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#29 偶像破壊
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いつのまにすり替わったのか。
”それ”はもはや、涼子であって、涼子ではなかった。
「闇属性の宝玉を身に着ければ、おまえの属性も闇になる。つまり、同じ属性の私は感知できなくなるってこと」
マナの両腕を後ろにねじりあげながら、元涼子だった”もの”が嗤った。
鼻筋の通った西洋人風の風貌に、血を吸ったみたいな赤い唇。
顔の面積の半分近くを占める双眸は、虹彩が黄金色で、中心にルビーを埋め込んだような真紅の点がある。
それは間違いなく、ショッピングモールの屋根の隙間から僕らを見下ろしていたあの”顔”と同一のものだった。
美しさと邪悪を併せ持つ、この世のものならぬ顔。
マナが”リカ”と呼んで畏れたあの存在だ。
ギリギリギリ・・・。
マナの身体が軋み、たわんだ上半身が前に突き出されていく。
そのたわみに耐えかねて、胸を隠した小さなブラジャーがぷつんと音を立てて弾け飛んだ。
その下から、こんもりと隆起したおわん型の乳房と、つんと上を向いた蕾のような乳首が露わになる。
「おまえは邪魔なんだよ。異端者は、我らの世界に必要ない。だからここで死んでもらうよ。いいね?」
マナの両手首を右手で掴み、両足首を左手でひと掴みにすると、”涼子だったもの”がマナを頭上に持ち上げた。
恐るべき怪力だった。
天井近くで水平になったマナの裸体が、ぎしぎしと湾曲していく。
頭を反らせたマナの顔には、苦しげな表情が刻み込まれている。
眉間にしわを寄せ、硬くまぶたを閉じ、半ば開いた口からはピンク色の舌の先がのぞいていた。
「我らと同じ、穢れの塊のくせに光を夢見る異端者など、こうしてくれるわ!」
リカが口を開けた。
上品な唇が見る間に耳まで裂けていき、顏が上下にぱっくり開く。
蝶番で辛うじてつながったような巨大な上顎と下顎の間には、人食い鮫のような牙がびっしりと植わっている。
その間に、パンティ一枚にされたマナのしなやかな裸体が挟まれた。
「やめろ!」
叫んだ時には、すべてが終わっていた。
ギロチンのようなリカの上顎が閉じ、鮮血が天井まで噴き上がった。
リカが獰猛な肉食獣のようにに首を振ると、ふたつにちぎれたマナの肉体が臓物を撒き散らして床に落ちた。
くちゃくちゃと口の中に残った肉片を咀嚼するリカ。
「ずいぶん、有機化が進んでいたようね」
マナの身体の一部を喉を鳴らして嚥下すると、手の甲で口に付着した鮮血を拭いながら、リカが言った。
「ふふふ、残念だったわね、マナ。そのままこの世界で静かに暮らしていれば、もう少しで人間になれたかもしれなかったのに」
”それ”はもはや、涼子であって、涼子ではなかった。
「闇属性の宝玉を身に着ければ、おまえの属性も闇になる。つまり、同じ属性の私は感知できなくなるってこと」
マナの両腕を後ろにねじりあげながら、元涼子だった”もの”が嗤った。
鼻筋の通った西洋人風の風貌に、血を吸ったみたいな赤い唇。
顔の面積の半分近くを占める双眸は、虹彩が黄金色で、中心にルビーを埋め込んだような真紅の点がある。
それは間違いなく、ショッピングモールの屋根の隙間から僕らを見下ろしていたあの”顔”と同一のものだった。
美しさと邪悪を併せ持つ、この世のものならぬ顔。
マナが”リカ”と呼んで畏れたあの存在だ。
ギリギリギリ・・・。
マナの身体が軋み、たわんだ上半身が前に突き出されていく。
そのたわみに耐えかねて、胸を隠した小さなブラジャーがぷつんと音を立てて弾け飛んだ。
その下から、こんもりと隆起したおわん型の乳房と、つんと上を向いた蕾のような乳首が露わになる。
「おまえは邪魔なんだよ。異端者は、我らの世界に必要ない。だからここで死んでもらうよ。いいね?」
マナの両手首を右手で掴み、両足首を左手でひと掴みにすると、”涼子だったもの”がマナを頭上に持ち上げた。
恐るべき怪力だった。
天井近くで水平になったマナの裸体が、ぎしぎしと湾曲していく。
頭を反らせたマナの顔には、苦しげな表情が刻み込まれている。
眉間にしわを寄せ、硬くまぶたを閉じ、半ば開いた口からはピンク色の舌の先がのぞいていた。
「我らと同じ、穢れの塊のくせに光を夢見る異端者など、こうしてくれるわ!」
リカが口を開けた。
上品な唇が見る間に耳まで裂けていき、顏が上下にぱっくり開く。
蝶番で辛うじてつながったような巨大な上顎と下顎の間には、人食い鮫のような牙がびっしりと植わっている。
その間に、パンティ一枚にされたマナのしなやかな裸体が挟まれた。
「やめろ!」
叫んだ時には、すべてが終わっていた。
ギロチンのようなリカの上顎が閉じ、鮮血が天井まで噴き上がった。
リカが獰猛な肉食獣のようにに首を振ると、ふたつにちぎれたマナの肉体が臓物を撒き散らして床に落ちた。
くちゃくちゃと口の中に残った肉片を咀嚼するリカ。
「ずいぶん、有機化が進んでいたようね」
マナの身体の一部を喉を鳴らして嚥下すると、手の甲で口に付着した鮮血を拭いながら、リカが言った。
「ふふふ、残念だったわね、マナ。そのままこの世界で静かに暮らしていれば、もう少しで人間になれたかもしれなかったのに」
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