超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

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#408話 闇バイト(後編)

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 男はすぐ近くみたいなことを言ってた気がするのに、着いたのは県もはずれのかなり辺鄙な農村地帯だった。
 刈り取りの終わったばかりの田んぼが延々と続く中を更に30分ほど走ると、横長の平屋の建物が見えてきた。
「あれだ」
「牛舎ですか?」
「牛じゃなくて、どちらかと言えば豚だな」
 どちらかと言えば?
 なんだかひっかかる言い方だった。
 小男が先に立って建物に向かっていく。
 あわてて後を追うと、木製の扉が開いて、ひょろりとした体格の顔色の悪い男が姿を現した。
 この人が、ここの農場主だろうか。 
 男は農場主と書類のやりとりを始めると、肩越しに僕に向かって命令した。
「ブツを全部下ろして、中に運ぶんだ」
 誰も手伝ってくれないのか。
 人気のない農場を見渡して、僕はため息をついた。
 軽トラの荷台に乗せたポリバケツは、1個1個がめちゃくちゃ重いのだ。
 が。
 考えてみれば、しかたのないことだった。
 僕は今のところ、あれを荷台に積みこんだ作業以外、仕事らしい仕事を何もしていないのだ。
 観念して荷台によじ登り、ポリバケツの一つを抱え込む。
 まずは最後部までずらしていき、隔壁を倒して一度地面に降り、両手を伸ばして抱え直す。
 腰に力を溜め、気合とともに抱え下ろした瞬間だった。
 ふいに蓋がずれてすさまじい悪臭が鼻孔を直撃し、僕はあっと叫んでポリバケツを足元に落っことしてしまった。
「うわ」
 バケツの中を見た途端、変な声が出た。
「な、なんだ、これ?」
 中に詰まっているのは、ぐにゅぐにゅに絡まった何かの肉のようなものである。
 更に不気味なのは、その隙間から人間の胎児みたいなものが顔をのぞかせていることだ。
 病院の産廃って、もしや…。
「別に驚くことはないだろう。それは堕胎した胎児やはがれた胎盤の残骸だ。あの病院には産婦人科もあるからな」
 突っ立たまま動けないでいると、いつのまにかそばに来ていた男が言った。
「こ、こんなもの、どうするんですか?」
 おそるおそる訊くと、あっけないほどはっきりと男は答えた。
「餌にするのさ」
「え、餌?」
「いいから、早く持ってこい」
「は、はい」
 吐きそうになりながらも、なんとか一つ目を建物の中に運び込んだ。
 扉を入ると、左手が事務所で右手が牛舎のようなつくりのスペースになっていた。
「あっちへ」
 長身でやせた農場主が、踏切の信号機みたいに右手でその空間を指し示す。
「は、はあ」
 バケツの取っ手を握り、よたよたと中に歩み入ると、細かく仕切られた仕切りの内部が見えてきた。
 ぶうぶう。
 ぶうぶう。
 桶に顔を突っ込んでいた裸の生き物が顔を上げ、僕を見る。
 瞬間、背筋を悪寒が走った。
 子豚の身体をしたそいつは、明らかに人間の顔をしていたからである。

 
 
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