超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

文字の大きさ
446 / 625

#422話 探し物④

しおりを挟む
 真由が次に現れたのは、その日の夜のことだ。
 今度の出現場所は、カップラーメンの容器の中。
 上からのぞくと、丸いカップラーメンの容器に、少女の顔がすっぽりはまり込んで見える。
 それにしても、なぜいつも食べ物の中に現れるのか、よくわからない。
「落ち着くのよね。こういう入れ物の中って」
 開口一番、真由は俺を見上げてしみじみとした口調でつぶやいた。
 落ち着くのはいいけど、これじゃまた俺は夜食を食い逃してしまうじゃないか。
「じゃ、捜査状況の説明、するね」
 可愛らしい鼻をくんくんさせてラーメンの臭いを嗅いだ後、真由が声のトーンを変えて切り出した。
「殺害現場は、旧校舎の1階女子トイレ。私の死亡推定時刻は、きのうの午後5時12分。死因は鋭利な刃物による心臓の損傷。背後からのひと突きが致命傷だったと考えられるが、犯人が持ち去ったとみえ、凶器は発見されていない。でもって、今のところ、容疑者はなし。5時過ぎといえば部活の終わる時間だけど、だいたい旧校舎なんて、誰も近づかないからね。あ、待ってて。今、犯行現場の画像、貼るから」
「貼るってどこに?」
「決まってるでしょ。あなたの頭の中よ」
 とたんに、視界から俺の部屋が消え、閑散とした風景が目の前に浮かび上がった。
 埃っぽい廊下である。
 窓から斜めに夕日が差し込んでいて、床に斑の模様を形づくっている。
 その光から少し離れた隅のほうに、壊れた人形のようなものが転がっていた。
 手足を不自然な角度で投げ出した、全裸の少女の死体である。
 が、全裸といっても、胸のあたりがペンキでも塗ったように真っ赤に染まっている。
「ひどいでしょ」
 憮然とした口調で、真由が言った。
「まだ17年しか生きていないのに、私、死んじゃったんだよ」
 確かにそれは、正視に耐えない眺めだった。
 女の子の裸をじかに見るのはこれが初めての経験だが、とても性的興奮を覚えるような類いのものではない。
 ただただ痛々しいだけだ。
「今、画像をズームするから、手掛かりがないか、よく見てね」
「俺が見たって無駄じゃね? どうせ鑑識がしらみつぶしに調べた後なんだろ?」
 および腰で反論したが、遅かった。
 望遠レンズのピントを調整したように、真由の死体がぐんとアップになる。
「わ、や、やめろよ。俺、そういう趣味ないんだから」
「そういう趣味ってなに?」
「だから、覗きとかそういうのだよ」
「私だって、恥を忍んで裸見せてるんだから、もう少し真面目に調べてよ」
「んなこと言ったって…」
 そんな会話をかわした時である。
 ふとあるものが眼に留まり、俺は「ん?」と声を上げた。
 なんか見覚えがある。
 あれって、ひょっとして…。
「君の死体の頭からちょっと離れた床、そこをズームアップしてくれないか」
「なにか見つけたの?」
 真由の声が弾んだ。
「まあね。ほら、あの紙屑。あれにフォーカスして」
「紙屑?」
 小指の先ほどの紙屑が、丸まって転がっている。
 端がめくれ、中に何か描いてあるのが見えた。
 マジか。
 俺はうめいた。
 こんなのありかよ。
「どうしたの?」
 黙り込んだ俺に、真由が訊く。
「参ったなあ」
 俺はうんざりした気分で、頭をかいた。
「あのさ、信じられないかもしれないけど、俺、犯人、わかっちゃったよ」  
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...