とともに現れたのは、上級生の男子3人だ。
3人とも、カッターシャツの裾をズボンから出し、前をはだけて派手な色のTシャツを見せびらかしている。
少年たちの方からは、かすかに煙草の臭いが漂ってくる。
鈴は視線を逸らした。
明らかにまともな生徒ではなさそうだ。
腋の下を冷たい汗が伝うのがわかった。
嫌な予感に駆られ、踵を返そうとした時である。
3人組の真ん中の、ひと際背の高い少年が鈴のほうを見た。
「あれ、あいつ、どっかで見たことがあるな」
「もしかして、葵鈴じゃね?」
向かって右側の、軽薄そうなニキビ面が言う。
「インスタに上がってたっていう、あのビッチですよ」
「面白い」
にたっと笑ったのは、向かって左側に立つ前髪の長いイケメンだ。
整った顔に、酷薄な笑みを浮かべている。
「親父とやりまくってるっていう、2年生の近親相姦女だな」
「ほう、そうなのか。けど、よく見ると、なかなか可愛い顔してるじゃねえか。中2にしては躰のラインもけっこうエロっぽい」
前髪を逆立てたリーダー格の少年が、とたんに好色そうな顔つきになる。
「おまえさ」
逃げる暇もなく、呼び止められた。
「親父とやれるなら、誰とでもOKってことなんだよな」
囲まれて、壁際に追い詰められた。
「そ、そんな」
長身の少年に、両手首をつかまれた。
「ならさ、当然、俺たちにもさせてくれるってことだよな? おまえ、淫乱なんだからさ」
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