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#350話 施餓鬼会⑮
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バランスを失って前のめりに倒れ込んだ私は、裸の亜季を組み伏せる形になった。
手の下に弾力のある火照った肌を感じると、頭の中がフラッシュを炊いたように白熱化した。
抱きしめ、濡れた裸体に下半身を擦りつけながら、胸に顔を埋めて、お椀型の隆起を舐めた。
狂おしくジャージの下をずらし、怒張した物を取り出そうとしたその時、
「何するの?」
妙に冷静な声で、亜季が言った。
「いいの、こんなことして」
「え?」
フィルムが巻き戻るように理性が戻ってきた。
「ご、ごめん」
私は飛び起きると、亜季から離れた。
狭い脱衣所の裸電球の灯の下、亜季が裸の胸を右手で隠してゆっくり身体を起こした。
自分の取った行動が、信じられなかった。
「そ、そんなつもりじゃ…」
と、私の言い訳を断ち切るように、亜季が言った。
「動画、撮ったから」
亜季の目がちらと動いた先に脱衣かごがあり、こちらに向けてスマートフォンが立てかけられている。
「部屋に帰って、寝ちゃいなよ」
裸の少女は、ジャージのズボンを引きずり上げる私を、ただ冷ややかに眺めている。
「これ以上、うちらにかかわらないで。でないと…。わかるよね?」
「す、すまない」
頭を下げると、逃げるように脱衣所を出た。
いわんこっちゃない!
頭の隅で、もう一人の私が金切り声を上げた。
あれは罠だ!
おまえは嵌められたんだよ!
あいつは前から、おまえの下衆な下心に気づいていて、それを利用したんだ!
言われるまでもなかった。
亜季は勇樹を守ろうとしているのだ。
しかも、こんな、およそ子供らしくない手段を駆使してまで…。
しかし、逆に言えば、私は真相に近づいているということになりはしないだろうか。
おかしくなった勇樹。
そして、その正体。
だが、亜季はなぜ、ここまでして、弟の正体を隠そうとするのか…。
そこが、わからない。
が、罠にかかってしまった以上、どの道もう、後の祭りだった。
あの動画で、彼女は確実に私の首根っこを押さえこんでしまったのだ。
50代で独身とはいえ、一応、社会人としての地位はある。
あの動画が拡散されれば、私は間違いなく、社会から追放されるだろう。
手のひらに、燃えるように熱い亜季の肌の感触が生々しく残っていた。
夢中で吸った固い蕾の感触を思い出すと、ただそれだけで再び股間が硬直し始め、私は動揺した。
こんなことになっても、まだ…。
歳に似合わぬ旺盛な性欲に、我ながらげんなりする気分だった。
夢遊病者のような足取りで庭を歩いていると、射るような視線を感じた。
誰かに、見られている。
しかも、これは、一人の視線じゃない…。
こうべをめぐらすと、生垣の向こうに、黒々と広がる夜空を背景にして、トウモロコシの列が見えた。
子供の背丈ほどもあるトウモロコシの間に、蛍のように光る眼があった。
ザザッ。
葉ずれの音とともに、影が動いた。
節くれだった長い脚が交差し、球形の塊が畑の中を遠ざかっていく。
頭上でも音がしたので見上げると、家を囲んだ木々の枝の間を大きな猫ほどもある黒い影が渡っていくところだった。
いやな汗が背筋を伝って落ちた。
今になって思う。
私は、監視されていたのだ…。
手の下に弾力のある火照った肌を感じると、頭の中がフラッシュを炊いたように白熱化した。
抱きしめ、濡れた裸体に下半身を擦りつけながら、胸に顔を埋めて、お椀型の隆起を舐めた。
狂おしくジャージの下をずらし、怒張した物を取り出そうとしたその時、
「何するの?」
妙に冷静な声で、亜季が言った。
「いいの、こんなことして」
「え?」
フィルムが巻き戻るように理性が戻ってきた。
「ご、ごめん」
私は飛び起きると、亜季から離れた。
狭い脱衣所の裸電球の灯の下、亜季が裸の胸を右手で隠してゆっくり身体を起こした。
自分の取った行動が、信じられなかった。
「そ、そんなつもりじゃ…」
と、私の言い訳を断ち切るように、亜季が言った。
「動画、撮ったから」
亜季の目がちらと動いた先に脱衣かごがあり、こちらに向けてスマートフォンが立てかけられている。
「部屋に帰って、寝ちゃいなよ」
裸の少女は、ジャージのズボンを引きずり上げる私を、ただ冷ややかに眺めている。
「これ以上、うちらにかかわらないで。でないと…。わかるよね?」
「す、すまない」
頭を下げると、逃げるように脱衣所を出た。
いわんこっちゃない!
頭の隅で、もう一人の私が金切り声を上げた。
あれは罠だ!
おまえは嵌められたんだよ!
あいつは前から、おまえの下衆な下心に気づいていて、それを利用したんだ!
言われるまでもなかった。
亜季は勇樹を守ろうとしているのだ。
しかも、こんな、およそ子供らしくない手段を駆使してまで…。
しかし、逆に言えば、私は真相に近づいているということになりはしないだろうか。
おかしくなった勇樹。
そして、その正体。
だが、亜季はなぜ、ここまでして、弟の正体を隠そうとするのか…。
そこが、わからない。
が、罠にかかってしまった以上、どの道もう、後の祭りだった。
あの動画で、彼女は確実に私の首根っこを押さえこんでしまったのだ。
50代で独身とはいえ、一応、社会人としての地位はある。
あの動画が拡散されれば、私は間違いなく、社会から追放されるだろう。
手のひらに、燃えるように熱い亜季の肌の感触が生々しく残っていた。
夢中で吸った固い蕾の感触を思い出すと、ただそれだけで再び股間が硬直し始め、私は動揺した。
こんなことになっても、まだ…。
歳に似合わぬ旺盛な性欲に、我ながらげんなりする気分だった。
夢遊病者のような足取りで庭を歩いていると、射るような視線を感じた。
誰かに、見られている。
しかも、これは、一人の視線じゃない…。
こうべをめぐらすと、生垣の向こうに、黒々と広がる夜空を背景にして、トウモロコシの列が見えた。
子供の背丈ほどもあるトウモロコシの間に、蛍のように光る眼があった。
ザザッ。
葉ずれの音とともに、影が動いた。
節くれだった長い脚が交差し、球形の塊が畑の中を遠ざかっていく。
頭上でも音がしたので見上げると、家を囲んだ木々の枝の間を大きな猫ほどもある黒い影が渡っていくところだった。
いやな汗が背筋を伝って落ちた。
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私は、監視されていたのだ…。
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