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#391話 ケチャップ
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朝、朝食の目玉焼きを食べようとして、気づいた。
冷蔵庫に、ケチャップがない。
「ママ、ケチャップ知らない?」
「そこにあるでしょ」
「見当たらないんだけど」
「うそ。この前買ったばかりだよ」
二人して冷蔵庫の中を探し回ったが、どこにもあの赤茶色のビニール容器の姿はない。
「お兄ちゃんが持ってったんじゃない?」
しばらくして、母が言い出した。
「たまにケチャップやマヨネーズの位置が変わってることがあるから、お兄ちゃんがこっそり使ってると思うの」
「よく真夜中にごそごそしてるしね」
私の兄はいわゆる引きこもりというやつである。
中学2年生の時、部屋から出てこなくなって、もう5年以上になる。
「今はまだ寝てると思うけど、聞いてみたら?」
「うん、わかった」
うなずいて、二階への階段を上がった。
上がるとすぐ目の前が兄の部屋のドアだ。
声をかけると不機嫌になるので、正直気が進まなかったが、背に腹は代えられない。
「兄ちゃん、いる?」
居るに決まってるけど、挨拶がわりに、言ってみる。
返事はない。
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
しびれを切らしてドアノブをつまむと、信じられないことに、内鍵はかかっていなかった。
「わ」
中をひと目見るなり、私は絶句した。
ベッドに兄がうつ伏せに倒れている。
くの字になって、お尻を突き上げたその姿は、まるで尺取虫だ。
奇妙なのは、兄が下半身裸であることだった。
どうしてか、あばただらけのお尻が丸出しで、しかも、血みたいな赤い液体で真っ赤に染まっている。
そして、更に奇怪なことに…。
「きゃあああっ!」
それに気づくなり、私はあらん限りの大声で絶叫していた。
ふたつに割れた汚い尻。
その隙間から覗く兄の肛門に突き刺さっているのは、探していたケチャップのビニール容器だったからだ。
冷蔵庫に、ケチャップがない。
「ママ、ケチャップ知らない?」
「そこにあるでしょ」
「見当たらないんだけど」
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「お兄ちゃんが持ってったんじゃない?」
しばらくして、母が言い出した。
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中学2年生の時、部屋から出てこなくなって、もう5年以上になる。
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「兄ちゃん、いる?」
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返事はない。
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「わ」
中をひと目見るなり、私は絶句した。
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「きゃあああっ!」
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