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#338話 施餓鬼会③

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「そこなんですよねえ」
 住職も頭を掻いた。
「宝物庫にはほかに何も入っていませんでしたから、盗むものといえばこれしかなかったはずなんですけど…」
 2代目住職は一見すると中間管理職のサラリーマンっぽい。
 もっとも2代目というのはあくまで先代しか知らない私の感覚であって、寺の由緒からいくと本来は何十代目とか、そういうことになるのだろう。

 肝心の蛇舌観音が壊れているからか、お披露目は大して盛り上がらずに終わった。
 汗だくになりながら実家に帰ると、庭に面した縁側に中学生の姪が寝そべっていた。
 ドキリとしたのはその格好である。
 紺色のスクール水着のままなのだ。
 しかも水着は濡れていて、体の線が必要以上にくっきり出ている。
 頂点に突起を頂くお椀型に盛り上がった双つの胸。
 女性らしさを如実に表したくびれた腰。
 鋭角に切れ上がった水着のデルタゾーンから出た生白い二本の脚に、否が応でも視線を吸いつけられてしまう。
 規則正しく胸が上下しているところからして、どうやら眠っているらしい。
「どうしたんだ?」
 ちょうどその時離れから妹が姿を現したので、姪を起こさぬよう声をひそめて訊いてみた。
 40歳過ぎた妹は手入れの不十分なボサボサ髪をかき上げ、けだるそうに答えた。
「それがよくわかんないのよ。さっき川から帰ってきたら、疲れたって言ってそのままあそこで」
 身内びいきではなくそこそこ美人の部類に入る妹だが、今はしばらく続いた離婚騒動のせいですっかり老け込んでしまっている。
「川?」
 何かひっかかるものがあって、私は化粧っ気のない妹の顔を見返した。
「裏の河原のことか?」
「ええ。あそこが昔からこのあたりの子供たちの遊び場になっているの、兄さんだって知ってるでしょ」
「亜季も勇樹も行ってるのか」
 亜季というのはそこで寝ている姪で、勇樹というのは彼女の双子の甥である。
 私同様、妹一家はこの家に住んでいるわけではない。
 妹は高校卒業以来ずっと都会で暮らしていたのだが、今回の離婚で一時的に戻ってきているのだ。
「こんな田舎、ほかに娯楽もないからね」
 確かにそうだった。
 私も子供の頃、お盆になるたびに親に連れられてよく来たものだが、川遊びと虫取り以外、特にやることがなかったのを覚えている。
 妙な音が聴こえてきたのは、妹が軒下に干してある洗濯物に手をかけた、その時だった。
 誰かがげえげええずいている。
 音は井戸のほうから聴こえてくるようだ。
 振り向くなり、影が動いた。
「勇樹、そこにいるの?」
 母親の勘なのか、私より早く井戸の蔭に隠れた人物を特定すると、妹がそう声をかけた。
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